連載/石川真禧照のラグジュアリーカーワールド
日産が6月15日に発表した新型車は「AURA」。発売は今秋を予定しているプレミアムコンパクトカーだ。発売はまだ先だが正式に発表されたということで、報道関係者に試乗する機会が与えられた。
ただし、公道ではなく日産のテストコース内での限定試乗だ。会場は、神奈川県横須賀市にある「日産グランドライブ」で、かつて追浜テストコースとして使用された。初代「フェアレディZ」をはじめとする多くの名車がここでテストされ、1周約4kmのコースだ。
用意された「AURA」は2車種。前輪駆動と4輪駆動のGグレード。それぞれ標準仕様とレザーエディションが置かれていたが、試乗は2駆と4駆で1台ずつ、テストコースを4周ずつ走行した。
「AURA」は、その名の通り、コンパクトカーの「NOTE」をベースに開発されたモデル。「NOTE」が軽自動車やエントリーカーからのユーザーをターゲットに開発されたのに対し、「AURA」は上級セダンや輸入コンパクトカーのユーザーを狙っている。
そのため、内装は素材、デザイン、造り込みに力を注いだ。メーターパネルは12.3インチのフルTFTメーターを採用。ツイード表皮の木目調パネル、本革ハンドル、ツイード表皮/本革3層構造のシートなどが「AURA」用に装備された。
サイズは「NOTE」より若干大きい
外観のデザインは、基本的に「NOTE」と共通だが、サイズは全幅が40mm広くなり1735mm、全高も20mm高くなっている。全長4045mm、ホイールベース2580mmは共通だ。車両重量は約30kgほど「NOTE」より重い。
パワーユニットは、2駆(FF)が136PS、300Nmのモーターに1.2L、82PS、103Nmのガソリンエンジンを搭載。4WDはリアモーターに68PS、100Nmのモーターが加わる。モーターの性能は「NOTE」より出力は18%アップ、トルクは7%アップしている。
燃費はFF車が27.2km/L、4WDは22.7km/L(いずれもWLTCモード)だ。試乗はFFのGグレードから。走行前のレクチャーで、試乗のモードとして、最初はECOのDレンジ、次にスポーツのDレンジ、そしてスポーツのBレンジでというアドバイスがあった。
コースはスタートから本コースのストレートに入り、全開加速。やがてバンク付きの左コーナーが入り、60km/hまで減速。コーナーを出るとパイロンで区切られたハンドリングと低中速加速区間。50km/hから25km/hに減速。ハンドルを右にきりながら再加速。左、右と切りこむスラロームで、本コースに戻る。
ハンドリングは軽快。シートのホールド感もよい。加速も0→100km/hを7秒台前半でクリアした。本コースに戻ると、次はアップダウンと、コーナーが組み合わされた郊外路コース。ここでもオーバーな姿勢変化もなくクリア。ちょっと気になったのはエンジンが始動し、2000回転あたりで若干唸り音が耳に届いたことだ。振動などはなかった。
静かに、そしてパワフルに。
バックストレートから大きな左カーブで1周が終了。同じ試乗車で、スポーツモードDレンジで走行開始。ハーフアクセルからの加速はトルク感がある。加速でも0→100km/hで0.5秒ほど速い。
音に関してもエンジンが電池に電気を供給するために始動しても、音の侵入は抑えられている。ノートよりも静かだ。ドアガラスに高級車が採用しているラミネートガラスを用いていることも効果があると思われる。
4WD車ではコーナリング時に前後の駆動力配分を自在に変化させる電動4WDを採用している。試乗したときは路面がドライだったのでその効果は十分に確かめられなかったが、路面状況が悪化するほどにその効果は体感できるはずだ。
Bレンジでの走行では減速時のGに差があった。FFよりも4WDのほうが減速Gが大きい。メーカーの資料によると、FFの減速Gは最大0.18Gだが、4WDでは0.2Gだそうだ。ドライブモードによる違いは、加速力ではノーマル/エコとスポーツで差があり、減速ではエコ/スポーツとノーマルで差がある。
「AURA」の上質感が味わえる装備にオーディオがある。BOSEが開発した「パーソナルプラスサウンドシステム」だ。この特徴はヘッドレストスピーカーの存在。前席に装備され、音の拡がりを自在にコントロールできる。ワイドレンジにすると、本当に臨場感がある。内装の素材やデザイン、造り込みも高級車として大切な要件だが、オーディオにも新しい上質感を求めたところに「AURA」の心意気を感じた。
いずれテストコースではなく、公道でこのクルマの実力をチェックしてみる予定だ。
■関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/aura.html
文/石川真禧照(自動車生活探検家)
雑誌「DIME」の連載「カー・オブ・ザ・ダイム」を長年にわたり執筆。取材で北米、欧州、中東、アジアをクルマで走破するなど、世界のクルマ事情に詳しい。国内外で年間に試乗するクルマは軽からスーパーカーまで200台以上。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)副会長。日本モータースポーツ記者会(JMS)監事。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。
撮影(動画)/吉田海夕
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