
テレワークという働き方がビジネスパーソンに浸透して1年が経った。当初は在宅の1択だったが、シェアオフィス、ホテル、さらにはワーケーション、2拠点生活と様々なスタイルの選択が可能になった。3名の賢者が、テレワークの〝今〟を語り合った。
テレワークの成功率は12%。本番はこれから
──コロナ禍の働き方としてテレワークが導入されて1年がたちましたが、成果は出ているのでしょうか?
越川 テレワークを実施した企業にアンケートをとったところ、「成功した」と回答した企業は12%しかありませんでした。88%がなぜ成功といえないかといえば、成功の定義が決まっていないんです。テレワークを通じて何をやりたいかが明確にならないと、成功か失敗かわかりません。会社が、ノートPCとWi-Fiルーターさえ渡せば、仕事がうまく進むという妄想にとりつかれてしまっていたんですね。
鳥海 中小企業の経営に関わっていて気づいたのは、ノートPCを1人に1台支給している会社が少ないことです。中小ではこれから始めるという会社も多いと思います。
石山 経産省がコロナによるテレワーク導入の支援制度をつくっていますが、なかなか使ってもらっていないのが実情です。緊急事態宣言下でも通勤ラッシュが続いているのを見ると、まだこれからという印象があります。完全リモートに踏み切れないのは、情報のセキュリティーなども関連しているのかもしれませんね。
越川 そこは大きいですね。というのも、働き方に合わせてセキュリティーポリシーを変更しなくてはいけないのに、8割の企業がリモートワークを想定していない10年前のセキュリティーポリシーのままなんです。印鑑を押すためとか、印刷をするためだけに出社するなど、テレワークの本質から離れてしまうことが起きてしまうわけです。
鳥海 中小なら、情報はドロップボックスで共有し、顧客データなどの機密情報は社内に保管して外に出さないようにすれば管理できますが、大企業はそうはいかないですよね。
越川 成功している企業は、セキュリティーポリシーを「社外に持ち出してはいけないデータ」「持ち出しはできても暗号化を義務づけているデータ」「暗号化不要で持ち出せるデータ」の3レベルに分類しています。このルールがあれば、ノートPCで持っていけるデータがわかるので、テレワークもはかどります。
鳥海 働く側の問題点はどうでしょうか。会社にいることだけで給料をもらっているような人にとっては、テレワークで大した仕事をしていないことが露呈するでしょうし、サボるケースもありますよね。
越川 実は「サボり」問題について、600人を対象に調査をしたところ、在宅勤務で14%がサボっていることが判明しました。就業時間中に7時間半ゲームの『ソリティア』をしていたり、ネットショッピングを4時間している人もいましたね。
鳥海 個人事業主やフリーランスには考えられないことですね。
越川 調査をさらに進めると、サボっていた人の94%は、出社してもサボっていたんですよ。サボるのは場所ではなく、うまく仕事を割り振れない上司や、サボってもクビにしない会社のほうが問題で、テレワークとは無関係だったというわけです。
鳥海 周囲にはテレワークでも成果を出している人は多いですしね。
越川 そうなんです。日本は拘束時間で給料を与えてしまっていますが、本当はその成果で評価すべきなんですよ。同じ仕事を週休3日でこなせる人と週休1日でも終わらない人が同じ給料では、生産効率の高い社員のモチベーションは上がりません。コロナ禍のテレワークをもとに評価制度を変えた企業が55%あったのはとてもいい動きですね。本当のテレワークはこれから始まるといってもいいかもしれません。
■ 会社員のワーケーションへの不安(複数回答)
あしたのチーム、We’ll-Being、日本旅行調べ
東京 ⇔ 全国「集中できる個の空間がひとつあればいい」
●仕事場以外ならこもってできるホテルがベスト
航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん
世界の航空会社を利用しながら、多拠点で、取材、グルメやスポーツ観戦を楽しむ。情報番組や執筆などを通じて、情報を発信する。帝京大学非常勤講師。
仕事場以外には特定の拠点を持たず、出かけたあらゆる場所で、テレワークを精力的にこなす。
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