小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

狙いはどこにある?Googleがスマホ決済の「pring」を買収した理由

2021.09.05

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はグーグルがスマートフォン決済アプリを提供する「pring」を買収した件について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策にインターネット会議を行っております

グーグルが「pring」を買収! 狙いは銀行との繋がり!?

石川氏:グーグルがスマートフォン決済アプリを提供している「pring」を買収し、本格的に日本の決済・金融サービスに参入する動きを見せていますが、個人的にはなかなか厳しいところもあると考えています。

 各キャリアの“〇〇ペイ”が、主にポイントを活用したキャンペーンを重視している中で、pringはなかなか対抗できていない。ユーザーからするとpringを選択肢に入れることは少ないかもしれません。グーグルもこのあたりのマーケティングが上手かといわれると微妙ですしね。

石川氏

石野氏:ただ、グーグルとしてはpring自体が欲しかったというよりは、pringが築いてきた銀行のネットワークが欲しかったんじゃないかなとも思います。

石野氏

法林氏:僕もその意見に賛成ですね。

法林氏

石野氏:そうですよね。銀行との接続ってなかなか難しいらしいです。そんな中pringは、決済サービスの中では目立たない印象もあるけど、銀行との接続は結構しっかりやっています。グーグルが1から銀行のネットワークと接続しようとすると、かなりの人手が必要。だから買収に至ったんだと思います。

法林氏:あと、pringは資金移動業者の登録を済ませているので、グーグルとしては買収すれば、結構手間が減る。資金移動業者に登録していれば、送金ができるようになる。

 つまり現状は決済しかできないとしても、資金移動業者の登録があれば個人間のお金のやり取りができるようになる。マネーロンダリング対策などの課題もあるけれど、これは大きな要素です。なので、グーグルが日本でクレジットカードを発行するとか銀行をやるという話ではなくて、お金のやり取りをできるようにするという話だと思います。

石野氏:そうですね。この買収をもってグーグルがQRコード決済としてのGoogle Payを始めるという話ではないと思います。今のGoogle Payでいうと「Visaタッチ」とか「iD」が使えるけど、そこに銀行からチャージできるプリペイドみたいなサービスが加わるのではないでしょうか。

法林氏:あと、この前、テレビで見たけれど、日本で働いている外国籍の人が母国にいる自分の親へ結構な額を送金している。そういう時にセブン銀行とかのATMからGoogle Payにお金を預けて、そのまま送金するといった仕組みができるかもと思いました。

石野氏:前提として今の日本でのGoogle Payは、FeliCaのシステムを元にしたサービスで、グーグルにとってのうま味があまりない。グーグルが手数料で収益を上げるにはもう一つなにかしなければいけない状況で、pringに白羽の矢が立ったのかなと思いますね。

石川氏:繰り返しというか、ドコモとソニーがFeliCaの仕組みを作って、KDDIはうま味がない中で仕方なく搭載していたけれど、やがて「au WALLET(現 au PAY)」を作ったという流れがある。今回も同じで、手数料を取るための主導権争いに見えます。今でいうとVisaがVisaタッチで頑張っているのも同じ理屈です。

石野氏:iDはドコモに手数料が渡るので、Visaは自社へ手数料を直接取りこみたいという動きですよね。

石川氏:ユーザーからすると便利に使えればなんでもいいんですけど、各事業者が懸命に覇権争いをしている状況でしかないかな。

石野氏:それでいうとドコモは、iDの手数料で結構儲かってますよね。だからこそドコモはもっとやりようがあった気がします。

法林氏:ドコモとして方針転換のタイミングはあったよね。人事の関係もあって自分たちのサービスとしてあまり商売できなくなってしまった印象です。

決済サービスの使われ方は今後さらに変わる?

石川氏:世間的にはこれからQRコード決済の手数料がかかるようになって、PayPayとかも使いにくくなるといわれている中で、どうなっていくのかが注目ですね。本来であればPayPayでしか提供できないようなマーケティングサービスがあればいい。

 例えばユーザーがA店で支払いをしたら、ユーザーとA店が繋がることになるので、以降使えるクーポンとか会員証を発行するなどできれば、お店としてPayPayを継続せざるを得なくなる。まさにマイストア機能はそのあたりを狙ってきた。

石野氏:大手では、ユーザー還元をある程度ちゃんとやってますよね。

石川氏:そうですよね。大手ではPayPay祭りで何%還元などをやってお客さんに還元しているけど、ユーザーとしては本来、街の小さな商店でPayPayを使いたかったりする。そういうユーザーが継続して使える還元策になっているのかがポイントだと思います。今さら現金払いへ戻ってしまうのはもったいないですよね。

石野氏:どうなんですかね。PayPayの手数料は一応限界最低水準で提供するとはいっているので、1%、2%とかになるかもしれません。

※編集部注:2021年10月1日以降、年商10億円以下の加盟店における決済システム利用料を、ユーザーが「PayPay」を利用して決済を行った取引金額の1.60%(税別)からとした。

石川氏:PayPayは決済会社なので決済でちゃんと儲けなきゃいけないけど、d払いとかau PAYは儲けなくてもいいのではという考え方もできなくはない。どちらもそれぞれの回線契約者が使ってくれるためのプロモーション費としてとらえれば、決済手数料0円でもやっていけなくはない。

法林氏:PayPayの手数料が有料化するあたりが鍵とは思うけれど、不思議なのがずっと噂されている〝PayPayのクレジットカード〟が一向に出ないところだね。

 石川君のいう通り、PayPayはキャリアとしてのソフトバンクのものではなく、兄弟会社みたいなもの。auもKDDI傘下のauフィナンシャルサービス株式会社ではあるけど……といった感じで、各キャリアでクレジットカード/決済サービスの位置付けが若干違う。ドコモはdカードを使ってドコモオンラインショップで買い物をするとポイントが倍になるという特典があって、auも同じことをしていたんだけど、気がついたらなくなっていた。auで端末を買うときにau PAYカードを使う必要がなくなっているので、auはクレジットカードを別の展開に利用するつもりかもしれない。

石川氏:ドコモの場合、CMを流して若者にも訴求している「dカード GOLD」がメインに見えるので、やっぱりカードを重要視している印象です。auは早くからプリペイドをやってきた中でクレジットカードをどうするのかがぶれているというか、どれをメインにしたいのかがいまいちわからないです。PayPayに関しては、LINE Payといずれ統合になると思っています。LINE Payカードがすでにあるので今後整理されていくのではないでしょうか。

dカード GOLD

房野氏:グーグルは買収をして大きくなってきた会社でもあるので、いっそのことPayPayを買収してしまえばとも少し思ったのですがどうお考えですか?

房野氏

石川氏:グーグルはネットの世界では強いけどリアルのサービスは弱いからこそ、リアルに強い会社を買収することでシナジーが生まれるという側面があります。確かにPayPayはリアルが強い会社ではありますけど、今ソフトバンクグループの中心にあったりするので、PayPayをどうこうしようとはならないのではないでしょうか。

石野氏:今はさすがにソフトバンクが譲らないと思いますよ。

Google Payは今後Apple Payの対抗馬になる?

房野氏:少し話を戻しますが、Google PayはAndroidユーザーの中でどのくらい使われているのでしょうか。

法林氏:基本的にはFeliCa搭載スマートフォンの2~3割に準じているのではないでしょうか。利用率でいうとそれ以下になると思います。

石野氏:正直今のGoogle Payはあってないようなものというか、FeliCaのレイヤーの上にかぶせただけのサービスになっているので知らないうちに使っている人もいるのではないでしょうか。

法林氏:そうだね。結局画面上にGoogle Payと表示されていても、実際に動いているのはiDだったりQUICPayだったりするので、あまり関係ない。

石野氏:そうなんですよ。だからユーザーが能動的に使うシーンって、デビットカードのVisaタッチを登録したり、SuicaアプリじゃないところでSuicaの新規発行を行うくらいなので、Apple Payとはレイヤーが違うイメージです。

 今はFeliCaの上にGoogle Payとおサイフケータイアプリがあって、どちらからでもFeliCaにアクセスできる状態。FeliCaの上に一枚かぶせたサービスなので、なんとも形容しにくい状態です。

石川氏:それでいうと、pringを買収して銀行との接点ができるかもしれないけど、Google Payの中でグーグルが何をしたいのかがいまいち見えてこない。Apple Payはユーザー間の送金ができたり海外ではカードがあったりと、機能的に豊富です。

法林氏:Google Payも送金できるようになるんじゃないかなぁ。

石野氏:現時点で海外ではGoogle Payでも送金できますよね。なのでそのサービスを日本でもやりつつ、いま積極的なVisaタッチを入れたりすれば、pringのネットワークを使ってチャージしたお金をお店ではVisaタッチで使えたり、Googleアカウントで送金したりができるようになると、Google Payの存在意義が出てくるかな。

房野氏:先ほどApple Payの話が出ましたが、Apple Payは何で儲けているんですか?

石野氏:Apple Payはカード発行会社、カードブランド、アップルで手数料を分けているはずなので、1決済ごとにアップルにも手数料が入っているはずです。

房野氏:Google Payでいうと、根本的に収益源が見えないサービスを展開して得になるポイントがわからないのですが……。

石野氏:自社でサービスを抱えて、チャージしたお金をVisaタッチなどで使えるようになればカード発行会社はグーグルということになるので、手数料が入るようになるはずです。実際にカードを作るというよりは、バーチャルのカードを提供するという形ですかね。これをやらないと収益化できないと思いますよ。

石川氏:Googleアカウントに紐づいて残高をチャージしたりできるでしょうし、そこにカードを紐づけてストレージのお金を払うようにできたりするはずなので、効果は十分にあると思います。

石野氏:なので次のグーグルの新型スマートフォン、「Pixel 6」に合わせて新しいサービスが出ると面白いんですけど、グーグルはあまりそういった連携はしない会社なのでなさそうですね。

Google Pixel 6シリーズ

決済サービスの進化で銀行との付き合い方も変わる!?

房野氏:pringをグーグルが買収することによって、Androidユーザーやグーグルユーザーにはどういったメリットが想起されますか?

法林氏:結局、どんなサービスを展開するのかはわからないので、はっきりとはいえませんが、グーグルが狙っていることはお金のやり取りだと思います。個人間のやり取りなのか、個人と法人間の決済なのかはわからないけど、日本の状況を考えると個人間のやり取りはあるのかなと思います。

 近年は〝デジタル給与〟みたいな話も聞くので、〝銀行ではないなにかのお金〟という形をやり取りするのかな。

石川氏:昔pringの広報に話を聞いたときにはデジタル給与を意識していて、社員の経費をアプリ経由で清算するといったことを考えています。将来的に法律が変われば給料をデジタルで支払うといった世界を目指していますと話していた。

 じゃあグーグルと組んでなにができるかというと、将来的には社員が持っているGoogleアカウントに給料を支払うといった世界になるかもしれない。シナジーとしてはあり得るし手っ取り早い、企業としても導入しやすいのでこういったサービスが始まるかもしれません。

石野氏:これで一部のQRコードだけしか使えないと困るので、利用先を広げているといった感じですかね。

石川氏:そうですね。そこで入ったお金をGoogle Payに紐づいているSuicaなどにチャージできるようになると使い勝手が広がるし、これはAndroidに限った話ではなくてiPhoneでも使えるはずなので広がっていく可能性はあります。

房野氏:確か仮想通貨も給与に認めるという話もあったと思いますが、Google Payも仮想通貨と繋がることはあるのでしょうか。

法林氏:そこまではまだないと思います。今、石川くんが説明してくれた話の延長線上で考えると、今までやっていることは買い物の支払いをGoogle Payでやっているように見えるけど、実はQUICPayで支払っていて、お金はカードが登録されている口座からJCBなどを経由して清算されているので、手数料はここに発生している。

 これって支払うための手数料ばかりが発生しているんだけど、Googleアカウントに給与が支払えるようになると、今度は入ってくる方の使い道ができる。ここから他のものに使うことが考えられるので、道は広がると思います。

 資金移動業者になるということは、例えば、電気代の支払いをグーグルが管理できるようになれば、「この地域は今月暑かったから電気代が高い」といったマーケティングができるようになる。するとグーグルはお得意の広告展開ができるようになる。そんな形でビジネス化していくのではないでしょうか。

石野氏:決済は個人情報としてはかなり重要ですからね。

房野氏:これだけ銀行の金利が低くて、銀行以外からも融資が受けられる状態になると、銀行にお金を預けないほうが有利と考える人が増えそうですよね。

石野氏:実際に、各所がやっている〇〇Payのポイント投資は利率が非常に高いです。PayPayなどでは、ボーナスをそのままにしていたらいつの間にか倍に増えていた……みたいな話もあるほどです。

房野氏:銀行は免許制で、預金に対して金利を与えるのは銀行でないとできないと思うのですが、決済会社のポイントは別物なのでしょうか。

石野氏:ポイントは運用になるので、投資に近い形ですね。

法林氏:ポイント運用でいうと、サービスを提供している会社はポイント支払いに相当する準備金を保有していないといけない。例えば、石野君がPayPayボーナスで1万円預けていたのが2万円になったとしたら、PayPay側はちゃんと2万円を準備していないといけない。ここが大きいと思います。

 そうなると、銀行の存在意義があるのかという話に戻ると、今は給料が入ってきてクレジットカードや電気代などを払うための道具がメイン。次に利用されるのがローンとか資産運用の話になってくる。キャリアでいうとau じぶん銀行は住宅ローンなどが組めますね。

石野氏:それでいうとソフトバンクもPayPay銀行でお金を借りられますね。

石川氏:ソフトバンクはPayPayを通じて銀行業務を拡大しようと考えているはずです。

房野氏:そういう意味でいうとキャリアが銀行業務を行ってくれたほうがユーザーとしてはありがたそうですね。

法林氏:その通りだと思いますよ。手元にあるデバイスで操作できるわけですから、当然楽ですよね。

石野氏:大きな流れとして、キャリアに限らずソニー銀行などもそうですが、〝個人ユーザーはネット銀行を利用する〟という流れが加速していて、各銀行のATMの設置数が少なくなっていますね。

法林氏:メガバンクは最近キャリアと手を組んでいることからもわかるように、時代の曲がり角に差し掛かっています。もっというと地方銀行は今後どうやって生き残っていくかという話になるでしょう。

房野氏:海外のキャリアは決済サービスをどこまでやっているのでしょうか。

石川氏:なかなか海外でも銀行業務までできているイメージはないですね。ただ韓国だとクレジットカードとの紐づきが強くて、クレジットカード支払いなら端末代金を割引するという話もあります。

 アメリカなどはまだ銀行が強いイメージがありますし、ソーシャルセキュリティーナンバーとの紐づきの強さが個人の信用につながったりするので、銀行との付き合い方は国によって様々です。

 中には銀行口座を持てない人が多い国もあって、そういった人はSMSと紐づけて送金してくれる会社を利用していたりします。

石野氏:SMS送金をサービスとしてやっているキャリアもありますよね。

石川氏:日本でいえば、「+メッセージ」みたいなものと連携して、電話番号で送金できるようになると便利なんですけど、実現には至っていませんね。

......続く!

次回は、新型Windowsについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

小学館ID登録&@DIMEログインでルンバi3+&Amazonギフト券が当たる

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年9月16日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「モバイルPCスタンドMAX」! 特集は「通勤自転車ベストバイ」、「Chromebook vs Surface」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。