
与信管理の運用満足度によって不良債権発生リスクに1.5倍の差
ニューノーマル時代を見据えた実務のヒントとは?
帝国データバンクは、6月に実施した「2021年 与信管理の実態に関するアンケート」の結果から、組織体制や申請・判断・途上与信の各プロセスにおける取り組みなどの実態をまとめた。
運用不満足は不良債権発生リスクが1.5倍
与信管理の主な目的である不良債権の発生を最小限に抑制できているかについて、与信管理運用満足度で比較すると『運用に満足していない』回答者はリスクが高いことが判明した。『不良債権発生』は1.5倍、『ヒヤリハット』は1.4倍、『回収懸念』は1.2倍だった。
不良債権の発生状況
『運用に満足している』の方が不良債権発生リスクが低いことがわかったが、実務においては、どのような取り組みを行っているのか、満足度で差が見られたものをピックアップしました。
運用のポイント① ルール・規程に基づいた与信管理
ルール・規定に基づいた与信管理
ルールが明文化されていなければ、与信判断の基準はあいまいになり、再現性に欠ける。例えば、以下のように5W1Hのような視点で考えると良いだろう。
■When(いつ)
新規取引時、取引増額時、定期見直し時など
■Where・Who(どこで・だれが)
誰が申請をし、取引金額や信用度に応じて誰が決裁するのかなど
■What(何を)
申請の際に必要な情報として、企業の所在地、代表者、3期分の業績、取引内容・金額など
■Why(なぜ)
どのような基準で与信判断をするのか、格付け算出など
■How(どのように)
取引申請の方法や結果をどのように管理するのかなど
運用のポイント② 自社格付けの算出
自社格付けの算出
決められた基準で取引先の信用度を算出することで社内の共通言語となる。ただ、格付けを算出すれば運用がうまく回るという単純なものではなく、格付けを算出するために必要な項目の設定、定期的な見直しなどは必要だ。また、格付けが変われば、与信限度額や回収条件、決裁権者なども変える必要がある。
運用のポイント③ 年に1回以上の見直し
年に1回以上の見直し
1度取引が開始すると、事故なく債権が回収できていれば、見直しをしないというケースもあるようだが、それは避けるべきでしょう。数年に1回や定期的な見直しを行っていないところは、4割以上が頻度を上げた方がよいと感じていることからも、年に1回以上は見直しをすべきだろう。
企業の状態は絶えず変化し、業績は毎年更新される。最新の企業情報を把握したうえで、取引条件は現状のままでよいのかを検討。また、信用情報を入手できるルートを確保しておくことで、最悪の事態を未然に防ぐことにもつながる。
重要かつ入手困難な情報は外部企業情報活用がオススメ
これらの運用をしていくために必要不可欠な企業情報について、与信判断における重視度合いと入手困難度を聞き、掛け合わせたところ、ともに平均を超えたのは「決算書」「経営者人物像・経歴」「取引先」「売上規模」の4項目だった。この重要かつ入手困難な情報は外部企業情報活用がオススメだ。
重視度x入手困難度
アンケート概要
実施期間:2021年6月17日(木)~7月16日(金)
実施方法:Webアンケート形式
回答数:5,019件
構成/ino.