グリップレスの六角軸とリアルなペン先。徹底した引き算と一点集中の質感再現で作り手の愛を形に
【そのココロは?】原点こそが一番の強み。そこに立ち返るために余計なものは削ぎ落とし、機能性を磨き上げ、唯一無二のレベルにまで高める。
コクヨステーショナリー 増井あづみさん
2007年入社。文具開発部で筆記具の開発を担当。『鉛筆シャープtypeS・M』シリーズやカッターナイフなどを担当。
コクヨステーショナリー 飯田康平さん
2015年入社。商品戦略部で筆記具の企画を担当。カラーマーカー『マークタス』シリーズなどの企画を立ち上げた。
コクヨ『鉛筆シャープ』
各180円
まるで鉛筆のようなシンプルなデザインと書き味のシャープペン。六角軸と削ったような質感のペン先のデザインはもちろん、0.3mmから1.3mmまで芯をラインナップし、鉛筆の多用な筆記線を表現。赤鉛筆ライクに使える赤芯もある。
シンプルな作りだからこそディテールがものをいう
鉛筆のような書き心地とシャープペンの便利さを備えた、コクヨの『鉛筆シャープ』。シリーズ累計出荷数940万本の人気文具だが、昨年11月に新モデルを投入したことで人気はさらに加速した。
「初代モデルの発売から10年目を迎え、どんなところがお客様にウケたかを一度振り返ることにしました。すると、鉛筆のような書き味や軽さなど、鉛筆に似通っている部分が評価されていることがわかったんです。ならば今回は原点に立ち返り、鉛筆らしさを突き詰めようということになりました」(増井あづみさん)
こだわったのは引き算のデザイン。軸を六角形に戻し、シリーズを重ねる中で追加したラバーグリップや消しゴムをなくした。さらに細かい部分に手を加え、〝鉛筆といえばコレ〟という細長いフォルムへ回帰。
「ビジュアルの作り込みにもこだわりました。一般的な鉛筆の軸はツヤツヤですが、ペン先は木のザラザラした感じですよね。それを縦方向に細かい線を引くヘアライン仕上げで成形し、質感と触った感じの印象を再現しました」(同・増井さん)
さらに用途に応じて商品を選べるよう芯径を5種に広げ、初代モデル以来10年振りに〝赤芯〟を新投入。
「赤芯は昔から根強い人気があり、10年の節目に新型を発売しました。当時の赤芯を知らないお客様にも好調で、実は一番先に初期ロットが完売したのは赤芯なんです。うれしいことにセットで買いたいというお客様が増えました」(飯田康平さん)
ここまで作り込んだのに価格は180円。こだわり抜いたからこそ、たくさんの人に使って欲しいという作り手の愛が価格にも表われている。
なぜ売れた? どうやって売れた?ヒットのひみつ
【01】〝ゼロ寸〟〝ヘアライン〟で作り込む
軸とペン先を同じ寸法で仕上げ、なめらかにつながるように工夫。鉛筆に近づけるべく、ヘアライン仕上げで鉛筆を削った時のザラッとした感じを表現した。
【02】コロナ禍で生まれたニーズにアプローチ
自宅時間が増え、日常の記録やレシピのメモなど手書きをする人が増加。手で書く感じをより楽しみたいというニーズから異なる芯径の複数買いが目立った。
【03】手を伸ばしたくなる細幅パッケージ
■ 文字でなく絵で芯径を訴求
スリムなパッケージで密集した陳列を作り、店頭で存在感を発揮。芯が出た状態の写真を使うことで、ひと目で太さの違いがわかるように工夫でした。
〈Editor’s View〉文房具ブームなどで筆記感にこだわる人が増えた。ディテールで魅せる『鉛筆シャープ』の機能美は、一般ユーザーだけでなく、文具ファンの心をも掴んだ。(担当編集ワタナベ)
取材・文/金山 靖
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