
会社を退職したいと考えたとき必要になるのが『退職願』です。できる限りスムーズに退職するために、気を付けなければならないポイントを押さえておきましょう。『退職届』との違いから正しい書き方・封入のマナーまで解説します。
「退職願」と「退職届」はどう違う?
「退職したい」という意思を、勤務先に伝えるために必要になるのが『退職願』や『退職届』です。言葉が似ているため混同されがちですが、実は果たす役割が違います。
それぞれがどのような場面で使われるのかを理解しておくと、正しい使い分けに役立つでしょう。
退職したい意思を伝える「退職願」
『退職願』は「退職したい」と言う自分の気持ちを、勤務先に伝えるためのものです。
この書類を提出した段階では契約の解除は確定しておらず、勤務先に対して退職の可否を問いかけている状態になります。
退職願は必ずしも必要ではなく、辞めたいという旨を口頭で伝えても構いません。しかし、書面にすることで退職の意思がより強く伝わります。
提出先は直属の上司であることが多く、会社に承認される前であれば撤回も可能です。退職の意思を固めたらできるだけ早く提出し、十分に職場と協議できる時間を取りましょう。
一緒に仕事をしてきた仕事仲間や取引先にも十分に配慮する心掛けが、円満に退社するカギです。
辞めると確定した後に出す「退職届」
『退職届』は勤務先に対して、「退職します」と伝えるための書類です。退職願と違いすでに労働契約の解除が確定している段階で出します。
自分と会社との間で退職の合意が取れてから提出するのが一般的です。受理されれば撤回はできません。最終的な通告という扱いになり、無期雇用なら出してから2週間後には労働契約が終了します。
民法では退職の自由が認められており、退職予定日の2週間前までに退職届を出せば辞めることは可能です。しかし、法的に可能でも急な退職はトラブルを招きます。
就業規則で1カ月前までに申し出なければならない企業も多くあります。円満退職を望むならまずは退職願を提出し、調整をしてから就業規則にのっとって退職届を提出しましょう。
退職願の正しい書き方をチェック

(出典) photo-ac.com
退職願はこれまでお世話になってきた会社に提出する重要な書類です。会社に指定のフォーマットがある場合は、フォーマットに沿って作成しましょう。
自分で1から作成するときは紹介する基本の構成に従い、退職理由や日付を書き入れます。
基本となる構成
退職願は黒インクのペンで白い紙に書くのが一般的です。書式は縦書きを基本として1行目に『退職願』と書きます。続いて2行目の下に『私事』や『私儀』と記入して改行しましょう。
次に退職したい旨を伝える文章を続けます。「このたび(退職理由)により、(退職希望日)をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」とするのが一般的です。
『退職理由』は自己都合退職の場合、『一身上の都合』とだけ書けば問題ありません。文章をお願いの文句で締めくくったら、次の行に届出年月日を書き入れます。
改行後は下ぞろえにして自分の部署と氏名を記入し、押印しましょう。最後に宛先である会社の代表取締役の肩書と氏名を書きます。
横書きの場合は『届出年月日』『宛先』『部署と氏名』を先に書いてから文章を続け、最後に『以上』で締めるのが基本です。
「退職理由」の考え方
会社都合による退職でなければ、転職や引っ越し・結婚出産など全て『一身上の都合』で構いません。引き留めがあると詳しい理由を聞かれるかもしれませんが、必ずしも言う義務はないのです。
ただし円満退職のためには、具体的な理由を率直に伝えた方がよい場合もあります。退職願に書かなくても、上司に相談するとき必要に応じて伝えるとよいでしょう。
倒産や部署の統合など会社側の都合で退職する場合には、退職届に具体的な理由を書く必要があります。『貴社、業績不振による倒産(事業部門縮小)に伴い』など、状況に合わせて記入しましょう。
具体的な理由を書かず自己都合で処理されると、失業保険の受給期間にも響く可能性があります。
「退職希望日」「届出年月日」の決め方
『退職希望日』とは自分が辞めたいと考えている日です。就業規則を確認の上、余裕を持たせて設定しましょう。退職希望日までの日数が定められた期間より短いと、承認されない可能性が高まります。
また特別な事情がない限り、退職希望日は月末に設定するのが基本です。月ごとの集計や決算を待ってから退職すると、会社の業務負担を減らせます。
『届出年月日』は退職願を出す当日の日付です。就業規則で決められた期間に間に合うように出す日を決め、日付の間違いに気を付けて記入しましょう。
退職願を封筒に入れるときのルール

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退職願を書いたら封筒に入れて提出します。封筒の選び方や表面・裏面の書き方を覚えておきましょう。封入するときの折り方も詳しく解説します。
白封筒の表面と裏面に必要事項を書く
ビジネスで使用する封筒は白か茶色を選ぶのが一般的です。普段から違いを意識する人は少ないかもしれませんが、安価な茶色封筒は社内用・白封筒は改まったシーンと使い分けられます。
退職願は労働契約の解除を願い出るフォーマルな書類のため、白無地の封筒を使いましょう。郵便番号の枠がなく2重になっているものが適切です。
封筒の表面には真ん中に『退職願』と記載します。中身と同じく黒インクのペンを使用しましょう。裏面には行頭をずらして自分の所属部署や名前を書きます。
字をきれいに書くのが苦手な人でも、できるだけ丁寧に書けば誠実さが伝わるでしょう。
三つ折りにして封筒へ入れる
退職願は三つ折りで封筒に入れて提出します。書類を上下逆にならないよう置き、まずは記入した面が内側になるように下から1/3を折り上げましょう。
上から1/3をかぶせるように重ねれば三つ折りは完了です。封筒を裏返したら入り口が右に来るように持ち、三つ折りにした書類を入れていきます。
退職願は手渡しすることが多いでしょう。何らかの事情で郵送しなければならないケース以外は、封をする必要はありません。封をする場合は閉じた後、封入口に『〆』と書いておきましょう。
封筒を選ぶときは用紙のサイズを考えるのがポイントです。A4サイズでは長形3号・B5またはA5サイズでは長形4号を選ぶと、三つ折りにしたときぴったり収まります。
退職願の気になる疑問

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退職願を出すに当たって基本は分かっても、細かい疑問が気になる人も多いでしょう。代表的な疑問について解説します。
特に提出のタイミングや伝え方は円満退社に大きく関わる要素です。
手書き?パソコン?
現代のビジネスマナーとして、退職願は手書きでもパソコンでも問題ないとされています。内容さえ正しく書いてあればマナー違反にはなりません。
一昔前なら退職願のようにフォーマルな書類は、手書きで書くのが基本とされていきました。『手書き=誠実さ』という価値観があったためです。
しかし、現在はほとんどの書類がパソコンで作られるようになり、以前の手書き文化は廃れつつあります。上司によっては書く人のくせが出る手書きより、パソコンの方が読みやすい人もいるでしょう。
ただ部署の後に書く氏名は手書きにして、署名の役割を持たせるのがおすすめです。パソコンでの記名+押印でも本人確認はできますが、手書きの署名があると信頼性が増します。
出すタイミングはいつ?
退職願を出すタイミングは、就業規則の他に業務や渡す相手の状況も考えて決めましょう。繁忙期やプロジェクトの途中であれば、実際の退職はもちろん書類を出すのも避けた方が無難です。
できるだけ会社や所属しているチームの負担が少ないタイミングを選べば、スムーズに退職できる可能性が高まります。渡す上司のスケジュールもチェックしておくと安心です。
また、退職はプライベートな行動になるため、空いた会議室など他の社員がいない場所で手渡します。詳しい退職理由を伝えるときも、人目がない方が誠実に伝えやすいでしょう。
上司への伝え方は?
退職に関する話題は無用なうわさ話にならないよう、まず直属の上司に伝えるのが基本です。同僚に話した結果、上司に言う前に広まってしまう場合もあります。
上司に退職の希望を初めて話すときは「辞めます」と断定するのではなく、相談という形で様子を伺ってみましょう。できるだけポジティブな理由を述べると、話がスムーズに進みます。
現在の仕事や職場への不満・批判の気持ちが強くても、険悪な雰囲気を作ると気持ちよく退職できません。不満を「プライベートを充実させたい」など前向きに言い換えるのがおすすめです。
転職先が決まっている場合は、これから新しい環境で取り組みたいことを伝えると退職に納得してもらいやすくなります。よく考えた結果であること・受けたサポートへの感謝も伝えて円満に退社しましょう。
構成/編集部