
■連載/コウチワタルのMONO ZAKKA探訪
ダンスパフォーマンスの一種に「ゼロ・グラヴィティ」と呼ばれるものがある。マイケルジャクソンが1988年の長編作品「ムーンウォーカー」の中で初めて行ったとされ、両足を地面に着けたまま直立させた体を斜めに倒すパフォーマンスのことである。登場から33年経過する現在においても新鮮な驚きをもたらすことからも分かるように、私たちは“ナナメ”というもの独特な存在感に魅了される動物なのだと思う。今回はそんなナナメの角度が独特の存在感を放つアイテムたちを紹介していこう。
引っ掛けたものが作品になるようなアーティスティックなハンガー『UNO HANGER』
名前に隠されている“UNO”という単語はイタリア語やスペイン語で“1”を意味する単語であり、世界的に有名なカードゲームの名前にも使われている。この『UNO HANGER』という製品における“
“UNO”の意味は“1つの素材”だけを使用していることに由来する。すなわち、このハンガーでは強靭な構造材である角ロッドと呼ばれる16㎜角のスチールを組み合わせて全体を形作っている。無駄なものが一切ないデザインは製品単独でも成立する美しさを持っているし、服を引っ掛けてもそれらをそのまま作品に見せてしまうような力がある。そのように見せる背景にはやはり“ナナメの角度”があると考えていて、これが直立するハンガーだったらこうはいかなかったであろう。
カラーラインナップはダークブラウンとシャンパンゴールドの2種類。価格は税込み26,400円で楽天市場から購入することができる。
文字盤すら不要とみなした時計『Pisa Standing Clock』
一見すると時計であることすら気づかれにくい姿をした『Pisa Standing Clock』。文字盤すら持たないその姿は、まるで文字盤が朽ちてしまい針だけが残ってしまった太古の遺産のように見えなくもない。正直、文字盤がないことで正確に時間を知ることには不向きと思われるが、この時計に惹かれる人間はそもそもそんなことは気にしないに違いない。長針が床から最も離れた際には高さが150㎝にもおよぶそのサイズは、“ナナメの角度”も相まってピサの斜塔と対峙した時と同じ圧倒的な存在感を感じることだろう。
カラーラインナップはウォールナット、ブラック、レッド、ゴールドの4種類。価格はウォールナットのみ税込み88,440円でその他は98,890円。国内で販売されているのは「Generate Design」のみとなっている。
子どもの玩具のような可愛らしさも感じる時計『Mini Puntero Table Clock』
先ほど紹介した『Pisa Standing Clock』はスペイン・バルセロナの時計ブランド「Nomon」による製品だったが、もう少しコンパクトで手ごろなものを求めている人には同ブランドから発売されているこちらの『Mini Puntero Table Clock』がお薦めだ。全高も26㎝の卓上サイズとなり、価格も3万円台に抑えられている。木と金属という2つの素材のみの組み合わせは私が好きなもののひとつだが、この時計においてもウォールナットとブラスのコンビが用いられており、無駄のない、それでいて単調とならない存在感のあるデザインとなっている。もちろんここでも“ナナメの角度”の存在感は活きていて、どこに置いても目を惹く独特の存在感を放つ点はコンパクトになっても失われていない。
カラーラインナップはブラス(ゴールド)、グラファイト(グレー)と見た目の印象が全く異なる2種類となっている。価格は税込み33,000円で国内で販売されているのは「Generate Design」のみとなっている。
シルバーリングが宙に浮遊する傘立て『umbrella stand F1.86』
スタンドにステッキが立てかけられてそこにシルバーのリングが取り付けられたこちらの傘立て。それだけでも危うい均衡を保っているような落ち着きを失わせる不思議な姿をしているが、もっと不思議なのは実際に傘を立てかけたとき。傘を入れていくと支柱となっていたステッキが見えなくなるため、まるでシルバーリングだけが自ら宙に浮いているような幻想的な光景が出現するのである。日本のデザイナー、倉俣史朗氏によって生まれたこちらの傘立て、現在はあのMoMAのパーマネントコレクションにも認定される名品となっているがその誕生は1986年とのことなので今から30年近くも前となる(製品名に含まれる数字は生まれた年から来ているのだろう)。昭和の時代にこんな先進的なデザインの傘立てが登場していたことにはただただ驚くばかりである。なお、1986年に生まれた際はスチール製だった本体は、2008年に復刻される際には耐久性の高いステンレス製に変更されている。
価格は税込み93,500円で取り扱いはイデーショップの実店舗のみでの販売となっており、残念ながらオンラインショップでの取り扱いはされていないとのこと。是非、実店舗を訪れて実物を目にしてもらいたい。
text/Wataru KOUCHI