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企業が保有するカーボンリサイクル関連の特許スコアランキング

2021.07.09

日本は研究投資が求められる最適素材の開発に期待

脱炭素の世界的動きの中で、CO2の排出量を削減することが大きな課題となっているが、日本が2050年までの実現を宣言しているカーボンニュートラル実現の鍵を握るテクノロジーのひとつがCO2を資源として有効活用する「カーボンリサイクル」だ。

アスタミューゼのレポートでは、二酸化炭素を積極的に資源として活用することで、カーボンニュートラルを超えてカーボンマイナスを実現することも期待される「カーボンリサイクル」に注目し、関連技術を分析した。

この分野には、二酸化炭素を分離回収する技術ならびに収集した二酸化炭素を製品原料やエネルギー源として利用する技術が含まれる。

カーボンリサイクル産業に関わる特許の分析

特許は、自社がその技術を独占的に実施する権利を守り、排他性を発揮することで意味が生じる。アスタミューゼは、出願件数それ自体ではなく、特許の「強さ」を指標化して、技術力評価するためのスコアリング手法を開発している。

特許の「強さ」とは、排他力、つまり競争相手を排除する力であると考えて、特許1件1件の強さを定量評価したものがインパクトスコアだ。

また、各々の特許のインパクトスコアに権利の残存期間などの要素を加味して、特許を所有する企業/大学・研究機関ごと、あるいは国別の技術資産を指標(トータルパテントアセット)で示すこともできる。

ただし、競争力が一定以上ある特許をもっていない企業/大学・研究機関については、トータルパテントアセットは算出できません。トータルパテントアセットは、特許ポートフォリオとしての総合的な競争力の指標と考えることができる。

今回の分析では、2010-2019年の10年間に出願された全世界のカーボンリサイクルに関する特許のインパクトスコアを算出した。対象期間中には38,453件の特許が、計29か国から出願されている。

表1に、各企業が所有する特許のパテントインパクトスコア(※1)の最高値であるパテントエッジスコア(※2)のランキングを示す。

1位を筆頭に米国が上位20位の内14件ランクインしており、本領域をリードする国となっている。1位、2位、3位はそれぞれCalera Corporation社(パテントエッジスコア136.19)、United States Department of Energy(同120.51)、Air Products and Chemicals(同120.07)の特許であり、いずれも発電所において排出されるCO2を含む産業廃ガスからCO2のみを高効率で回収する排出制御システムに関するものだった。これは二酸化炭素回収・貯留技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)にも利用される技術だ。(参考文献A、B)

石炭などを用いる火力発電所ではCO2に加え、SOxやNOx、ばいじんなど様々な物質が発生する。各国、環境面からそのまま排出することは規制しており、ガス成分などを排煙脱硝装置や排煙脱硫装置で除去する技術が進んでいる。

その処理後に残ったCO2を「効率的かつ、高純度で分離」させるような技術が上記特許の目指すポイントに。こうした技術は難しい挑戦ではある一方でCO2をプラスチック原料やバイオエネルギーとして資源化することにもつながるため、期待されている。高いパテントインパクトスコアは高い注目度を反映していると考えられる。

※1)パテントインパクトスコア:他社への排他権としてのインパクト評価を中心に、更に地理的な権利範囲、権利の時間的な残存期間などを重み付けしアスタミューゼが開発した定量的な評価指標。

※2)パテントエッジスコア:競合他社に対して大きな脅威となりうる突出した特許を示すパテントインパクトスコアの最高値。

表12010-2019年間のパテントエッジスコア上記企業20社

この、一つ一つの特許のスコアをもとに、カーボンリサイクルに関わる特許の出願人(個人含む)ごとのトータルパテントアセットを分析しました。表2にその上位20までのランキングを示す。

トータルパテントアセット(※3)が算出された機関は2,079。その首位のExxon Mobil Corporation(米国)はパテントエッジスコアランキングでも4位に位置する特許を保有していた。国別比較をすると、米国は7,8,15,19にも企業がランクインしており、計5社だった。一方で日本企業は2位の三菱重工業株式会社を含め、5,9,17位とあわせて計4社ランクインした。

1位のExxon Mobil Corporationは石油メジャーの最大手であり、特許に関しても石油に関連する技術が多く、例えば貯留層からの石油回収を改善する原油増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)におけるCO2排出量削減、CO2回収といった技術に注力していることがわかる。

2位の三菱重工業株式会社はパテントエッジスコア上位3社と同様な火力発電における脱炭酸煙道ガスとともに排出される残留吸収成分の濃度をさらに低減に関する特許を出願している。

※3)トータルパテントアセット:各社の特許ポートフォリオとしての総合的な競争力を計る指標

表2 2010-2019年間のトータルパテントアセット上記企業20社

続いて、トータルパテントアセットを国別に算出した。

国別のトータルパテントアセットは、競争力の有意な比較のため、母集団全体のトータルパテントアセットの8割を説明する上位546社を対象に集計しています。結果、首位が米国、2位が中国、3位が日本となった。上位の三ヶ国は比較的近い値ながら、4位以下を大きく引き離している。

一方、その上位546社までのトータルパテントアセットの出願人別平均値を見ると、7位のサウジアラビアが最も高く37,536。Saudi Aramco、King Abdullah University of Science and Technology、King Fahd University of Petroleum and Minerals、King Abdulaziz Universityの4出願人のみで構成されており、技術開発の高い集中度がうかがえる。

上位3か国の同数字は、米国:10,352、中国:9,483、日本:13,294となっています。日本は出願人の数こそ米国・中国より少ないものの、個社の技術開発力の高さという意味では勝っていると言える。

表3 2010-2019年間の国別トータルパテントアセット上位10か国

カーボンリサイクル産業に関わるグラントの分析

ここまで、特許の視点から、カーボンリサイクル産業に関わるプレイヤーを評価してきた。しかし、特許は出願の時点で実現が見込まれる技術を表すもので、その未来の技術をうかがうには不向きな指標だ。アスタミューゼでは、現在ではなく未来を見通すための指標として、公募で決定される研究開発資金(グラント)に注目している。グラントを獲得する研究は、まだ事業化には距離があるけれども、資金を配布する政府等の公的機関からの「推し」があると考えるためだ。

同社の所有するグラントデータベースに拠ると、2010年から2019年の10年間にカーボンリサイクルにかかわるグラント配賦額の総計は187億ドルだった。2010年の投資額11百万ドルから、2019年の123百万ドルまで、年間成長率34.2%で伸びている。

構成/ino.

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