
東京オリンピックに関する報道が増える中で、スポーツ業界の動向から目が離せない。横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)はコロナ禍でもファンがより野球観戦を楽しめるようにと数々の施策を行なってきた。この1年の取り組みをもとに、ベイスターズが考える野球・スポーツ観戦の未来について、株式会社横浜DeNAベイスターズ(ビジネス統括本部本部長 林裕幸さんに話を聞いた。
「安心安全」×「一体感」を追求する
ファンの方が球場観戦を楽しむためにベイスターズが行なっている施策について、林さんは以下のように語る。
「2021年3月の開幕戦よりお披露目した『YOKOHAMA CLAP(手拍子)』という声を出さない応援方法や、球場外の応援団と中継をつなぐリモート応援など、感染防止を徹底しながらお客様に一体感を感じていただける演出を行っています。また密を避けるための規制退場においても、待機時間も楽しんでいただけるように、オフィシャルパフォーマンスチーム「diana」やマスコットによるパフォーマンスにも力をいれました。
演出面だけでなく設備においても感染防止対策は徹底しています。例えば、スタジアム内のお客様の密集度合を把握するため、二酸化炭素(CO2)濃度測定器を設置し、高濃度な状態が続いた場合は場内アナウンスを入れたり、動線の見直しを行っています。空気の流れを生み出す気流促進ファンも、お客様が利用するトイレやグッズショップなど、計27箇所に設置しました」(林さん)
次世代型のスポーツ観戦で楽しみ方の選択肢を増やす
一方でベイスターズはオンラインで野球観戦ができる取り組みにも力を入れてきた。その例としてZoomを活用した「オンラインハマスタ」、バーチャル空間で行う「バーチャルハマスタ」だ。
「オンラインハマスタではオリジナルのカメラが設置されていて、バックネット裏や1・3塁側から試合を見ることができます。さらにはブルペンの様子を見学できたり、特定選手だけを追いかけられる機能もあり、新しい楽しみ方が生まれています。
イベント内では球団OBや特別ゲストがここでしか聞けない解説を行なったり、ファンの質問に答えるコーナーもあります。イベント参加者が球場のセンタービジョンに映り、応援メッセージを届けられる企画も人気です」(林さん)
一方的に配信するだけでなく、双方向のコミュニケーションを大切にしているようだ。
「バーチャルハマスタは、バーチャル空間上にもうひとつの『横浜スタジアム』を構築し、お客さまがご自宅からスマートフォンやパソコン、VRデバイスを使って来場していただけます。オリジナルのアバターでバーチャルハマスタ内を動き回りながら、ファン同士で一緒に応援できたり、試合前のパフォーマンスや実際に選手がホームラン打ったときなどにバーチャルならではの演出が加わったりと、次世代型の野球観戦を目指しているんです。
野球に触れる選択肢が増えたことで、初めての方でも気軽に楽しんでいただけているようになったと感じています」(林さん)
ファンと一緒に未来を考えていきたい
このような取り組みは、必ずしも球団だけで考えるのではなく「今後はファンのみなさまの声も聞きながら、一緒に考えていきたい」と林さんは言う。
「横浜スタジアム前にある複合施設『THE BAYS』内のコワーキングスペース『CREATIVE SPORTS LAB』では、横浜スタジアムの活用方法についてファンのみなさまと一緒に考えるイベントを開催し、観戦と市内観光を1日で行うツアーが生まれました。
さらに今年は球団誕生10周年の節目。10年間の歩みを振り返り、これからをファン・横浜のみなさまと一緒に考える企画『YDB FUTURE WALL』を、横浜スタジアムで開催。来場者に用紙を配り『ハマスタの未来』『球団事業の未来』『球団(チーム)の未来』『横浜の街の未来』『野球の未来』に関するアイデアを設置した特設パネルに貼り付けていただきました。球場でのイベントを終え、現在は特設ページ上でアイデアを募る『YDB FUTURE VOICE』を開催しています」(林さん)
野球・スポーツ業界のロールモデルへ
コロナ禍において、球場内外問わず数々の施策を行なってきたベイスターズ。今後の野球・スポーツ観戦の未来をどう考えているかを教えてもらった。
「まだまだ観客数や応援方法の制限があるので、すぐにスポーツ観戦がコロナ禍前の状態に戻ることはないでしょう。引き続き会場における安全対策の徹底が求められると思います。その上でベイスターズとしては、オンラインでの新しいスポーツやエンターテインメントの楽しみ方、ファン・横浜のみなさんとの関わり方を模索し、提案していきたいと考えています」(林さん)
ファンや横浜住民との関わり合いの中で一緒に未来を作るスタンスは、これからのスポーツ業界が目指す一つの在り方なのかもしれない。ベイスターズがそうしたロールモデルになることを期待せずにはいられない。
取材・文/ Kikka
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