
妻との死別は男性の前立腺がん発症リスクを高める可能性
妻を亡くした男性(以下、寡夫)は、配偶者を含むパートナー(以下、パートナー)を持つ男性に比べて、進行前立腺がんの診断を受ける確率が高いとする研究結果が報告された。
Institut national de la recherche scientifique(INRS、カナダ)のCharlotte Salmon氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Epidemiology」に7月18日掲載された。
パートナーとの揺るぎない信頼関係は、前立腺がんの良好な予後と関連することが過去の研究で明らかにされている。
しかし、パートナーの有無と前立腺がん発症との関連については、ほとんど解明されていない。そこでSalmon氏らは、前立腺がん関連遺伝子変異研究グループ(PRACTICAL)コンソーシアムのデータを用い、12件の症例対照研究のデータを統合して、両者の関連を分析した。
分析に組み入れられた対象者は、組織学的に前立腺がんと確定診断された患者1万4,760人と、対照1万2,019人であった。パートナーの有無は、パートナーがいる、別居/離婚、独身、寡夫で分類した。
分析の結果、寡夫では、パートナーがいる男性と比べて、前立腺がんを発症するリスクが高いことが明らかになった(オッズ比1.19、95%信頼区間1.03〜1.35)。
前立腺がんの進展度別に算出した寡夫でのオッズ比は、限局がんで1.14(同0.97〜1.34)、局所浸潤がんで1.53(同1.22〜1.92)、転移がんで1.56(同1.05〜2.32)だった。
Salmon氏は、「われわれが実施した大規模研究により、寡夫では、パートナーがいる男性に比べて、後に進行前立腺がんの診断を受けるリスクの高いことが明らかになった」と述べている。
Salmon氏らによると、パートナーと同居している男性では、食生活がより健康的になりやすいことが、多くの研究で示唆されているという。
同氏は、「パートナーと同居する男性では、何らかの症状が現れたときに、パートナーが、医者に診てもらうことやスクリーニング検査を受けることを勧める。そうした勧めを受けることがない人では、がんが発見されないまま時が過ぎ、より進行した状態になってから診断される可能性がある。こうなると、良好な予後を期待できない」と説明する。
寡夫で前立腺がんの発症リスクが増加するその他の理由としてSalmon氏らは、飲酒やパートナーとの死別が心理面にもたらす影響や、食生活などの生活に関わる要因が関連している可能性を指摘する。
Salmon氏らは、今後、このリスク上昇の原因を調査し、リスクを軽減するための適切な公衆衛生対策を特定していきたいとしている。(HealthDay News 2021年8月13日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://link.springer.com/article/10.1007/s10654-021-00781-1
Press Release
https://inrs.ca/en/news/widowers-more-likely-to-be-diagnosed-with-advanced-prostate-cancer/
構成/DIME編集部