知人のツテやSNS上での勧誘を通じて、投資詐欺の被害に巻き込まれる消費者の方が急増しています。
投資詐欺に関する正しい知識を身に着けて、被害の予防に努めましょう。
また、万が一被害に遭ってしまった場合には、速やかに消費者庁・警察・弁護士などにご相談ください。
今回は、投資詐欺のパターン・被害回復の方法・相談先などを紹介します。
1. 横行する投資詐欺に注意
「資産運用に興味がある」
「生活を少しでも楽にしたい」
「早期リタイアしたい」
このような消費者心理を利用する投資詐欺の手口は、年々巧妙になっています。
「自分が巻き込まれるはずはない」などと高を括ることなく、投資詐欺に関する正しい知識を身に着けることが大切です。
1-1. 投資詐欺の対象になりやすい資産・商品の例
投資詐欺のターゲットになりやすいのは、一見して「投資すると大儲けできるかもしれない」という印象を抱きやすい、高リスクの資産・商品です。
投資詐欺の対象になりやすい資産・商品の代表例としては、以下のものが挙げられます。
・未公開株式
・仮想通貨(特に「草コイン」などと呼ばれるもの)
・不動産
・情報商材
など
これらの資産・商品の多くは、客観的な市場価格が存在せず、完全に業者側の裁量で値付けがされています。
そのため、消費者が実際の価値とはかけ離れた高値で購入してしまい、巨額の損失を被ってしまうケースが多いのです。
1-2. 投資詐欺によく見られる勧誘文句の例
投資詐欺を働く違法業者は、言葉巧みに不合理な投資を勧誘してきます。
勧誘文句の代表例と、その勧誘文句が信用できない理由を見ていきましょう。
<ケース①>
近い将来上場は確実なので、必ず儲かります!
株・ファンド持分などの金融商品の場合、不確実な事項について断定的判断を提供して投資を勧誘することは禁止されています(金融商品取引法38条2号)。
「上場は確実」「必ず儲かります!」といった言動は、真正面から断定的判断に当たりますので、このような言動があったとすれば、まともな業者ではあり得ません。
<ケース②>
金融庁からもお墨付きをもらっている、安心のファンドです!
投資スキームの適法性について、金融庁に対して本当に照会を行ったのかどうかは、エビデンスを見せてもらわなければ確認できません。
また、仮に金融庁から適法性の確認を受けていたとしても、そのこと自体は投資商品としての収益性とは何の関係もありません。
<ケース③>
投資詐欺の被害を回復してあげるので、代わりにX社の未公開株式を買ってください。
投資詐欺の被害を回復するために行動できるのは、原則として弁護士のみです(弁護士法72条)。
したがって、仮に「投資詐欺の被害を回復してあげる」のが本当だとしても違法な非弁行為ですし、未公開株式の購入を見返りに要求するなど、「怪しい」以外の何物でもないでしょう。
2. 投資詐欺による被害を回復する方法
投資詐欺の被害を受けた場合、以下のいずれかの法的構成により、業者に対して被害賠償を求めることができます。
①不当利得に基づく返還請求(民法703条、704条)
投資に関する契約を錯誤(民法95条1項)・詐欺(民法96条1項)などを理由に取り消すことを主張したうえで、支払い済みの代金の返還を請求します。
②不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
違法行為によって財産的な損害を与えたことを理由に、損害賠償を請求します。
③債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条1項)、契約解除(民法541条、542条)
業者が投資に関する契約上の義務を果たさなかったことを理由に、損害賠償を請求します。
また、債務不履行に基づき契約を解除し、支払い済みの代金の返還を求めることも可能です。
投資詐欺業者に対してこれらの請求を行いたい場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。
ただし、業者が倒産した場合には「無い袖は振れない」となり、支払い済みの代金を回収することが困難になってしまうので要注意です。
そのため、投資詐欺の被害に遭った場合には、早めに弁護士などへ相談することが大切になります。
3. 投資詐欺被害の主な相談先
投資詐欺被害については、以下の窓口で相談することができます。
①消費者ホットライン
消費者庁が設置した、消費者被害全般に関する相談を受け付けているホットラインです。
投資詐欺の勧誘への対処法がわからない場合などには、一般的なアドバイスが受けられます。
②警察
投資詐欺は「詐欺罪」(刑法246条1項)に該当する可能性があり、被害者は刑事告訴ができます。
刑事告訴は、民事上の損害賠償請求と並行して行うことも可能です。
③弁護士
業者に対する損害賠償請求など、依頼者の代理人として直接的な行動をとってくれます。
すでに投資詐欺の被害に遭ってしまい、被害回復を図りたい場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。
知り合いのツテがない場合には、弁護士会や法テラスに相談すると、弁護士の紹介を受けられます。
万が一投資詐欺の被害に遭ってしまった場合は、ご自身の状況に合わせて、有益なサポートが受けられそうな窓口を選んでご相談ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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