DJブース横にある番台バーのタップから勢いよく注がれるペールエールの「黄金湯ビール」。これが飲みたいから足を運ぶのか、サウナに入りたいから足繁く通うのか。どちらも正解です。
※こちらの記事は小学館から絶賛発売中のサウナムック「Saunner+」から一部抜粋して掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。
人生はどう転ぶかわからない──まさか、まさかの銭湯業、二人三脚で繁盛店に
オーナー 新保朋子さん 新保卓也さん
黄金湯は朋子さんが、「押上温泉 大黒湯」は卓也さんが店主を務める。おふたりとも銭湯巡りが大好き。黄金湯のロゴ入り法被の着こなしがさすがお見事。
次世代にもつなぎたい公衆浴場に光が見えている
今日までの約10年、それはそれは激動だったと店主の朋子さんは振り返る。「水風呂って何がいいの?」という人物が今こうして繁盛店を切り盛りしているのだから、何がどうして人生が転ぶかわからない。
海外雑貨のバイヤーをしていた朋子さんが近所の「押上温泉 大黒湯」の一角に雑貨の販売所を設けたこと機に、大黒湯の次男である卓也さん(当時は会社経営者)と出会う。そしてある日、父が倒れ、大黒湯を卓也さんが突如継ぐことになり……。ここからはまるで向田邦子作品のようにあれよあれよと事が進んで、結婚したふたりは大黒湯の看板を背負うことになる。ふたりの様々なアイデアで大黒湯は軌道に乗り、地元民から愛される繁盛店へ。そこに飛び込んできたのが、創業から約90年がたとうとしていた、これまた近所にある黄金湯の閉店話。
「私たちの思いとしては、公衆浴場をとにかく次世代につなぎたい一心だったんです」(卓也さん)
ふたりが大黒湯をうまく回しながら黄金湯を引き継いで1年、老朽化した施設そのままに様子を見ていた。ある日、レコード好きなスタッフが店で曲を流し始めると、常連さんもレコードを初めて見た若者も分け隔てなく盛り上がったそうな。改装され、現在の黄金湯にDJブースが生まれたきっかけだ。
「たまたま銭湯の家に嫁いできて、まさかこんなふうになるなんて思いませんでした。公衆浴場に光が見えてきたのは確か。疲れて入って来たお客様が笑顔でお帰りになるのを見るとうれしいですよ。次は黄金湯2号店ですね(笑)」(朋子さん)
SAUNA DATA
[住]東京都墨田区太平4-14-6 [営]10:00〜24:30(平日・日曜・祝日)、15:00〜24:30(土曜日) [休]第2・第4月曜日 [料]470円(大人)、男性サウナ(平日500円、土日祝550円)・女性サウナ(平日300円、土日祝350円)※水曜のみ男女入れ替え日 http://koganeyu.com/
銭湯好きクリエイターが寄ってたかって盛り上げた結果
黄金湯のリニューアルではご近所さんのアーティストの高橋理子さんが参画。設計は、スキーマ建築計画の長坂常さん(「ブルーボトルコーヒー」の店舗など)が担当した。(1)改装前は釜場だった場所を水風呂に利用。天井が黒くこげているのはその名残だ。水温15℃ほど。(2)広い外気浴スペース。(3)壁面に麦飯石を使った男性用サウナ。15分ごとのオートロウリュ完備。
黄金湯2.0がスタート!
2021年、2Fにキッチンやテラス、ホステルがオープン予定。コロナをものともせず新事業を立ち上げた。順次ととのい次第スタート。
これが公衆浴場の新しいカタチ
(4)夏はルーフバルコニーで冷えた「黄金湯ビール」を! コロナが落ち着いた頃には各種イベントも実施予定。(5)本格的な厨房機器を備えた黄金湯キッチンでは絶品カレーが味わえる予定。(6)ついにホステル事業もスタート、和洋の部屋がチョイスできてベッドはシモンズ製。(7)入浴後のアカスリが大好評。アカスリ+洗体(洗髪)で4000円(30分)より。
サウナーたちの伝説のバイブル復汗!SJ MOOK『Saunner+(サウナープラス)』
サウナを愛してやまない「サウナー」のための本、現在のサウナブームの火付け役となった伝説のサウナ専門誌『Saunner』(2014年、小学館刊)が、7年の時を経てついに復汗(刊)! コロナ禍による危機を超え、ブームを超え、日本のサウナの未来を考えるというテーマのもと、パワーアップして再登場!
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B5判/132ページ
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104252
取材・文/堀田成敏