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山田洋次監督が映画と志村けんさんに贈る松竹100周年記念映画「キネマの神様」の見どころ

2021.08.05

■連載/Londonトレンド通信

 8月6日公開の山田洋次監督『キネマの神様』は、松竹の100周年記念作品となる。松竹映画が1920年の松竹キネマ合名社設立から1世紀なら、『男はつらいよ』公開が1969年の山田監督も、半世紀を超え第一線で活躍してきた。

 日本の大監督であり、世界にとっても大監督、2010年、第60回を迎えたベルリン国際映画祭のクロージングを飾ったのが山田監督作だった。

 クロージング作となったのは『おとうと』だった。市川崑監督による1960年の同名作にインスパイアされたもので、ベルリンでの会見は日本映画史の振り返りとなった。意外にも、小津安二郎監督ではなく、黒澤明監督のような世界を撮ろうと考えていた山田監督若き日の話なども出た。結果的に家族を描き続けた山田監督は、やはり家族をメインにした小津監督に、知らず知らずのうちに影響を受けていたかもしれないとも語った。

 意識的ではなかった部分含め、脈々と続く日本映画を受け継いできた山田監督が、日本の映画界を舞台にしたのが今回の『キネマの神様』だ。コロナ禍での主役交代、撮影延期など、数々の困難にもかかわらず、鉄板の山田洋次世界が打ち立てられている。

 酒好きとギャンブルの借金で家族を泣かせるゴウ(沢田研二)は、若かりし日(菅田将暉)、映画監督を目指していた。

 物語は、コロナ禍で映画界が苦境に陥る今と、映画の黄金時代を行き来する。過去の何気ないシーンが現在の伏線となり、「ああ、あの時の」、観客もゴウと同じ思い出に浸る。かと思えば、ちょっとしたことが思いがけない次の展開につながっていく。心地よく物語世界に身をゆだねられるのは、山田監督ならではだ。

 山田監督の若かりし日とも重なるのであろう当時への郷愁でいっぱいだが、昔を懐かしむばかりではない。前述の通り、現代とつながっていくことに加え、今をときめく俳優陣による当時は、恋もすれば、将来を思い煩いもする、今も昔も変わることのない生き生きとした若き日々だ。

 市井の人を描く山田監督の映画には、ダメな人はいても悪人はいない。原田マハの同名小説を原作に、山田監督が朝原雄三とともに書き足した今回の映画でも、それは同じだ。ダメな人と周囲との様々で物語は展開していく。ダメな人はチャーミングな人、愛すべき人でもあり、その人のために力を尽くす人々を描く人情もの、コメディーは、山田監督の鉄板だ。

 コメディーと言えば、ギャンブルにはまる現在のゴウには、1人でぶつぶつ言う1人コントのようなシーンがあり、オリジナルキャストだった志村けんさんを思わずにはいられない。

 コロナで志村さんが亡くなり、急遽、ゴウ役となった沢田が、短い準備期間にもかかわらず、しっかりコメディーしているのは見事だ。

 これまた山田監督の定番が、ダメな人が男性、支えるのがしっかり者の女性という構図だ。『おとうと』、寅さんシリーズでは、それぞれ、姉弟、兄妹で描かれたが、今回はダメ夫と恋女房だ。

 ゴウはじめ撮影所の面々が通う食堂の看板娘だった淑子(永野芽郁)が、しっかり者かは異論があるかもしれない。

 ゴウ自身もそう考えているように、将来の予測が立たないゴウより、堅実なテラシン(野田洋次郎、後年は小林稔侍)を選ぶべきという意見もありそうだ。だが、それはしっかりというより、ちゃっかりだろう。

 淑子は最初から好意を抱きあっていたゴウを選び、皆が案じた通り、苦労する。娘の歩(寺島しのぶ)さえ、そんな母親を不甲斐なく思っている。一般的な意味でのしっかり者ではないかもしれないが、どこまでもゴウを受け入れる優しさ、自分で覚悟を決めて選んだからには、それを貫く強さは、「強くなければ優しくなれない」なんてハードボイルドな言葉まで浮かぶ。 

 そんな淑子は一途な性格も含めほんとうに可愛いのだが、老婦人となった今も、変わらず可愛い。可愛いおばあちゃんというレベルではなく、永野が透けて見えるような、宮本信子の演技力だ。

 現実的な歩にはダメ親父でしかないゴウだが、そのまた下の世代、歩の息子勇太(前田旺志郎)は違う見方をする。パソコン仕事で何やらやっている映画オタクの勇太は、ゴウとタッグを組む。

 後半は涙だ。若き日の、あのゴウと淑子が、半世紀を経て、この老夫婦になったとはっきり感じさせるシーン、明らかに志村さんに捧げたと思われるシーン、そして、そうなると予想させるヒントをちりばめながら、やっぱりそうなるラストは、わかっていても胸がつまる。

 銀幕のスター(北川景子)の美しさに誘い込まれる古き良き映画から、ジュリーとシムラのコントまで、観客1人1人の胸の内にある思い出を、その時代含め、懐かしく思い起こさせる一方、RADWIMPS feats.菅田将暉のテーマ曲「うたかた歌」とともに、人の一生をしみじみと考えさせる。

8月6日全国ロードショー
配給 松竹
(c)2021「キネマの神様」製作委員会

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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