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月や火星に行くSpaceXの宇宙船「Starship」の開発状況は?

2021.08.14

SpaceXは、世界No.1の宇宙企業であると言っても誰も否定はしないだろう。Falcon9ロケットの打ち上げ実績は当然のこと、DragonやCrewDragonの国際宇宙ステーションへの輸送船、Starlink計画で地球低軌道に数万機という膨大な数の衛星を打ち上げ、グローバルブロードバンド環境を構築しようとしている。イーロン・マスクが主導するSpaceXは、従来のOld Spaceの発想をことごとく覆し、予想もできない数多くの実績を積み上げている。

そして、今回はStarshipにフォーカスしたい。Starshipについての個別事象の報道はあるが、意外とまとまった俯瞰できる報道がない。ここでは、ここまでのSpaceXのStarshipの開発状況についておさらいし、次の準備に取り掛かっているSuper Heavy、そして将来の月や火星旅行などについても触れたいと思う。

https://www.flickr.com/photos/spacex/51006496043/

宇宙船Starshipってなに?

知っている人も多いと思うが、念の為SpaceXについて簡単に紹介しておこう。SpaceXは、イーロン・マスク氏がCEOである世界を代表する宇宙企業。冒頭で紹介したとおり、Falcon9、Falcon Heavyのロケットロンチビジネス、Starlink計画という大規模衛星コンステレーションによるグローバルブロードバンドビジネス、国際宇宙ステーションISSへの物資補給船Dragon、有人宇宙船CrewDragonなどのサービスなどを手掛けているすごい企業だ。

では、早速、Starshipの話題に入っていこう。Starshipとは、完全再利用可能な輸送機、宇宙船だ。宇宙空間への衛星の軌道投入も可能だが、多くの読者の注目を集めているのは、月や火星への物資や人の宇宙船としての機能だろう。

高さ9m、直径9mの輸送機。エンジンはSpaceXが開発するラプターエンジン。液体酸素、液体メタンを燃料とする。あまり類のない形状でとてもスタイリッシュなデザイン。100名の乗客と大量の物資を搭載できるという。ちなみにトリビアだが、Starshipの上部にストライプが入っているのがわかるだろうか。このストライプが入っているStarshipは、有人用となる。このStarshipの上部には、展望エリア、プライベートキャビン、共用スペース、貨物置き場などがあり、さらには、被爆しないよう太陽風避難エリアというものまであるというのだ。

月面都市とStarshipのイメージ
(出典: Tesmanian)

これまでのStarshipの開発状況をおさらいしよう!

繰り返しになるがStarshipは、衛星の軌道投入や、月や火星への旅行ができる宇宙船だ。現在までにSN15までの試験が実施されている。では、どのような開発を経てきたのだろうか。

まず、Starshipの試験が始まる前に、Starhopperという試験機で試験を実施している。Starhopperは、その名の通り、浮上と着陸の技術を検証する目的がある。2019年4月3日、まずStatic Fire test (静的燃焼試験)と呼ばれる打ち上げない形で地上でエンジンから噴射する試験を実施。無事に終えている。そして、2019年7月25日に、約高度18mまで浮上することに成功。2019年8月27日には、高度150mまで上昇し、ホバリングにも成功。その後、着陸試験にも成功している。

そして初期フェーズのプロトタイプMK1。2019年11月20日、燃料タンクの加圧テスト中に破損。Mk2の製造を中止し、Mk3をSN1と改名し設計改良、製造を実施した。

そして、2020年2月28日、SN1は燃料タンクの加圧テストに挑むが、破損が確認された。

SN2、SN3と立て続けに同一のテストに失敗していたが、2020年4月26日、SN4で初となる加圧テストに成功する。

SN4では高度150mの試験飛行も行われる予定だったが、2020年5月29日にラプターエンジンの燃焼試験中に爆発してしまう。

2020年8月4日、SN5によって高度150mの飛行試験に成功。SN6も同様の飛行試験をした。SN7では、タンク壁の厚みが異なるSN7.1と7.2が製造され、燃料タンクの極低温試験のみに従事。

2021年2月10日にはノーズコーンと翼を搭載した完全な姿のSN8が、高度12.5kmの初のHigh Attitude Flight Test(高高度飛行試験)を行い、打ち上げから再突入までの試験に成功。しかしに燃料タンクの減圧が理由で着陸に失敗。SN9も同様だった。

SN8の高高度飛行試験し、着陸時の爆発の瞬間
(出典:Tesmanian

2021年3月4日、SN10は、高高度飛行試験から着陸にも成功したが、着陸後8分で爆発。実は、着陸時の速度が想定よりも速く、着陸時の衝撃が大きかったため、燃料のメタンが漏れてしまい爆発へと繋がってしまったようだ。

2021年3月30日、霧の中で4回目の高高度飛行試験機がSN11で行われた。SN11は、配管系のトラブルでエンジンに異常が発生。最終的には機体が空中分解・爆発を起こしてしまった。

このため、SN12、13、14の製造をキャンセル。

そして、機体、エンジン、姿勢制御系などを改良したSN15を製造。SN15は2021年5月6日に飛行し、初めて軟着陸に成功した。

Starship SN15の高高度飛行試験の動画はこちら

ちなみに、SN16は展示用に、SN17は廃棄され、SN18、19は生産を取りやめ、となっているという。

次は、Super Heavyの試験が始まる!

Super Heavyは、Starshipのブースター。一般的なロケットの第1段ブースターに相当する部分と理解していただけたらいいだろう。全長70m、直径9mで、ラプターエンジンを搭載しているため、燃料は、液体酸素、液体メタンである。Super Heavyには、29個のラプターエンジンが搭載されており、推力は、宇宙飛行士を月に打ち上げたサターンVロケットの約2倍になるという。このSuper Heavyの下部には、6本の足が搭載されていて、Falcon9などの打ち上げで見られる垂直着陸帰還システムを具備している。

Super Heavyの組み立て、試験はまだ始まったばかりだ。時系列を追っていこう。ちなみに、Super Heavyの試験は、Starshipと異なりBNやブースターという表記を使い、それに番号を割り振って試験を管理している。

まず、BN1(ブースター1)。BN1は2021年3月に完成。製造、組み立ての確認、そしてロンチパッドまでの輸送の確認を目的としていた。現在は、目的を達成したためスクラップ、廃棄されている。

ブースター2。ブースター2は、BN2とBN2.1に分けて試験を実施。BN2.1は、実際のSuper Heavyに比較すると大分縮小された小型のタンク。このタンクで様々な情報を収集したい意図があったという。2021年6月、このタンクに液体窒素を入れた低温化での加圧試験、溶接部分の長時間耐久試験が実施されたという。ちなみに、BN2は、ブースタ−3の一部に活用されるという。

ブースター3。2021年7月19日、ブースター3のStatic Fire Test(静的燃焼試験)を実施。この試験後のブースター3を製造現場へと移動させ、StarshipのSN15、16を搭載して今後飛行試験を実施するのではという報道もあるようだ。

Static Fire Test(静的燃焼試験)前のブースター3
(出典:Tesmanian

そして、現在、ブースター4に取り掛かり、実際にStarshipを搭載させて、初となる打ち上げ試験を行う準備中だ。試験は、今年2021年の終わりに実施される予定とあるが、2021年8月8日時点で以下の様な準備が整っている様だ。StarshipはSN20を搭載して、初の飛行試験に臨む。

StarshipとSuper Heavyの打ち上げ準備の様子
(出典:SpaceX)

月や火星へは、どうやっていくの?

実際に、地球の周回軌道や月、火星へと地球から打ち上げる際には、このSuper HeavyにStarshipを搭載して打ち上げる。下のイメージ図をご覧いただきたい。ちょうど地球から打ち上げられ、ある高度でStarshipがSuper Heavyから分離される瞬間のイメージだ。このように、分離された後のStarshipは、月や火星へと向かい、これまで試験したように、着陸したり、浮上したりするのだ。また、実際に、アルテミス計画の月面輸送機(ランダー)としてもNASAから選定されているのだ。

StarshipのSuperHeavyからの分離イメージ
(出典:Tesmanian)

また、こんな構想もある。それは、世界どこでも1時間以内で移動できる弾丸海外旅行だ。Super HeavyにStarshipを搭載して地球から打ち上げるところまでは一緒だが、ある高度でStarshipを分離し、宇宙空間へ一度出て、地球上の目的地に向けて、宇宙から大気圏を突入して着陸するというものだ。

Starshipによる弾丸海外旅行
(出典:Tesmanian)

SpaceXからEarth to EarthというタイトルでYoutubeで動画が配信されているのでぜひご覧いただきたい。将来、読者の多くが月や火星へと旅することになるだろう。具体的なイメージができただろうか。

Starshipによる弾丸海外旅行の動画はこちら

いかがだっただろうか。SpaceXのStarshipのこれまでの試験について俯瞰いただけたと思う。また、実際にStarshipがどのように活用されるのか、Super Heavyを知っていただくことでご理解いただけたのではないかと考えている。ちなみに読者のみなさんはどのように感じただろうか。このスピード感で人類が誰もやったことのない開発、試験を実施しているSpaceXの凄さに改めて驚く。今後もSpaceXのStarshipの取り組みについて紹介したいと考えている。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。

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