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「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」初の〝女性仕込み統括〟が目指す日本ワインの味

2021.09.04

日本ワインの発展をリードし続ける「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」(山梨県甲州市)で、今年初めて女性の仕込み統括が誕生した。

1877年に初めて民間のワイナリーである「大日本山梨葡萄酒会社」(現メルシャン)が立ち上げられ、「シャトー・メルシャン」は現在、勝沼(山梨県甲州市)、桔梗ヶ原(長野県塩尻市)、椀子(長野県上田市)の3ワイナリーを構える。

生産・仕込み量が最も多い「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」初の女性仕込み統括に任命された丹澤史子さん(38)は、メルシャンに入社するまで、意外にもワインに親しんでいなかったという。

今年の仕込みに関する様々な決定権を持つ「仕込み統括」に抜擢された丹澤さんの歩みを振り返りながら、今年のワイン造りへの意気込みを伺った。

ワインに興味を持ったのはメルシャンの採用試験がきっかけ

「仕込み統括」とは、仕込みに関わる全業務を統括し、今年のワインの味わいを決める責任者である。ブドウの収穫日及び細かな醸造方法の決定や、仕込みに関わる全ての人的配置の決定など、役割は多岐に渡る。

丹澤さんは実家のブドウ畑(丹澤園)を引き継ぎ、メルシャンにブドウを卸す契約農家でもある。兼業農家として日々ワイン造りに向き合う現在だが、ワインに興味を持つきっかけは、就職活動中に父から言われた言葉だった。

山梨県出身の丹澤さんは、高校生の頃に「食品会社で製品を開発したい」という夢を抱き、北海道大学農学部に進む。分子酵素学の研究に励み、糖質分解酵素の機能解析などを行った。

就職活動をする中で、ビールなら麦、ワインならブドウなど、原酒原料から発酵の力でさまざまなお酒を造れることに興味を抱いた。

「お酒の会社を受けていると父に相談したところ、父が実はワインが好きだと言うことを初めて知りました。父が山梨県の農政担当として働いていた頃、シャトー・メルシャンの浅井昭吾さん(※)と出会い、ワインを飲む機会を得、初めてワインをおいしいと感じたそうです。

『お酒の会社を受けるなら、メルシャンを受けてみなさい』と父に言われ、浅井さんの『ワインづくりの四季』を読み、自然を相手にすることが面白そうだと思いメルシャンを受けました。そこで、初めてワインのことを知りました」

卒業旅行で初めてワインを飲みにパリとボルドーへ行き、ワイナリーにも訪れたことで、入社前に本場フランスでワイン造りを肌で感じることができた。

(※)元メルシャン勝沼ワイナリー工場長で、山梨県及び日本のワインの発展に大きく貢献した。ペンネーム「麻井宇介」として「ワインづくりの思想」「ワインの四季」など著書多数。

栽培・醸造両方のスペシャリストになるために、新しい留学先を会社に直談判

●メルシャン入社後

入社後は商品開発研究所にて、現椀子ワイナリー長の小林弘憲さんの指導のもと、甲州きいろ香(※)の香り成分や、勝沼を代表する黒ブドウのマスカット・ベーリーAの基礎研究を行う。大学時代の研究をベースとしながら、ワインの香り、味わい、ブドウそのものの研究を進められることに魅力を感じた。

「マスカット・ベーリーA」のワインは他の品種の赤ワインに比べタンニン分が少なく軽やかなことが魅力だが、その一方でマスカット・ベーリーAでもしっかりとした飲みごたえのワインを造れないかと、梗(こう)を用いた醸造について研究を行った。この研究を含む「マスカット・ベーリーAの香味に関する研究開発」が、共同研究員とともに日本ブドウ・ワイン学会2015年大会技術賞を受賞する。

(※)メルシャンが世界で初めて、ワイン用ブドウ「甲州」からグレープフルーツのようなさわやかな香りを引き出し、きいろ香と名付けた。

●留学を志したきっかけ

基礎研究を5年ほど行った後に、藤沢工場品質管理課に3年間従事する。藤沢工場では国内製造ワインの開発を行っていたが、海外へ行きたい思いが募り、海外異動を希望したところフランス留学を打診された。

「留学を打診された時は、『行きます!』と快諾しました。前任者と同じボルドー留学の辞任を受けましたが、ボルドーでは醸造と栽培の仕事が分かれており、ブドウの栽培とワイン醸造の両方の経験を積むことは簡単ではないことが分かりました。フランスのワインの教育制度を勉強し直し、フランスには各地に農業専門学校があり、ワイン産地ではブドウ栽培・ワイン醸造について、理論と実践をともに学べることを知りました。フランスには有名な産地がいくつもありますが、天候やワイン畑の規模がより日本に近いと感じたブルゴーニュへの留学を提案し、承認を得ました」

実家のブドウ畑を引き継いだこともあり、栽培・醸造両方の習得を目指し、ついに渡仏する。

研修を快く受け入れてくれた、メルシャンのパートナーである名門ワイナリー「アルベール・ビショー」。ブルゴーニュは、畑は小さいが、ファミリーで畑を大切にしているところに留学前から魅力を感じていた

座学と実践を通して徹底的にブドウ栽培・ワイン醸造を学ぶ

コート・ド・ボーヌの畑での授業風景。左、真ん中はクラスメイト、右は栽培実習の先生

メルシャンの研究所でブドウの研究はできたが、剪定や除葉など、畑での作業はできなかったため、ブルゴーニュで深く学ぶことができた。

専門学校では座学だけでなく畑での実習、ワイナリーでの研修もあり、一年間の畑仕事を学びながら実践することで身に着けた。そして、ブルゴーニュで出会った人たちとの交流もかけがえのない思い出となった。

「最初はフランス語を話せず、コミュニケーションも取れませんでしたが、次第にできることが増えてきました。最後はブルゴーニュ大学で、より科学的に理論を学ぶ授業を受けました。専門学校にはこれから畑やワイナリーで働きたい人が来ていましたが、大学ではすでにワイナリーで働いている方などワインに従事している人たちに囲まれ、大学の先生からは、最新のトピックや技術を学ぶことができました。

昼休みにはクラスメイトがワインと軽食を持ち寄り、毎週ワイン会をするようになりました。私も『北信シャルドネ』など様々な『シャトー・メルシャン』のワインを持って行き、友人が餃子を作ってくれました。ワインは全て好評であっという間になくなりました。名だたるシャルドネの銘醸地があるフランスに、日本のシャルドネを持ち込むことは緊張しましたが、既にワインの見識がある学生・先生たちみんなに、自分が持ち込んだワインを喜んでもらえたのが印象に残っています」

大学でのシャトー・メルシャンの利き酒会。「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RGC千曲川左岸収穫 2016」などを振る舞った

帰国後はブルゴーニュで学んだ様々なことを、日本の畑で応用することが難しいと直面する部分もあり、試行錯誤は続く。シャルドネの醸造についてはシャトー・メルシャンと果汁の扱い方が違う事を目の当たりにし、「北信シャルドネ」の中でも特に熟したブドウはブルゴーニュスタイルで仕込んでみようなど、留学経験を活かして今年挑戦したいことはあると丹澤さんは話す。

また、フランスで素晴らしいワインとたくさん出会えたことも財産となった。飲んでみなければ分からず、目指せなかった味わいを、何年もフランスにいたからこそ体験できたことだと振り返った。

初の女性仕込み統括として

仕込み統括を命じられた時は、「いつか回ってくるのかな」と思っていたという。今まで力仕事ができる男性ばかりが務めてきたので不安はあったが、先輩方から全力でバックアップするという力強い言葉を受け、「何とかなる!やってみてダメだったら考えよう! ここは日本なので、みんな日本語で助けてくれるので大丈夫!」と思い挑戦を決めた。

●今年のワイン造りで目指したいこと

「いろいろとワインを飲んできましたが、ブドウの魅力がストレートにワインに出ていると感じられるワインが好きです。大事にしたいのはブドウを最大限に活かしてあげること。目指すワインにするために造り込むというのではなく、そのブドウの魅力が出るのがいいなと思います。

例えば白ワインは、メルシャンらしいフレッシュさや溌溂さは継承しつつ、ブルゴーニュに行ったからこそ白ワインの熟成した魅力が分かった点もあるので、熟成させてさらに魅力を放つ白ワイン、という視点でももっと試行錯誤してみたいです」

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー

「シャトー・メルシャンは勝沼、椀子(上田市)、桔梗ヶ原(塩尻市)と3つのワイナリーがあり、年間で100種類以上の製品を造っています。北信(長野県北部)、椀子、塩尻など長野県で収穫されたブドウも、設備が整い、かつ最も規模の大きな勝沼ワイナリーで仕込みます。

シャトー・メルシャンには様々な新しい製法を生み出してきた歴代の先輩方がたくさんいます。先輩方にどんどん質問出来てしまうことが私の強みだと思っているので、100種類以上の製品を仕上げるべく、先輩方の経験を聞き、知恵を借りながら、一つひとつのブドウに対して最良の方法を考えていきたいです。

また、『ここで収穫するブドウは必ず樽発酵』など、思い込みを捨てて仕込んでいくことで、何か新しいものが見えるかもしれないので、いろんなトライアルをして、皆が納得できるワインを造りたいです。仕込み時期の機器の準備・メンテナンスを行い、若いスタッフたちとコミュニケーションを取りながら育成を図るなど、忙しくなる収穫の前に、整えるところはしっかり準備していきます」

丹澤さんは契約栽培農家としてブドウも造るワインメーカーであり、ブドウ栽培がいかに大変かということを身に染みて感じている。

「山梨のブドウ農家としては、正直、醸造用ブドウで儲けるのは大変、だと思います。

醸造用ブドウの栽培をもっと改善していく、また日本ワインをもっと魅力的な価値あるものにしていく努力を本気でしていかなければ、醸造用ブドウの栽培が広く根付くことは難しいと思っています。地元山梨県のブドウ栽培、そしてワイン造りがずっと続いていくように、自らも貢献したいと思っています」

日本ワインをより良くしたいという熱い想いを持つ丹澤さん。今年は梅雨の影響も少なく、シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー、丹澤園ともにブドウの生育状態は今のところ順調とのことだ。9月から本格的な収穫が始まるので、丹澤さんが仕込んだワインを飲める日を楽しみに待ちたい。

※本記事は2021年7月下旬に取材しております。

丹澤史子さんプロフィール

1982年山梨県出身。2006年北海道大学農学部応用生命科学科卒業、2008年北海道大学農学院修了後、同年メルシャン入社。2017年~2019年夏までフランスに留学。歴代の先輩方が学んだボルドー留学の辞令を受けるが、会社としての知見をさらに深めるためにブルゴーニュへの留学を提案し、承認され渡仏。BPA(ブドウ栽培・ワイン醸造に関する農業職業免許)及びDUTO(大学認定醸造技術士)を取得し、ブドウ栽培・ワイン醸造技術双方に精通する。
2021年シャトー・メルシャン初の女性仕込み統括に任命される。祖父から続く実家のワイン用ブドウ畑を引き継ぎ、兼業農家としてシャトー・メルシャン、自社畑双方の立場でワイン造りを行う。

【「ワイナリー限定販売」丹澤園のブドウから造られたワイン】

シャトー・メルシャン 市川三郷甲州 キュヴェ・タンザワ 一文字短梢 2018

ワイナリー販売価格税込3000円

カボスのような和柑橘に加えて白桃の甘やかな香りがあり、豊かな酸味とミネラルが広がるエレガントな味わい。収量制限により凝縮感の高い甲州が収穫されるのが特長。

シャトー・メルシャン 三珠プティ・ヴェルド キュヴェ・タンザワ 2019

ワイナリー販売価格税込4500円

酸味のあるベリー系のジャムの香りに、心地よい酸味と渋みが感じられる。日を追うごとに香りと味わいに複雑さが増し、美しい余韻が続く上品な赤ワイン。

シャトー・メルシャン公式サイト

取材・文/Mami
(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
https://mamiwine.themedia.jp/

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