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没後10年、作家・片山恭一と写真家・小平尚典が解き明かす「スティーブ・ジョブズの素顔」

2021.09.18

アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズ。彼が逝去して、間もなく10年になろうとする。

同社製品になじみない人たちにとって、ジョブズの印象は起業家以上のものではないかもしれない。逆に熱烈なファンにしてみれば、一生忘れえぬカリスマ的な存在か。どちらの側であっても、他の起業家とはまったく異質な、気になってしまう人物であったのは間違いないだろう。

数々の伝説と神話を生んだジョブズとは、いったい何者だったのか? 今も生きるわれわれとこの社会にどんな影響を与えたのか?

没後10年の節目に、この謎を解き明かそうと試みたのは、作家の片山恭一さんだ。著書の『あの日ジョブズは』(ワック)の表紙には、若き日のジョブズのモノクロ写真が載る。何か意思を秘めた大胆不敵な笑みは、今も強烈にわれわれに訴えかけてくるものがある。それは何か?

手がかりは、この本の中にある。

『あの日ジョブズは』(ワック)

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神をポケットに入れて

片山さんが描くジョブズは、「プレゼンの天才」といった、過去によく見られた平面的なものではない。濃密な人生を生きた稀有な人物は皆そうであるように、とらえがたいほど多面的なものに映る。

その一つが、原始キリスト教における聖者になぞらえたことだ。

「ジョブズの生涯に起こったことも、イエスの伝承をめぐって起こったことに似ている。彼とアップルという会社の航跡は、イエスの物語を福音として告げ知らせようとしたパウロたちの足跡と重なる。新約聖書の物語をとおして、旧約の横暴で理不尽な神が、穏やかな羊飼いを想わせるイエスという人格に縮約されたように、ジョブズは神を、『誰もが生まれたときから持っている世界最高のデバイス、指を使って操作する』ことのできるポケットサイズのタブレットにまで縮約してしまった。いまや神はiPhoneと呼ばれるスマートなガジェットに姿を変え、世界中に多くの信者を生み出している。」(本書65pより)

神=iPhoneという比喩には、違和感をおぼえるかもしれない。しかし、どうだろう。いまや、われわれは、このちっぽけな端末を通して、あらゆる情報から叡智に至るまで手に入れることが可能だ。そして世界の津々浦々の人々が、これに「帰依」している。宗教の宗派を問わず…。片山さんはこれを「現代の神」、より正確には「テクノロジーとデータと貨幣を三位一体とする神」と表現する。

出口のない部屋

ジョブズのもう1つの側面は、多くの人が指摘したとおり「くそ野郎」だろう。人を人とも思わない尊大さや非情さは、公式の伝記をはじめ処々で語られ、アップルのユーザーでなくとも、1つや2つのエピソードはご存知のはず。

片山さんも、当然この負の部分をクローズアップしている。しかし、単に逸話を羅列するのではなく、その激しい性格の由来を「出口のない孤独」と「他者との親密な交わり」に求める。

「孤立感が強いだけに他者を求める気持ちも強いのだろう。自分を孤独の檻のなかから救い出してくれる人間を切実に求めているが、現実の人間関係のなかでその思いはかなえられない。裏切られることも多い。だからなおさら自己に閉じこもってしまう、といった悪循環に陥っている。」(本書158pより)

また、ジョブズは、実業家であると同時にデザイン性を追求する「アーティスト」の気質も併せ持っているという点については、「孤独から抜け出すための手段」だとも。ほかのコンピュータメーカーが到達しえない「美」を提供することで、なにがしかのつながりが生まれると期待したのかもしれない。

ここまで読まれたあなたは、「なんか、堅苦しい内容の本かな」と思われたかもしれない。

だが、その心配は無用だ。本書には、彼の生い立ちから、最後にiPadを置き土産にこの世を去るまでのストーリーが織り込まれ、合間にコンピュータ業界の多士済々にも言及される。哲学的な話もあるが、あくまでも明快で平易。そして、豊富に挿入されている写真を撮ったのは、長く米国西海岸に住んでいた写真家の小平尚典さんだ。パーソナルコンピュータの一時代を築き、流星のように人生を駆け抜けたこの偉人を知るには、格好の1冊といってもさしつかえない。

片山恭一さん プロフィール
1959年、愛媛県生まれ。作家。九州大学農学部卒、同大学院修士課程を経て博士課程中退。1986年、「気配」で文學界新人賞を受賞。2001年刊行の『世界の中心で、愛をさけぶ』が300万部を超えるベストセラーとなる。『死を見つめ、生をひらく』など著書多数。

小平尚典さん プロフィール
1954年、北九州市小倉生まれ。1987年、米国に移住。フォト・ジャーナリストとして多目的に活動。特にIT革命のレジェンド達のポートレイトを撮影取材する。2021年、スタンフォード大学ライブラリーに全作品がセレクトされる。公益社団法人日本写真家協会会員。早稲田大学理工学部非常勤講師。著書に『シリコンロード』『e-face』『4/524』『原爆の軌跡』ほか。

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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