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「bot」という言葉に何を思い浮かべる?オンラインゲームに業務効率化のヒントがあった!

2021.07.15

新連載/TOKYO 2040 SideB 第六回『RPA+ゲーミフィケーションでDXが進化する』

 RPA(Robotic Process Automation)が話題になり始めたのは2012年ごろで、DXが社会的なキーワードとなったことで、近年あらためて注目されているといってよいかと思います。RPAは「ホワイトカラーにとってのロボット」や「デジタルレイバー」などと呼ばれます。

 その根底には、アプリケーション上の定型的な操作、紙からコンピュータへの転記入力、あるいはAIを使用するほどでもない簡単な条件分岐のある業務を、徹底的に自動化して時間を節約し、そのぶん人間は人でなければ成しえない業務やクリエイティブなことに一層取り組んでいきましょう、という考えがあります。

 人に代わって作業をさせることは難しく思えますが、オンラインゲームの世界においては20年近く前から日常的に目にするものでした。それが「bot」と呼ばれる存在です。

 現在のbotは、SNSやメッセージアプリのプラットフォーム上で自動応答してくれる存在や、チャット型インターフェースを備えたAIを指すことが多いです。ですがオンラインゲームでの「bot」は、ゲーム世界を乱す「忌むべき存在」の代名詞だったのです。

ゲーム用「bot」はRPAの先駆けだった?

 2000年代初頭といえば、スマートフォンが一般的になる10年ほど前です。オンラインゲームはパソコンでプレイするタイプのものが主流でした。今でこそ3DCGで描かれたバーチャルワールド内でキャラクター(アバター)を操作し、他のキャラクターとチャットを楽しんだりするサービスは珍しくありませんが、当時、最先端のゲームシステムを持つMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)の開発運営は、世界的にもゲーム産業においてとてもホットなトピックだったのです。

 ゲームタイトルそれぞれの趣向を凝らしたファンタジー世界がリアルタイムCGで描画され、その中で冒険を繰り広げたり、モンスターと戦ったり、他の人とコミュニケーションをとったりする体験はとても斬新でした。

 ところが、このMMORPGをプレイしていると、他人とコミュニケーションをとらずに、「ひたすら無言」でモンスターを倒しては宝箱のアイテムを奪っていくキャラクターに出くわすようになりました。これが「bot」です。

「bot」は、人がキーボードやマウスで操作しているのではなく、自動化プログラムがそれを代行しています。例えば、

(1) モンスターが現れたら→近づく
(2) 剣の届く範囲に移動したら→攻撃する
(3)反撃されて体力が減ったら→回復魔法を使う
(4) (2)と(3)を繰り返す
(5) モンスターが倒れてアイテムが出たら→拾う
(6) 周囲にモンスターがいなくなったら→徘徊する
(7) (1)に戻る

 ……という行動をゲーム内で24時間休むことなく遂行します。

 けれども、この中では「他のプレイヤーからチャットで話しかけられたら……」という内容は想定されていないため「ひたすら無言」になります。MMORPGでは「他の人と馴れ合わない孤高の勇者」を演じてプレイする人もいなくはありませんが、不気味ですので「bot」の疑いありとなれば周囲のプレイヤーは運営会社に通報します。

 人が操作するよりもはるかに高効率な「bot」は、一日1時間くらいしかプレイできない人を遙かに引き離すほど早くキャラクターを成長させ、それによってドラゴンや魔王といった強敵を簡単に倒し、皆が喉から手が出るほど欲しい伝説のアイテムを奪っていってしまうわけです。

 これは、和気あいあいと遊びたい人たちにとって邪魔者です。通報を受けた運営会社は管理権限をもったスタッフ(ゲームマスター)をゲーム内に派遣して「bot」を排除します。地道に遊んでいる優良顧客の機嫌を損ねないようにいわば「出禁」にするわけです。

 するとイタチごっこが始まり、自動化プログラムのチューニングが進みます。ゲーム内で発生するありとあらゆる事象をカバーして先鋭化し、他プレイヤーへの反応がプログラムされ、通報されない自然な振る舞いをします。

「拾ったアイテムが所持上限を超えたら、村に戻って商人に売却する」「チャットで話しかけられたらとりあえず『こんにちは』と答え、相手が言葉を続けたら相槌となる文字列を送る」「運営会社の巡回キャラクターが近くに来たらログアウトして身を隠す」「複数のbotで連携して役割分担の上で強敵を倒す」などの機能が追加され、高度な自動プレイが行われます。

 ここまでくると、ゲームを遊ぶためのbotか、botをプログラムする遊びなのか、わからなくなってきます。

 そして運営会社は「bot」を取り締まるために、様々な観点でキャラクターの行動をチェックし、マルチタスクで実行されている怪しいプログラムを検知する方向へ向かいます。SF映画で、人間のように振る舞うアンドロイドを見極めて取り締まる捜査官が出てきますが、それに近い光景が発生しているといえます。

業務で発生する行動を見通す想像力がRPAの精度を高める

 さて、これまでの連載で、DXを進めるにあたってデジタルツールやビジネス向けITサービスの導入をするだけでは効果は薄く、従来の業務がどんな要素で構成されているかの可視化やワークフローの最適化をしていくことが重要であると書いてきました。本誌連載中の小説『TOKYO2040』でも、RPAが進んで地方公務員も「テレワークの日」には9割がた在宅勤務をしている姿を描いていますが、今回紹介したように、スマートフォンが一般化することで身近になったオンラインゲーム分野にも、課題解決のヒントが数多く眠っています。

 20年前のオンラインゲームの「bot」は、他のプレイヤーや運営とのいたちごっこで高度化していきましたが、RPAも業務やアプリケーションに対して自動化を進める点では同じです。どちらも重要なポイントは、どんな状況が起こりうるかを徹底的に洗い出して、リアクションを多岐にわたって想定してプログラムしていくことにあります。

 さきほどのゲームには「ドラゴンを倒す」や「伝説のアイテムを得る」という長期的な目的が設定され、そこに到達するために継続的に「プレイヤーを成長させる」必要があり、その最も細かいタスクとして「剣を振る」などがあったわけです。これはある種「クリアに向けてのワークフロー」といえます。

 これらを業務に置き換えて考え、先鋭化させていくことで、高効率なRPAを達成するアプローチは有効です。

 ところが「なんとなく昔からやっている」「この手順以外のやり方を考えたことがない」と思考停止したままRPAツールを導入すると、人間が直接操作するのとさして変化はなく、せいぜい人体でキーボードやマウスを動かすスピードのぶんの省力化という小さい満足で終わってしまいます。

 ここは是非、「bot」が高効率化をしていったのと同様に、可視化されたワークフローで発生するさまざまな行動を想像して条件付けし、タスクを超スピードで「クリア」する、DX時代のRPAを実現していっていただけたらと思います。

文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。

このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。

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