持ち運びに優れ、文房具もテレワーク仕様になってきている。各文房具メーカーはどのような工夫をして製品開発をしているのか。
数あるビジネスの場でも活用される文房具を手がけるニチバンやコクヨに、テレワークをどのように意識して商品開発を行っているのかをインタビュー。その他、テレワークでかゆいところに手が届く文房具を紹介する。
ニチバンの文房具はテレワークにどう対応?
「セロテープ®」で知られるニチバンは、今年1月、カッターがケースに収納でき、テープがまっすぐ切れる「セロテープ® 小巻 収納カッターつき 〈まっすぐ切れるタイプ〉」を発売した。
ニチバン「セロテープ® 小巻 収納カッターつき 〈まっすぐ切れるタイプ〉」希望小売価格253円(税込)
この製品の開発経緯について、ニチバンのオフィスホーム営業統括部 渡邉智和氏は次のように話す。
「粘着面にホコリが付かないようにするためには、テープ先端を刃先部から外しテープ側へ巻き付ければ良いのですが、使用時に都度、テープの引き出し部を探す手間が発生します。『使いかけ状態』のままで保管性・携帯性に優れる『収納カッター』は『カバンに入れて持ち運べる』とご好評の声を多数いただいております。
〈まっすぐ切れるタイプ〉では、さらにお客様の声を活かした改善を行いました。(1)新カッター刃の採用でまっすぐ切れる。(2)従来品よりも軽い力でテープの詰替えができる。(3)本体表面にキズや指紋が目立ちにくく、高級感のあるシボ加工を採用。
オフィスの卓上ディスペンサーに代わり、テレワークではいつも手元においていただきたいと思います」(ニチバン渡邉氏)
コロナ禍になり、テレワークが浸透するようになってから、ニチバンの文房具の開発全般において、テレワークをどのように意識しているのか。
「文房具の使用シーンがオフィスに限らず、自宅や他の場所で使う機会が増えていると思います。また、省スペース、携帯などの機能だけでなく、所有感などの情緒的価値が今まで以上に大事になってくると考え、生活に密着し、お客様の不便や不満を解決できる製品づくりを心がけています。」(ニチバン渡邉氏)
渡邉氏に、他のニチバンの文房具の中から、テレワークにおすすめの商品を2つ挙げてもらった。
「テープのりtenoriTM イチオシTM」希望小売価格297円(税込)
「スタンプのようにポンと押してのり付けできるテープのりです。コンパクトサイズなのでかさばらず、持ち運びにも便利です」(ニチバン渡邉氏)
「ナイスタックTM テサ® パワーストリップ 粘着タブ・粘着フック」希望小売価格286円~(税込)
「しっかり貼れてきれいに剥がせる粘着タブ。片手でタブを引っ張るだけで簡単に剥がれる、部屋を傷つけず汚さない両面テープです。在宅ワークスペースでの壁面へのポスター固定、小物固定などに活躍します」(ニチバン渡邉氏)
コクヨの文房具はテレワークにどう対応?
文房具を手がけるコクヨや、コクヨグループのオフィス用品通販「カウネット」を運営するカウネットは、さまざまなテレワーク対応の文房具を開発している。その開発の背景をコクヨとカウネットの担当者に聞いた。
●テレワークに便利!仕事に必要なグッズを一緒に持ち運べるPCカバー
「カウネット テレワークノートPCカバー」シンプルタイプ:3,280円(税込)/スタンドタイプ:3,980円(税込)
カウネットは昨年12月、テレワーク向けに「カウネット テレワークノートPCカバー シンプルタイプ/スタンドタイプ」を発売した。
PCに取り付けて使うカバーとしての役割だけでなく、マウスやアダプタ、メモや筆記類など仕事に必要なグッズも収納できるため、移動時は一度に持ち運びができる。
ふせんなどを貼り付けできるボードも内蔵しており、引き出して使うことでPC作業をしながらタスク管理も可能。底面にスタンド付きでモニター位置を上げられる「スタンドタイプ」とスタンド無の「シンプルタイプ」の2種類がある。
この商品は、どのような経緯で開発されたものなのか。
株式会社カウネットのブランド戦略室の入谷氏は次のように話す。
「在宅ワークを中心にテレワークが普及していく中で、自宅とオフィスまたは共働き世帯は自宅内において、ワークスペースを移動する機会が増えました。その中で、『ノートPCを中心とした仕事道具をまとめて持ち運ぶのが手間』という声があり商品企画に着手しました。このカバー一つで移動もラクになり、ワークスペースの展開と撤収も素早くできます。またノートPCでの作業はどうしても前傾姿勢になるため、目線を上げるためのスタンドも設置しました」(カウネット入谷氏)
その他、カウネットには道具を収納して持ち運ぶほか、机に広げて立てることもできる「テレワークバッグ」もある。サイドアイテムの量が多い場合に便利だ。
「カウネット テレワークバッグ」2,728円(税込)
●コクヨ文房具のテレワークへの対応
コクヨは、コロナ禍になり、テレワークが浸透するようになってから、テレワークをどのように意識して文房具を開発しているのだろうか。
コクヨ株式会社のステーショナリー事業本部 プロモーション推進部の佐藤氏は次のように話す。
「テレワークの浸透は、仕事に合わせて時間や場所を自由に選んで働くことができる機会も広げています。働く環境が多様化する中で、どんな環境でも快適で効率よく仕事をすることをサポートする、ということを意識しています。
THIRD FIELD というシリーズは『さあ、オフィスを持ちだそう』をコンセプトに、よりさまざまな場所で働くワーカーに使い心地の良いツールをラインアップしています。特に自立式のリュックである『スタンドバックパック』は自立し、2階層の設計になっているので、コワーキングスペースや自宅などで立てて、引き出しのように使えます。ツールを使う際に、上段に入れている文具や携帯、ガジェットなどをサッと取り出すことのできる、リュックとツールペンケースの融合のようなアイテムです」(コクヨ佐藤氏)
コクヨ「スタンドバックパック」13.3インチモデル 18,150円(税込)/15.6インチモデル 20,900円(税込)
テレワーク環境下では、文房具やガジェット類をいかに持ち運ぶかのニーズが高く、持ち運んだり、その場で広げてすぐに作業ができるといった利便性の高いアイテムが多く登場しているようだ。
また、細かい文房具の収納やメモ帳などもテレワーク仕様になっている。
コクヨ「ツールペンスタンド〈Haco・biz〉」3,300円(税込)
「ツールペンスタンド〈Haco・biz〉」は、小さなバッグのような持ち運び型ツールペンスタンド。立たせる収納で、デスク周りがスッキリする。
「ワークツール一式とともに、携帯電話を立てかけることもできるので、フリーアドレスや在宅の際に、ガバっと開いてそのまま仕事を始めることが可能です。コロナ禍で働き方が変わる中、人気のある商品です」(コクヨ佐藤氏)
コクヨ「野帳(ビジネス)」264円(税込)
発売から60年以上経つ、測量業務の現場の声を取り入れた「測量野帳」の新たなバリエーションとして、新しいカラー展開と薄いグレーの罫線タイプ「野帳(ビジネス)」が今年4月に登場。一般的なビジネスシーンでも活用しやすい。
「在宅でオンライン会議の際などに、テーブル上が狭く、メモが取りづらいという声が聞かれます。コンパクトなので、狭い場所でも邪魔にならず、ハードカバーなので、屋外(電車の中など)でのメモにも最適です。デジタル化が進むからこそ、価値のある手書きメモもテレワーク時代のトレンドと考えます」(コクヨ佐藤氏)
その他のテレワークを考えた文房具
他社製品にも、テレワークでの利用が想定されている文房具が発売されている。ここでは2つのメーカーからの商品を紹介しよう。
●紙製のホワイトボード
マグエックス「ペーパーホワイトボードA4(2枚入り)」(オープン価格)
紙製のホワイトボード。従来のホワイトボードに比べ、紙製なので軽く、リモート会議や自宅学習などで手軽に使える。サイズはA2、A3、A4の3種類で用途に応じて利用可能だ。
従来のホワイトボードと比べたメリットは、薄くて軽い上に両面使えてよく消える点。紙といっても硬く、丈夫で折れにくい特徴もある。A3サイズとA4サイズには立てかけに便利なスタンドが付いているので、リモート会議中の手書き説明などに便利だ。
●抗菌仕様のボールペンとノート
W&F Trading Japan「プレミアム抗菌ボールペン&ノートブックset」(黒・赤・青)各2,200円(税込)
このボールペンとノートは、抗菌コーティングを施した仕様になっており、最大でバクテリア99%の増殖を抑制する。プレミアム抗菌ボールペンは、アルミニウム製で、バレル(ボールペンのボディ、軸)に抗菌コーティングを施してある。プレミアム抗菌ノートブックには、抗菌素材カバーが使われている。
テレワーク時代の筆記用具選びの際には、候補に挙がるのではないだろうか。
文房具もニューノーマルな働き方に合わせて進化を遂げている。テレワーク仕様のアイテムを取り入れて、効率的に仕事を進めよう。
取材・文/石原亜香利