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【サステイナブル企業のリアル】「グラスだけでなく日用品など多岐に及ぶハレハレの可能性を追求したい」sid・清水勝明社長

2021.09.02

前編はこちら

地球環境の保全に配慮し、未来の子供たちの利益を損なわない、持続可能な社会発展にコミットする製品や企業を紹介するシリーズ「サステイナブルな企業のリアル」。

今回はグラスである。落としても壁に投げつけても割れない、耐熱性に優れ、赤外線で劣化し黄ばむこともない。クリスタルと見間違う透明度を未来永劫に失わない。揺りかごから墓場まで、生涯使えるカットグラスだ。

sid株式会社 代表取締役清水勝明さん(75)。試作品製作の会社を起業したアイデアマンの清水さん。シリコンで型を作り樹脂を流し込み、自動で試作品が作れる真空注型機を開発。会社は成長したがリーマンショックで銀行の貸し剥がしを食らい、借入金の返済のため資産を売却し自主廃業。再建した真空注型機で小ロットの製品と、試作品の製作を手掛ける会社が軌道に乗りはじめた2013年頃、シンデレラの”ガラスの靴“の製作が舞い込む。これがhare‐hare(以下・ハレハレ)グラスの開発に繋がっていく。

”ガラスの靴“を履けるようにしたい

「展示物として使いたいので、シンデレラのガラスの靴を作ってほしい」

それはアミューズメント系の企業からの注文だった。3Dプリンターでハイヒールの現物の形を作り、真空注型機を使い、シリコンの型を作り、その型に透明な樹脂を流し込み固める。いつもの試作品を製作する工程を経て、プラスチック製のガラスの靴は完成し納品した。客も透明なガラスのハイヒールに満足の様子だった。ところが――

「納品したプラスチック製のハイヒールは、硬くて人は履けません。僕は人が履くことができる“ガラスの靴”を作りたかったんです」

――透明で人が履けるほどの柔らかい靴…

「ガラスの靴の透明さは保ちたい。例えば携帯電話のカバーを見ても、プラスチックは紫外線で劣化し黄色くなります。この黄ばみを防ぎたかったんです」

――透明で柔らかく、さらに黄ばまないプラスチック。そんな樹脂があるのですか。

「ありません。だから自分で作ろうと」

――自分で作るって、ニーズはあるのですか。

そんな質問に清水はニヤッとして立ち上がり、お尻のポケットから試作品を取り出す。

「かけてみてください。絶対に壊れない老眼鏡で、レンズもプラスチック。私が開発した新素材の樹脂で作れるのは、ハレハレグラスだけではない。いろんな用途があるんです」

新素材、特殊な熱硬化性樹脂の開発

最初は取引のある樹脂メーカーに、樹脂の開発を依頼した。だが、いつまでたってもモノができない。そこで、町工場の社長が新素材の樹脂の開発に、取り組んだというわけだ。

「開発したのは過熱で硬化する熱硬化性樹脂ですが、このタイプは再加熱しても元に戻らないとか、使い勝手が限られるので、他の過熱性の樹脂に比べ生産量が小さい。開発があまり進んでない分野で種類も少なかったんです」

川崎市内の小さな研究施設を開発拠点にして、大手材料メーカーの研究員からもアドバイスをもらった。黄ばみの防止を強化するためにバイオマスも取り入れた。イモの一種のキャッサバと、トウモロコシの2種類を樹脂に31%含有したのだ。植物由来の成分を使うことで、時代の流れのSDGsにも沿う形になった。開発に6~7年の歳月をかけ、オリジナルで特殊な熱硬化性樹脂は完成する。あとに、この自社開発の新素材をハレハレと名付ける。

加工は自社製の真空注型機を使う。例えばガラスの靴を新素材で製作するなら、3Dを使い靴の現物の形を作り、真空注型機に入れてシリコンで型を作る。その型に開発した特殊熱硬化性樹脂を流し込み硬化させる。真空の中での成形は、樹脂に気泡が混じることがない。肉厚のあるものに仕上げることができる。

ヒールの部分に手を加え、完成したシンデレラの靴は、ファッションショーでも使える、しなやかで履きやすいものになった。

カットグラスも作ってみるか

シリコンの型は劣化が早いので、20数個しか作れない。開発した新素材、ハレハレで製作する製品は、限られた付加価値のある小ロットのものに狙いを定めた。

「ハレハレでうちが最初に試作したのは、ジャンデリアでした。新素材で製作したシャンデリアの重さはガラス製の5分の1ほど、地震で落下しても割れない。人に当たっても、軽いし柔らかいのでケガがない。もちろん外見はクリスタルガラスと寸分違いありません」

清水は試作したハレハレ製のシャンデリアをメーカーに持ち込んだ。すると、シャンデリアメーカーは、クリスタルグラスも取り扱っているではないか。

出典:https://www.hare-hare.com/product/detail/5

「うちは商品開発が専門ですから、これも試作してみるかと、自然の流れでグラスを作ってみたんです」

3Dプリンターでグラスの現物の形を作製、真空注型機の中で現物からシリコンの型を作り、その型に新素材の樹脂を流し込んでハレハレグラスは完成した。2019年秋のことである。

画期的な商品だという自負はあったが、何せ埼玉の川口の零細企業が開発した商品だ。世の中に知らしめる術がなかった。ところが、

出典:https://www.hare-hare.com/product/detail/3

「病院や施設で使ってほしい」

「散歩しながら街を紹介するテレビ番組で、たまたま昨年の秋、タレントさんがうちを訪れ、ハレハレグラスを紹介してくれたんです。すると続けざまに6本ほど、テレビが取材に来て番組で紹介してくれました」

これがきっかけだった。ハレハレグラスは一気にブレイクした。黄ばむことがない、未来永劫変わらぬクリスタルのような透明度、高い耐熱性、落としても割れない、キズも付きにくい、主にネットを通してそんなグラスに注文が殺到した。

――注文に応じきれませんね。

「実はハレハレグラスを量産するために、設備投資をしました」

すでに川口市内の工場に自動化のラインを新設。ラインは真空注型機でシリコンの型を作り、新素材の樹脂を流し込んで、ハレハレグラスが自動で製造できる。シリコンの型は劣化が早いので20数個作るとリサイクルに回し、次々に機械が新しい型を作る。

未来永劫使えるハレハレグラスの値段は6600円(税込み)。いささか値段は張るが、地震大国の日本でグラスのみならず、ハレハレは日用品等、用途は多岐に及ぶ。

「病院や老人ホームの食器は、無味乾燥で味気ない。僕は身体の弱った人や弱者やご高齢の施設で、ハレハレの食器を使ってほしいと思っているんですよ」

町の発明家はそんな想いを吐露した。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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