小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

SBIグループがフィンテック企業のFOLIOを子会社化した狙い

2021.09.06

2021年8月31日、インターネット金融事業の最大手SBIグループが、新たなフィンテック企業「FOLIO(フォリオ)」を子会社に迎えた(プレスリリース

その狙いは何か?背景にある金融ビジネスの動向とともにまとめた。

FOLIO社のビジネスとは?

引用元:FOLIO社プレスリリース資料

FOLIOは、テーマ投資やおまかせ投資といった、一味違う投資サービスを提供し、投資家の投資意欲を掻き立てている。フィンテック企業でありながら、証券会社の登録があるため、自社で、投資家に対して証券取引が提供できる。また、テーマ投資サービスは、メッセージアプリを手がけるLINEグループと提携しての販売も行われている。

また、2021年1月には、金融機関向けのB2Bビジネスソリューションとして、4RAPをリリースした。

株主にはLINE Financial社やゴールドマン・サックス社などが名を連ねている。

SBI証券への新商品導入と、SBIグループの提携先との相乗効果を生み出すのが狙い

本件プレスリリースによれば、子会社化の理由は以下の2つ

①SBI証券で新たな金融商品「SBIラップ(仮称)」を提供開始ー2021年度内予定

FOLIO社が持つ4RAPというソリューションをSBI証券に導入する。

投資一任サービス、別名「ファンドラップ」という、投資家が証券会社へ資産運用をおまかせ」できる商品があるが、4RAP

は、金融機関に対して、ファンドラップ商品提供に必要なシステムを提供する。プラグイン型になっているので、金融機関のシステム改修コストが最小限にできる特長がある。

②SBIグループが提携強化している金融機関、事業法人へのFOLIO社商品の提供

地方銀行を中心に、多数の金融機関等との提携基盤を持つSBIグループ経由で、FOLIO社商品を提供する。投資残高が増え収益拡大を狙いつつ、提携先に新たな商品提供が行なえ、相乗効果が生まれる。

これら2つの理由の背景には、SBIグループが掲げる新中期ビジョンの重点施策があると見られる(下図)

FOLIO社を革新的技術があるベンチャー企業と評価し、SBIグループ、アライアンスパートナーへ、FOLIOの商品や技術を拡散するのが目的のようだ。

■SBIグループの新中期ビジョン

引用元:SBIホールディングス アニュアルレポート2021/SBIホールディングス

組込型金融の施策に対して証券分野で台頭する可能性

本件プレスリリースでは述べられていないが、SBIグループは、フィンテックの最新トレンド「組込型金融」の波に乗るべくFOLIOを活用したい意図があるかもしれない。

組込型金融とは、預金やローン、資産運用といった金融サービスでのITシステム機能を、パーツに分解して提供する方法で、非金融事業者が手がけるウェブサービスに組み込んで使う。その結果、顧客に提供できる付加価値がより高められる効果が期待できる。埋込型金融や、その英単語であるエンペデッド・ファイナンスとも呼ばれる。

組込型金融について詳しくはこちらの記事「GMOあおぞらネット銀行が中長期戦略で柱に掲げた「組込型金融」とは何か?」も参照

国内の金融機関では、GMOあおぞらネット銀行が、開発者向けの組込型金融の開発環境提供を重点施策にし、前のめり姿勢を見せている。また、三菱UFJフィナンシャルグループが、銀行、証券、投資情報のAPI提供を行なうなど、メガバンクが組込型金融に必要な機能を提供する事例もある。

先述したFOLIOの4RAPは「プラグイン型」なので、組込型金融として異業種が利用することもできる。開発者向けの環境は整備されていないものの、SBIグループの提携基盤を通じて各社に展開ができる。

SBIグループでは、SBI証券が持つ機能をAPI提供したほうが、稼働実績が多い分安定しそうだ。また、住信SBIネット銀行が行なうBaaS(バンク・アズ・ア・サービス)の機能を細分化させれば、概念的だが組込型金融が実現できるので、ビジネス展開が行いやすそうだ。

しかし、FOLIOの4RAPは機能がファンドラップのみと単純であるため、組込型金融の普及に必要な、開発環境の整備がしやすいといえる。

インターネット金融事業の競合GMOあおぞらネット銀行が行なう、開発者向けに間口を広げた施策をSBIグループが始めるには、FOLIOの4RAPから展開するほうが早くできそうだ。

■GMOあおぞらネット銀行での組込型金融サービスの施策

引用元:デジタルビジネスガレージ ichibar/GMOあおぞらネット銀行
組込型金融を実現するための開発実験場「sunabar(スナバー)」や、開発した組込型金融のビジネスアイディアを出店する「ichibar(イチバー)」などで、開発者を手厚くサポートしている。一方のSBIグループではこのような開発者向けサービスは未だ展開されていない。

■auカブコム証券のkabu.com API

引用元:kabu.com API/auカブコム証券
MUFGグループの一員で、証券分野での組込型金融に必要な、APIを提供するauカブコム証券。証券取引や投資信託取引などが利用できる。

WealthNavi for SBI証券は、競合商品にならないのか?

引用元:SBI証券

SBI証券がFOLIOの基盤で実現する「SBIラップ(仮称)」は、投資家が投資をおまかせできる点で、WealthNavi for SBI証券と商品性が類似する。

本件プレスリリースでは、WealthNavi for SBI証券の販売は引き続き注力すると述べているが、SBIラップとどのような共存策を取るのだろうか。

ポートフォリオの中にある投資先の金融商品や、投資リスクの大きさなどの組み合わせが異なるので、SBIラップ(仮称)とWealthNavi for SBI証券とは、商品性が異なるのは自明の理。双方の商品が、顧客を奪い合わないような施策をSBI証券がどう打つのか。今後の動向に注目したい。

文/久我吉史

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。