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役職定年した後もミドルやシニアが生き生きと働くことができる職場の特徴

2021.08.09

ポストオフ後の備えは「上下関係によらないフラットな関係づくり」

日本の企業にとって、ミドル・シニア層の活躍は今後ますます重要となる。一個人にとっても、人生100 年時代といわれる今日、仕事人生の後半で“やる気”と“居場所”を生み出す仕事術は関心の高い話題だ。

そこでリクルートマネジメントソリューションズ、ポストオフ後の適応(ポストオフ・トランジション)のポイントを探り、ミドル・シニア層が活躍する組織・マネジメントのあり方を考えることを目的に調査を実施した。

なお調査では、一律の年齢や期間で組織長などの役職を外れる経験を「ポストオフ」と呼ぶことにした。

ポストオフ前と比較したときの現在の仕事の変化について、「賃金が減った」が82.8%、「周囲からの期待が下がった」が56.1%だった。

他方、「自分で判断し、主体的に進める度合い」や「顧客満足や組織業績の向上への影響力」は変わらないとする人がそれぞれ50.4%、54.2%と半数以上だった。

自由記述回答で、ポストオフによって失ったものと得たものを尋ねたところ、「給与」や「期待」、「情報」が失われ、「時間」や「自由」、「余裕」を得たという趣旨の回答が散見された。

図表1 ポストオフ後の変化(%)

図表2 ポストオフで失ったもの、得たもの

ポストオフ前後では、仕事をしていく上で重要と考えるものの優先順位が変化する人が多くいる(図表3)

ポストオフ前と比較して、ポストオフ後に選択率が大幅に高まる労働価値観は、「自分が楽しめる、面白いと思える」だった。

⇒ポストオフ後は、これまではさほど重視してこなかった自分の素直な感情に意識を向け、自分の感情と仕事を調和させていくという新しいキャリア局面が現れることが示唆される。

図表3 ポストオフ前後の労働価値観(%) ※順位欄の濃い網掛けは選択率 1 位~5 位の項目

ポストオフ後に「やる気が下がったまま」になってしまっている人が4 割(図表4)

部長・課長のポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移を見ると、意欲・やる気が「変わらない」人が3割弱いる一方で、「一度下がった」人は6割近くにのぼり、その内訳として「下がったまま」は4割前後、「一度下がって上がった」は2割前後にとどまった。

図表4 ポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移(%)

ポストオフ後の適応が良好な人たちに特徴的なポストオフ前の準備は、「新しい知識・スキルや専門性を身に着ける」「権威を振りかざさない」「社内の人脈を広げる」(図表5)

⇒管理職業務以外の現場業務を遂行するための知識更新、役職者という立場を持ち出さないフラットな協働関係性の構築が、ポストオフ後の適応に役立つと考えられる。

図表5 ポストオフ時の好適応群/普通・適応苦労群のポイント差が大きい、ポストオフ前の 準備・行動(%)

「上司からの尊重と高い期待」「年齢によらない風土や能力開発投資」がポストオフ後の適応感を高める(図表6)

現在の仕事への適応感(成果実感・居場所感・やる気・成長感など)を高める要因を、複数要因からの影響を比較検討できる分析方法である重回帰分析を用いて探った。

環境要因においては、上司マネジメント、インクルーシブな風土(誰の発言も真摯に受け止められ、独自の才能が生かされ、年齢によらず良い仕事が評価される)がポストオフ後の適応を促していた。

個人要因においては、強みや関心を生かしたり同僚と共感し助け合ったりといった本人行動が、ポストオフ後に成果をあげ、居場所を作り、活力を生み出すことにつながっていた。

図表6 適応感に影響する環境要因・本人要因(重回帰分析)

マネジメントのポイントは、「尊重と高い期待」を本人に伝えること、「率直なフィードバック」をし、活躍のための試行錯誤に「伴走」すること、「放置」しないことの3つ(図表7・図表8)

調査で用いたマネジメント行動のリストを「尊重と高い期待」「伴走」「放置」の3種類にまとめて図表7に示した。ポストオフ者の受けているマネジメントには3タイプあることが見いだされた。

上司のマネジメントスタイルと、「適応感」およびキャリアの見通しが立たないといった「キャリア停滞感」との関係をみると、「適応感」は、「放任型」と「伴走型」の上司のもとでいずれも高く、「放置型」上司で低かった。「キャリア停滞感」は、「伴走型」の上司のもとで低かった。

図表7 ポストオフ者に対する上司のマネジメント行動

図表8 上司のマネジメントスタイルと適応感およびキャリア停滞感との関係

調査担当研究員のコメント

役職定年やそれに準ずる制度運用によって役職から降りる「ポストオフ」の経験に、ショックや落胆を感じる人は少なくありませんが、反対に、活力を失わない人もいます。

世代や年代で一律にイメージを決めつけることなく、個々人の違いや、環境変化の影響に意識を向けることが重要と言えそうです。人生100年時代、ポストオフ後に働く期間も長くなりそうですが、調査結果を踏まえると、活力や歓びをもって働くためには次のようなことに意識を向けるのがよさそうです。

まず、ポストオフ後は、役職時代よりも「曖昧な期待」のなかを生きることを、本人も周囲も自覚する必要があります。役職時代はプレッシャーも大きい反面、期待や価値基準が比較的明確です。

しかし、ポストオフ後は、自分の強みや関心を生かし、自ら楽しみや意義を見出せる仕事内容や環境を、自ら引き寄せなければなりません。本人が自分の希望を具体的に周囲に伝えること、周囲も期待や要望を遠慮せずに伝えること、その上で業務デザインを相談しあうことなどが有効でしょう。

それがとても難しいと感じる職場ならば、風土改革や制度改革が必要でしょう。ポストオフ後も居場所があり成果を上げている方々は、若くても発言が尊重され実力が評価される風土や、年齢によらず能力開発機会を得られる環境の中で働いているようです。

また、個人として尊重し高い期待をかけながら、良い点も課題も率直にフィードバックし、活躍の道を見出す試行錯誤に伴走してくれる上司にも恵まれているようです。

「年齢によらず活躍できる文化を職場に作り、伴走してくれる上司」とは、ポストオフ者自身のかつての姿とも言えるはずです。現在、役職にある人は、年齢によらず活躍できる組織づくりを心掛け、ポストオフ人材が活躍の道を見出す試行錯誤に伴走することをお勧めします。そのような関わりはまさに他人のためならず、未来のご自身の活躍のフィールドを広げることにもなりそうです。

調査概要

構成/ino.

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