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「年間4300億円の負担軽減」は本当か?総務省が示す携帯電話料金軽減額の根拠

2021.09.09

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は総務省の携帯電話料金軽減額の根拠について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策にインターネット会議を行っております

4300億円という数字はやっぱりおかしい?

房野氏:総務省と消費者庁の大臣が会合し、携帯電話料金の値下げによる国民負担の軽減額が4300億円になるという試算が公表されました。この4300億円はどういった根拠から出てきたものなのでしょうか。

房野氏

石川氏:総務省の資料が出ていましたが、あれって料金プランを変えた人の人数と、総務省のアンケートをベースに試算したという形になっています。5000人くらいのユーザーに移行についてのアンケートを取って、今後これくらいの人たちが動くから、それを各社の新旧料金プランの減額幅を使って計算していくと、結果として4300億円になると。

本当にあれが実態かというと、必ずしもそうじゃないと思っています。乗り換えが進めば、将来的に国民負担軽減額は年間約1兆円になると言われていますけど、それも期待値というか、「アンケート通りにユーザーが動いたら、そうなるよね」という話でしかない。話半分に聞いておいた方がいいと思います。

 KDDIとソフトバンクは年間600億から700億円の減収と言っている。NTTドコモの減収を足しても、4300億円には当然ならないし、ユーザー全員が使い放題からサブブランドやMVNOに乗り換えたわけではない。MVNO間での移行も当然あるし、そうなると値下げ効果は微々たるものになると思うので、話半分に聞かざるを得ないと思います。

【参考】携帯電話料金の低廉化に向けた 二大臣会合について - 総務省

石川氏

法林氏:話半分にというのは、我々業界人にはわかるけれど、日本の経済を左右するような媒体が「4300億円です、すごいですね」と言っているのも同然。どうしてそこで疑問を持たないんだろうということが疑問。もうちょっと頑張ってほしいなと正直思いますね。

法林氏

石川氏:多くのメディアが鵜呑みにしてしまうので、そうじゃないんじゃないかなってことは指摘したい。例えば、LINEMOは四半期で20万くらいの契約者数。それを考えたら4300億円にはならないでしょう。ahamoですら100万契約を超えただけ。1億数千万人の国民の中で、ahamoが100万超え、povoも100万契約に行くか行かないかという微々たる契約者数しかいない。そういった数字が出てくるのがおかしいと思った。

法林氏:ahamo、povo、LINEMOの3料金プランの契約者数を足しても、まだ500万に行かない。

石野氏:まったく行かないですよ。下手したら300万も行っていないですよね。

石野氏

法林氏:ということを考えると、全然、効果ないよねって気がしている。

石野氏:一応、Y!mobile、UQ mobileの値下げ分もありますが。

房野氏:4300億円はMVNOの新プランも含めた数ですよね。それでも行くはずがないということですね。

石川氏:あの報告書は「新料金プランで」と言っている。

石野氏:MVNOの新料金、Y!mobile、UQ mobileも新料金として出しているので、まぁ、それを加味すると……

石川氏:新料金プランに変えないとカウントしないってこと。ただ、楽天モバイルは自動的にみんな新料金に変わっている。その分の410万が上積みになっているけれど、楽天モバイルは1年間無料だった人が課金されるようになっているので、逆に値上げ効果もあるはずなんです。これら諸々を考えると、なぜあの数字になるかがよくわからない。

石野氏:そもそも楽天モバイルは、税抜き2980円という最大価格は変わっていない。現段階では、段階制にして下がる効果がどれだけ出るのかは、わからないと思うんですよ。

法林氏:楽天モバイルとまったく同じ構成のプランを、例えばドコモやauが作って、その代わり受信時の速度は最大3Mbpsまでというプランを作ったら選ぶ人はいるかな。

石川氏:選ぶと思います。ある程度の人気を集めるような気がしますね。

石野氏:ただ、もし低速度の料金プランを大手キャリアがやってしまうと、なんのための5G時代なのかという話になる。

法林氏:そうなんだよね。僕らが海外でそういったプランを体験したのは、3G、4Gでしたね。どちらかというと3G時代で、「このSIMカード(プリペイド)、HSDPAでつながらないね」なんてことを言っていた時代。まぁ、厳しいか。そういう意味でいうと、総務省はもうちょっと仕事をしてねと相変わらず思います。

石川氏:そうですね。キャリアメールの持ち運びやeSIM義務化の話もあって、色々頑張っているけれど、やっぱりユーザーは腰が重い。今のキャリアで満足している人が大半なんだろうなと正直思います。「キャリアを変えても、別にたいして変わらないじゃん」というのがユーザーの本音なんじゃないかと思いますね。

法林氏:キャリアを変えるのは、普通の人にとっては勇気がいるからね。なかなか難しいと思います。

キャリアの減収はどうやって回復する?

房野氏:仮に日本全体で年間4300億円の携帯電話料金の値下げがあったとして、キャリアはその分、売上が減ることになります。キャリアは民間企業で、企業は本来、利益を追求するものです。キャリアは減った分をどうやって補い、挽回していくのでしょうか。

石野氏:王道としては、金融や決済といった上位レイヤーのサービス。最近は法人事業ですね。今までなかったもので売上を作ってカバーしようとしている感じです。

石川氏:ただ、それは表向きというか、それってもう15年くらい前から言われていることなんです。だからこそ、iモードなどのサービスをやってきた。ライフスタイル領域とかスマート領域、非通信事業と言われています。でも、ドコモの収入の割合を見ると、4対1でデータ通信や音声といった通信料収入が多い。スマート領域はごくわずか。それが直近で3.5対1くらいになっていて、通信収入の割合は落ちていますが、どう考えても利潤を上げやすいのは通信料収入です。

 今後も非通信領域の収入を上げていきたいのでしょうが、そう上手くいかないのが現実で、それよりも通信料収入を元に戻していく方が、キャリアとしては一番やりやすいんじゃないかと思います。だからこそLINEMOでも、低容量のユーザーを取り込んで、いかにして5Gの使い放題に移行してもらうかという取り組みに注力している。各社ともこの1年、通信料収入は下がるけど、いずれ4、5年で元に戻っていくのではないかな。2、3年後にはユーザーの1か月のデータ使用量は20GBを超えると見られているので、キャリアの通信料収入も、早晩、戻るんじゃないかなって気がしています。

石野氏:ただ、各通信キャリは共に金融サービスにはかなり力を入れているので、そちらはある程度進むんじゃないでしょうか。KDDIがauフィナンシャルホールディングスを作ったのもそうですし、ソフトバンクはPayPayでなんとかしようとしているし。金融には結構手応えを感じているんじゃないかって気がします。

PayPay

石川氏:取り扱い高は増えるだろうけど。PayPayは今、手数料0円じゃないですか。それが10月1日から手数料を取るようになっても、1.6%からという低さで、しかもランニングコストを考えて、どれだけ儲かるの? って感じもする。マーケティング活用につなげたりして儲けられればいいかもしれないですけど、理想と現実には乖離があるんじゃないかという気がします。

法林氏:金融は、やっている人とやっていない人の差がすごく大きい。金融に興味を持つ若い人が増えてきているのは事実。ただ、事業者側から見て、売り上げを立てるには、顧客にそれなりの金額を運用してもらわなくてはいけない。とはいえ若い人で大金を動かせる人は限られると思う。でも、エントリー層を広げましょうということで、入り口を一生懸命広げている。

 KDDIはauカブコム証券とauじぶん銀行があって、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Accountの略。個人投資家のための税制優遇制度)をプッシュしている。それはこれからも続けると思う。

 ドコモは、三菱UFJ銀行と協力する部分がまだ見えてこない。一方で、お任せ運用の「THEO+ docomo」を今もやっている。それなりに金融事業は進めるでしょうが、ただ、石川君が言うように、通信料収入の減った分を完全にカバーするには、だいぶ足りない。そのリソースは楽天の方がたくさん持っている。お金のやり取りは、これからのカギを握ると思うので、やるとは思うけど、まだまだ相当頑張る必要がある。

THEO+ docomo

石野氏:本気でやるなら、楽天規模まで持っていかないといけないってことですよね。

法林氏:過去、携帯電話のサービスが広がっていった歴史を振り返っても同じ感じがするんだけど、入り口としてのスマホの良さはある。ここ数年、アメリカを中心に個人投資家が急増したと言われてるんだけど、やはりスマホの影響が大きかったわけです。スマートフォンとお金の関わりで言うと、Apple Payはクレジットカードなどの支払いをすべてスマートフォン内で一元管理できる環境を提案しているけど、あれと似たようなことをドコモやauがやるのであれば、可能性はあるかな。最近、特に銀行が「資産管理を全部うちでやりませんか?」的なアプローチを一生懸命やっている。つまり、自分の銀行だけじゃなくて、カード決済とかのいろんなデータを取ってきて、あなたの資産はこれくらいですよ、みたいなことをやり始めている。ああいうのをキャリアと一緒にやり始めると大きくなるかなという気はします。

石川氏:キャリアが金融サービスを提供するのは、解約抑止効果への期待が一番大きいんじゃないかと思う。キャリアと金融の相性が良いのは、お金借りて返さないと、携帯電話も止まるから。そこはキャリアの強みかなと。携帯電話料金を毎月ちゃんと払わないと、にっちもさっちも行かなくなるので、キャリアが提供する決済代行サービスもちゃんと支払われる。それで、「通信料金を払ってくれたらポイントを付与します。そのポイントを○○払いに使えますよ」ということでポイント経済が回る。携帯電話事業と金融の相性がいいのは間違いないです。

......続く!

次回は、イオンモバイルのキャリア端末単体販売について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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