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洋上風力、電気運搬船、大型電池工場で自然エネルギーの普及を推進する注目企業PowerXの戦略

2021.08.23

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

自然エネルギーの爆発的普及を目指した新会社

「洋上風力」「自社開発の電気運搬船」「国内大型電池工場」で、自然エネルギーの普及、蓄電、送電技術において新規事業を展開する「PowerX」の会見が行われ、事業戦略が発表された。

地球温暖化に起因した異常気象が毎年のように起こる昨今、脱炭素、再生エネルギーが世界的な潮流になりつつある。しかし、日本のエネルギーの化石燃料(原油、LNG、石炭)依存率は85.5%(2018年度)で、かつ97%以上を海外から輸入しており、日本のエネルギー自給率は11.8%(2018年度)と世界で34位というのが現状だ。

日本政府は2030年までに最大38%の電力を自然エネルギーで賄うとの目標を立てており、そのため洋上風力発電量を2030年までに10GW、2040年までに30GW〜45GWまで引き上げる必要があるとされている。

「日本の再生エネルギーの資源として洋上風力に注目が集まっている。現在は27万KWの発電容量だが、2040年までの目標として45GWのポテンシャルがあるとされている。これを実現するためにどのような方法があるのか、ここにビジネスとして解決する課題があると事業を立ち上げた。

風、水、太陽と自然が生み出す燃料をバッテリーに溜めて、船で運ぶ。電気の燃料を運ぶ時代から、電気そのものを運ぶ時代へと変換する。自然エネルギーの爆発的普及のために、作る、溜める、運ぶ、このすべてをデザインすることが我々のミッションだと思っている」(PowerX代表取締役社長兼CEO 伊藤正裕氏)

送電手段として世界初の電気運搬船「Power ARK」を自社で開発

洋上風力を作る場所と、電力を消費する都市部は離れており、従来のインフラでは対応できない課題があった。その解決のため同社が開発を行っているのが、送電手段として世界初の「電気運搬船」で、洋上から世界中の変電設備まで無人で運搬する。

洋上風力でつくられたクリーンな電力をバッテリーに直接蓄電して運ぶ、自社開発の電気運搬船「Power ARK100」は、大型系統用蓄電池を100個積める日本近海向けの船体。大きな都市の1日分の電力に相当する220MWhの電気を運搬できる。

電気のみで駆動した場合の航行可能距離は100~300㎞、バイオディーゼル燃料を使用した場合は1000~3000㎞まで可能になる。「Power ARK100」は小型船に分類され、さらにスケールアップした船体の開発も検討されており、蓄電池だけでなく、荷物と併用して蓄電池を運ぶこともできるようになる。

現在の洋上風力はケーブルの関係もあり、沖から15~20㎞ほどの近い場所に造られている。遠浅の海がある国では100㎞沖に造られることもあるが、沖は風力が強いため発電の効率としては有効だが、陸までのケーブルを敷設すると、環境面、コストなど様々な問題がある。船がケーブルの代わりに運ぶことで、海底の掘削等、大規模な敷設工事が必要となる海底ケーブルに比べ、環境や自然に優しく、災害にも強い、これまでにない送電事業が実現できる。

また、海底ケーブルから解放されることで、洋上風力発電所の設置場所の自由度も大きく向上。現状では北海道の洋上風力を東京まで送電する設備はないが、北海道の再生エネルギーを一ヵ所に集約し、港から大型電気運搬船で系統がつながる港に運び、そこから各地へ送電することが可能になり、ケーブルに比べ設置、稼働開始までの時間を短くできる。

船の行き先を変えることで電気の行き先を変えることができるのも大きな利点。日本だけでなくグローバルに行き来でき、船自体が電池なので、放電や売電は船が陸に着いたタイミングで選ぶことができる。

災害時に強いのも船ならではの大きな強みで、沖にある船舶なら地震、津波の影響を受けにくく、日本の近海で常時、電気運搬船が動いていれば、有事の際に災害地に駆け付け、電源のサポートも行うこともできる。

再生エネルギーの必要性が高まるのが2020年代後半と見込まれるため、同社では2025年に1号船を完成させる予定でプロジェクトを進めている。

日本国内に大型電池自社工場「Power MAX」を建設

「電気運搬船には大型蓄電池を大量に低コストで積載する必要があり、同時にこれからの脱炭素社会、自然エネルギーの普及にも同じく大型蓄電池と、そのサプライチェーンをしっかりと構築する必要がある。

そこで当社は、大型電池組立工場『Power MAX』を日本国内で来年から建設を開始する。本生産を開始する2024年までに1GWh、その後毎年1GWh増やしていき、最終的には2028年までに毎年5GWhと電池の生産量を拡張していく。

船舶用電池、電気自動車急速充電器用電池、グリッド電池などの大型蓄電池の製造、販売することで、日本の再生エネルギーのサプライチェーンを支えたいと思っている」(伊藤氏)

大型蓄電池の中でも注目したいのは、生活に身近な存在の電気自動車 (EV)急速充電器用電池。EV車が増加していく中で課題となるのが充電場所だが、政府は2030年までに3万基の急速充電器設置箇所を目標に進めているが、現在は7800基ほどしかないのが現状。

「整備していく過程で、どこに充電器があるかということが消費者にとっての利便性を大きく左右する。高圧受電の工事や保守が必要な設備は据え付けになるが、当社の急速充電器用電池の最大のメリットは設置工事が不要で移動ができるということ。最大300KW出力でき、通常は200Vの電源に電池を接続しゆっくり充電されているが、車とつなげると超高圧で急速充電ができる」(伊藤氏)

日常生活で良く訪れる、飲食店、スーパー、コンビニ、ドラッグストアの駐車場に設置すれば、買い物をしている10分間の間に充電することができる。国内、欧米のメーカーを含め、急速充電に対応する車は増えてきており、同社がEV急速充電器用電池を展開予定の2025年には、新車はほぼすべてが急速充電対応になると見られている。

同社のEV急速充電器用電池はIoTでつながり、すべての電池の場所、使用状況をネットワークで把握することで、需要がある場所へ移動できる充電ネットワークが構築できる。例えば、帰省シーズンで込み合うPAに集中的に置いて対応することも可能になる。

【AJの読み】元ZOZOの伊藤氏らが立ち上げた新しい発想のエネルギー事業

会見に臨んだPowerXの伊藤社長を見て驚いた。今年3月に紹介した「ZOZOGLASS」の際にも登壇していた、ZOZOの取締役兼COOの伊藤氏だったからだ。伊藤氏は「ZOZOSUIT」「ZOZOGLASS」などファッションテックの新規事業を手掛けた人物として知られているが、今年6月に退任し、新会社PowerXを立ち上げた。

「私はリノベーション、テクノロジーといった新しいことに挑戦するのが大好き。人生において、テクノロジーを使ってエネルギーや環境問題に貢献したいという強い気持ちがあった」(伊藤氏)

共同創設者は、医師でバイオベンチャー「ヘリオス」代表の鍵本忠尚氏。PowerXの取締役会長を務める。

「医師の視点からもこの事業に大きな使命感を持っている。人間らしい生活を送るために電気は不可欠だが、医療現場ではより切実に感じる。震災、津波、台風など災害時に大規模な大停電が発生し、入院中の患者にとっては生死を分ける問題となる。東日本大震災の際、蓄電池や電気運搬船が存在していたらどれだけの命を救うことができたかと思わずにはいられない。災害対応性はPowerXが創る未来の一つだと考えている」(鍵本氏)

社外取締役には、テスラモーターズ出身で、自動車産業のバッテリーメーカー「Northvolt」COOを務めるパオロ・セルッティ氏、Googleのシーザー・セングプタ氏、ゴールドマン・サックス証券出身で、環境系NGO「ザ・ネイチャー・コンサーバンシー」CEOのマーク・ターセク氏が名を連ねる。

つい先日の大雨もそうだが、毎年のように“未曾有の災害”が起こっている状況で、脱炭素は全世界の共通の目標でもある。地球環境に直結するエネルギーの分野で、ベンチャー企業ならではの、新たな視点からの取り組みには注目していきたい。

文/阿部純子

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