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倉庫会社でのアルバイト経験で感じたフリーランスが陥りやすい罠

2021.08.19

■連載/あるあるビジネス処方箋

ここ2回、2か月間(6~7月)のアルバイトをした経験を書いた。「倉庫会社でアルバイトをして見えてきた「パワハラ」を生み出す構造」「倉庫会社でのアルバイト経験を通じて伝えたい「フリーランス」という生き方の真実」。

今回は、フリーランスが陥りやすい罠を取り上げたい。「倉庫会社でのアルバイト経験を通じて伝えたい「フリーランス」という生き方の真実」で書いたように、原稿料の未払いといった問題にぶつかった。その額は、150万円前後。

ルーズな編集者は新卒時の入社の難易度で言えば、業界平均レベルとそれよりも低いゾーンの出版社に集中している。出版界は、その難易度はA級(上位3社)、B級(4位~20位ほど)、C級(20位~)と3つにわけられるが、未払いをするのはB級とC級が圧倒的に多い。B級とC級の出版社のうち、出世コースから外れた人が多い。例えば、副編集長(課長)が10年以上となり、編集長(部長)になれないタイプだ。

フリーライターに限らず、フリーのデザイナーやアートディレクター、カメラマンなどがこのタイプと大きな仕事(数十万円以上の報酬)をするのは避けたほうがいい。未払いだけでなく、様々な問題やトラブルを起こす傾向がある。フリーランスは小資本であり、大きなトラブルに巻き込まれると致命傷を負う。

仕事の取引をする優先順位は、下記の通りになる。

①A級(上位3社)の出世コースにいる人
②A級(上位3社)の非出世コースにいる人
③B級(4位~20位ほど)の出世コースにいる人
④B級(4位~20位ほど)の非出世コースにいる人
⑤C級(20位~)の出世コースにいる人
⑥C級(20位~)の非出世コースにいる人

得てして出世コースの人は、処理能力が高い。時間内で正確に仕事を処理できる。1つずつの仕事に安定感があり、人事評価が高くなる。仕事をするならば、A級の会社の出世コースにいる人との関係を最優先していきたい。処理能力が高いので、メールや電話のやりとりはスムーズになり、スピードが増す。A級ならば、非出世コースでもいいだろう。

理想を言えば①と②だけにしておくべきだが、大多数のフリーランスはそれでは生活が成り立たない。そこで③以下とも取引をするが、④以下、時に⑤と⑥は避けたほうがいい。処理能力に深刻な課題や問題を抱え込んでいる編集者が圧倒的に多い。電話やメールのスムーズなやり取りが難しく、なかなか進まない。本連載「仕事のメールの返信ができない人に共通する特徴」で書いた通りだ。

フリーランスの半数は、数年以内に廃業する。その後も慢性的に、年収150~400万円の生活が続く。この15年で廃業した人にじかに聞くと、④、⑤、⑥の編集者と仕事をしたことが、生活ができなくなった大きな理由やきっかけになっているケースが多い。未払いの被害を受けたり、仕事力が相当に低いのだという。それにも関わらず、④、⑤、⑥の編集者と仕事をする。

それはなぜか…。①、②、③のゾーンの編集者とだけの仕事では収入が少ないのだろう。だが、①、②、③のゾーンだけで仕事をする人はフリーランス全体の数パーセント以下のはず。出版業界以外にも、同じことが言えるはずだ。

数パーセント以下の人たちは、その仕事とは別に本業をもっていることが多い。数パーセント以下に入っている仕事を「副業的な位置づけ」としている可能性が高い。この本業と副業的な位置づけがうまくいき、結果として①、②、③のゾーンだけで仕事をすることができているのだろう。

フリーランスがその職業や仕事だけで生きていく時代は、2010年前後で終わっているようにも思う。それよりも前のリーマン・ショックの頃から、フリーランスと名乗る人の中にいくつもの職業や仕事を兼務する人が目立つ。例えば、私の周囲にセラピストと名乗りながら、フリーデザイナーと塾の講師、通訳をする女性がいる。

この動きを加速させたのがFacebookやTwitterだろう。バーチャルな空間を作り、本当にその職業で生きているような錯覚を与えることが可能になった。実は、2010年前後は前述の女性はセラピストの収入はほとんどない。10年経った今、彼女は数パーセント以下ではないかもしれないが、売れっ子のセラピストになっている。バーチャルがリアルになったのだ。

メディアや識者の多くはこういう構造を語ることなく、まぶしいくらいに輝くフリーランス像を伝える。これでは、時代感覚がずれている。バーチャルがリアルになることのすごみや怖さ、胡散臭さは本来、社会として観察しておくべきだろう。例えば、社会的な弱者をネット上で茶化したり、けなしたりする人の中には炎上商売的なことを考えている人もいるように思う。ネット上で知名度を上げて、自らをリアルに変換し、前述の数パーセント以下の人になることを願っているのかもしれない。墓穴を掘るケースも目立つ。

私は、成功者として演出する力のない人たちの影の部分も赤裸々に伝えていきたい。それが、フリーランスを語る情報提供者としての責任だと思う。

文/吉田典史

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