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「クラウドソーシング」の光と影

2021.09.12

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回は、クラウドソーシングについて私の考えを述べたい。20年程前からネット上のウェブサイトで仕事の発注、受注ができる仕組みのサービスが増えはじめた。例えば、雑誌を編集制作する出版社が、社外のフリーライターや編集者、デザイナーに一定の条件(仕事の内容、報酬、締め切りなど)をウェブサイトの掲示板に提示する。それを見たライターや編集者、デザイナーがエントリーし、出版社が発注相手を決める。

2006年にフリーランスになり、2010年までにクラウドソーシングを運営する5社(団体も含む)ほどのサービスの会員になった。現在までに、通算で約15社の会員となり、利用してきた。フリーランスとして17年間生きぬくことができた原動力の1つになったのが、このサービスだったのだろうと思う。その意味で大いに感謝している。

新聞や雑誌、ニュースサイトやそこに登場する識者のほとんども、クラウドソーシングを「新時代のビジネス」と称えるかに見える。だが、それは光の部分しか伝えない、悪しき報道に思えて仕方がない。そもそも、マスメディアで働くスタッフや識者の大半が私のように長い間、サービスを使いこなしてはいないはずだ。公平な報道をしたいので、今回はクラウドソーシングの問題点を取り上げたい。

まず、この17年間でクラウドソーシングを通じて受注した出版社や編集プロダクション、広告やITの企業は約40社。これらの正社員数の平均は、約50人。ほぼすべての企業の売上は、30億円以下だ。

本連載「倉庫会社でのアルバイト経験で感じたフリーランスが陥りやすい罠」で新卒時の入社の難易度を説明した。例えば、出版界は、その難易度はA級(上位3社)、B級(4位~20位ほど)、C級(20位~)と3つにわけられる。私が、クラウドソーシングを通じて受注した出版社や編集プロダクションのほぼすべてが、C級だ。

中小企業基本法の定義で言えば、純然たる中小企業と言える。クラウドソーシングのウェブサイトの掲示板には、出版社や編集プロダクション、広告やITの企業の担当者が書き込む発注(依頼)案件があった。年平均120~150件で、その9割以上は中小企業だ。しかも、実績や知名度が他の中小企業と比べて見劣りしているケースが多い。ホームページすら持っていない企業が5社ほどもあった。17年間で倒産、廃業したと思える企業は半数を超える。

担当者の仕事のレベルは低い。優れた人もいたが、少数だ。約50人の平均年齢は30歳前後でありながら、仕事力は20代前半レベルが大半。仕事の深い会話はできない。辞める人が多く、約50人のうち、2021年現在も在籍している人はほとんどいないと思える。前述のランキングで言えば、A級とB級とその下のC級の間には人材の質の面で克服しがたい壁がある。

A級やB級の出版社や編集プロダクション、広告やITの企業は長い歴史の中で一定の実績がある。担当者は、そのプロセスで多くのフリーライターや編集者、デザイナーと仕事をしている。そこで経験を積み、培った仕事力があり、双方には出来上がった関係がある。担当者たちからするとわざわざ、クラウドサービスを通じて見ず知らずの外部の人に発注する理由がないのだろう。その判断は正しい、と思う。

外部のスタッフと深い関係があまりないC級の会社で、課題の多い社員が発注するのだから、その後は推して知るべきだろう。「倉庫会社でのアルバイト経験を通じて伝えたい「フリーランス」という生き方の真実」で説明したように、C級の会社と仕事をすると報酬の未払い若しくは遅れが頻発する。その理由の1つが、クラウドサービスのあり方にあると私はみている。C級の会社のすべてがこういう問題を引き起こすわけではない。誠意ある会社もある。

一部には、報酬の未払いを防ぐために発注者に厳格なルールや罰則規定を設けているクラウドサービスもある。その意味では、健全な方向になりつつある。だが、依然としてC級の会社を中心にトラブルが多発している。それで、廃業に追い込まれたフリーランスがいる。私も苦しんだことがある。法律の観点からも深刻すぎる問題なのだから、しつこく指摘していきたい。

このサービスが今後、なくなることはありえない。確実に増えていく。自らの経験論で言えば、なくてはならないサービスと言える。特にフリーランスになった後の5年間は実績に乏しかったから、守護神に近い存在だった。だからこそ、報酬をめぐるトラブルには一段と厳しく対処するべきと言いたい。それが確実にできるクラウドサービスが、フリーランスの信用を得て生き残るだろう。

なぜ、「会社に頼らない、新しい生き方」とフリーランスを称えるマスメディアや識者がこの問題を語らないのか、どうにも解せない。

文/吉田典史

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