小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

「人生の予防接種として見てほしいですね」映画『100日間生きたワニ』の上田慎一郎監督とふくだみゆき監督にインタビュー

2021.06.27

 2018年の大ヒット作『カメラを止めるな!』が、フランス映画界を代表する監督の一人であるミシェル・アザナヴィシウス氏によってリメイク(タイトルは『FinalCut』)されるなど、話題に事欠かない映画監督の上田慎一郎氏。彼が、妻で映画監督のふくだみゆき氏と共同監督で手がけたアニメーション映画が、7月9日(金)から全国公開される『100日間生きたワニ』(配給:東宝)だ。

 念のためにおさらいしておくと、『100日間生きたワニ』は、漫画家のきくちゆうき氏が本人のTwitterアカウントで2019年12月12日から投稿し始めた『100日後に死ぬワニ』を原作する。きくち氏の『100日後に死ぬワニ』は、ゲッサン少年サンデーコミックス(小社刊)として0日目や100日後の後日譚などが加えられたコミックが発売されたほか、ぬいぐるみなどのキャラクターグッズLINEスタンプなどが提供されるなど、派生商品が数多く登場している。

 以下のインタビューでも触れているが、当初は上田監督が実写で企画していたが、アニメ制作で実績のあるふくだ監督とのダブル監督という提案が配給側からあり、アニメーション作品となった。本稿では、公開に先立ち、4月上旬に行なった上田慎一郎監督とふくだみゆき監督のインタビューをお届けする。

左/上田慎一郎監督、右/ふくだみゆき監督

--まず、映画化の経緯を教えてください。

上田慎一郎(以下、上田):連載2日目くらいに、『100日後に死ぬワニ』の4コマを見て、30日目ぐらいですかね、映画化をしたいなと思って、企画書を作って提案しました。最初は、実写の映画化を想定して企画書を出したんですけれど、東宝から、ふくだと上田の共同監督で、アニメ映画化しないか? という提案をいただいて、制作につながりました

 僕は、これまで実写オンリーだったので、アニメ映画をやると言うときに、実写畑の自分だからこそ、作れる映画があるとは思って受けてはいました。でも、やっぱり、アニメーションを作っている人間のサポートがあったほうが、もちろん、いい。自分だけよりは、ふくだと一緒にやるのが良いと思いましたね。

ふくだみゆき(以下、ふくだ):(共同監督という話を聞いて)最初びっくりしましたね。私は、アニメはやっているとはいっても自分でしかやっていないので。これまでは、自分一人で作画して、自分一人で作るっていうアニメはやっていましたが、制作会社にお願いするなど、人に指示を出してアニメを作る経験がなかったので不安はあったんですけど、今回、私一人ではなく、夫と二人だったので、まぁ、新しいことを二人でやってみるのは面白そうだな、と思いました。

--参考までに、上田監督は、実写でどんな作品を想定していたんですか?

上田:自分が『100日後に死ぬワニ』のマンガを見たときに、すごく映画的な何かを感じたんです。映画的なマンガだなと。

 それは何か、余白ですね。多くを語らない余白みたいなものが、リプライ欄にみんなが、こうじゃないか、ああじゃないか、考察を書いたりとか、したくなるような、余白を埋めていきたくなるような。(『100日後に死ぬワニ』は)埋まってない余白がいっぱいあるんですよ。それは映画的だな、と。その、余白だったり、コマとコマの間に流れている時間とか、空気を映画にしたいな、と思ったんです

--そうした余白を感じさせるのは、何日目?

上田:たとえば、ワニがバイトを辞めて(40日目)、空き缶を拾うところがありますよね(41日目)。ここでは、何を表現しているのかってはっきり説明してくれないじゃないですか。ワニが気分が落ち込んで、凹んでいるときに、空き缶が地面に落ちていて、一度通り過ぎるけれど、戻ってきて、その空き缶を拾ってゴミ箱に捨てる。なんていうか、コクのある四コマだな、と思ったんですね。気持ちが落ち込んでいるときでも、人間として大切な何かを失っちゃいけないっていう風に受け取る事もできるし、なんか、いろんなことを考えさせられる。

 自分もあるんですよね、地面にゴミが落ちているな、と思って通り過ぎて、自分が捨てたゴミではないけれど、もの凄く小さな罪悪感が残ること。だから、拾って捨てる、みたいな(笑)

 それは、なんか人間として、大事ななにかじゃないですか。(『100日後に死ぬワニ』は)そういう繊細なことをしてきたりするので、すごいそこがステキだなと思いました

--映画『100日間生きたワニ』では、カエルのキャラクターの設定を加えていますよね。その設定について、教えていただけますか?

上田:カエルはですね、最初は、いなかったんですよ。

 映画化しようと決まって、最初に書き始めたときにはいなくて、途中から生み出されたキャラクターです。

 まず、『100日後に死ぬワニ』を原作とした、初稿(第一稿目の脚本)を書いたときは、原作の4コママンガ100話分を、再構成し、後日談が少しつくような構成で脚本を書いたんですね。ただ、その初稿が書き上がった直後ぐらいに、コロナが本格的になってきた。

 これは、僕が原作から受け取った事ですけど、平凡な、当たり前な日常で、(100日後の)死を意識することによって、今日や、今が変わる、っていうことが、少し響きづらくなってしまったな、と思ったんです。(コロナ禍で)平凡な日常、当たり前な日常っていうのが失われて、毎日死を意識しないといけないような世になっている、と。だとすると、『100日後に死ぬワニ』が描いていた普遍的なテーマに加えて、(コロナ禍の)いま語るべき、その先の物語を書かないといけないな、と思ったんですよ。

 そのときに、カエルというキャラクターが必要になったです。

 ここまでのお話でわかるとおり、『100日間生きたワニ』は、『100日後に死ぬワニ』を原作としながらも、その先も描いた物語になっている。詳細は割愛するが、そこでは上述のカエルが、重要な役割を演じる。その声は、山田裕貴氏が担当しているほか、ワニが恋するセンパイ役に新木優子などと、豪華な俳優陣らが声優としてキャラクターに命を吹き込んでいるところも見どころのひとつといえる。

--『100日間生きたワニ』では、主人公ワニ役を神木隆之介さん、親友のネズミ役とモグラ役をそれぞれ中村倫也さんと木村昴さんが担当しています。また、映画オリジナルの重要なキャラクターであるカエル役を山田裕貴さん、ワニのセンパイ役を新木優子さんが担当しているところも見どころという印象を受けました。

ふくだ:カエル役の山田裕貴さんは、バラエティに出ている彼を拝見したときに、「あっ、カエルだなぁ」って思ったんですね(笑)。過去の出演作では、割とかっこいい役が多い印象なんですけれど、ご本人はひょうきんで、周りにも気を配れるなど、愛され要素がたくさんあるので、「この人、すごくカエルっぽいな」って思ったんです。実際、初めてお会いしたときに、“めちゃめちゃカエルだ”と思いましたし(笑)、声を当てて見てもらって、第一声を聞いて、「あっ、想像通りのカエルが来た」っていう感じでした。

 山田さんだからこそ、カエルの異物感もありながら、憎みきれない愛らしさみたいなものが出たので、本当に良かったなと思っています。

ふくだ:ワニが恋するセンパイ役の新木優子さんは、『トイ・ストーリー4』のギャビー・ギャビー役でも、すごく吹き替えも上手な方なんだなというイメージがあったんです。それに加えて、彼女がインタビューに答えている映像を見て、すごく言葉を選んで、ていねいにお話をされる方だなと思っていました。

 新木さんには、ご自身に備わっている上品さみたいなものがあるんですね。それがセンパイワニの親しみやすさもあるけれど、ちょっと高嶺の花感もある、っていう、ちょっとお姉さんな品のある雰囲気とぴったりだなと思っています。

--これは、一応聞いておきたいんですけれど、今回の映画化の話が発表されてから、いろいろとネガティブなリアクションもあったと思います。あれについては、どんな風に受け止めていたんですか?

上田:最終回を迎えて、(映画化が発表されて)その日に炎上したじゃないですか。それは、どっちの気持ちもわかるんです。『100日後に死ぬワニ』というものを広めたい、ということで、届けたい人の気持ちもわかるし、死を題材にした作品なので、余韻をもう少し感じたかった、余韻を大事にしたかった読者の気持ちもすごくわかる。(最終回の)当日に、いろいろと発表するよりは、一日は置いた方が良かったですね(笑)。せめて一日か、少しは置いた方がよかったんだろうな、とは思います。

--原作のきくちゆうきさん、そして両監督は同世代です。令和のいまの空気感や人々の求めていることをどんな風に感じているのか、それは作品作りに影響しましたか?

上田:僕は、作品を作るときに、テーマを固めないタイプなんですよ。ふくだもかもしれないですけれど

ふくだ:そうですね

上田:映画を作るとき、シナリオの学校や、映画の学校では、テーマをまず決めなさい、みたいなことを言われると思うんですが、テーマから映画作りを始めると、テーマに縛られるんですよ。テーマって、書いているうちに湧き上がってくるものと思っている、というか僕は、そのタイプなんですね。だから、初稿を書いたときに、それを見て、テーマを発見し、第二稿、第三稿、第四稿と重ねていくうちに、テーマを輪郭づけていくみたいなことが多いので、作りながら、発見していった感じです。自分がこう思っているんだな、とか。

ふくだ:自分たちとして描かなければいけないこと、映画にするならば、『100日後に死ぬワニ』の先を描かないと完成しないと思ったところが大きかったかな、っていう気がしますね

上田:人々が何を見たいか、何を求めているかは、結局はわからないじゃないですか。人に聞いても、その人もわからないかもしれない。僕は、結局自分がみたいものを、作ることがいちばん正解だろうと思います。自分も、いまを生きる一人の人間なので、いま自分が見たいけど、ない映画、はなんだろう? って、思って作っています。

--最後に『100日間生きたワニ』を、どんな方に見ていただきたいと思いますか?

上田:親子で見て欲しいなと思いますね。10歳のコと40歳の人では、刺さり方が違うと思います。10歳のコが見ても、わからない事もあると思うんです。ただ、そのコが、30代、40代になったときに、あのとき見た映画の、あれは、こういうことだったのか、みたいな、なんか「早めの人生の予防接種」になればいいなと思います。自分も、そういう映画ってあるんですよ。子どものときに見て、ピンと来なかったけど、いま大人になってみたら、すごく刺さる作品って。

--どんな作品なんですか?

上田:(『100日間生きたワニ』とは)ちょっとテイストは違うんですけれど、たとえば、『ホーム・アローン』(1990年公開)は、子どもの頃にみたときには、子ども目線で見ているじゃないですか。いま僕は親になっているんですけど、改めて見ると、親目線で見ちゃうんですよ。ああ、親としては、子ども一人で家に置きっぱなしにしちゃったら、めちゃくちゃ心配やろな、というのが、痛いほどわかる。いま、うちのコは4歳ですが、ワニのぬいぐるみを抱いて寝てますね。

ふくだ:さきほど、発表のタイミングの話がありましたが、ワニが好きだから、早く届けたいと思った人と、ワニが好きだからもっと余韻が欲しかったという違いはあるものの、みんなワニが好きだから衝突してしまった部分があったと思うのです。なので、ワニが好きな方も見て欲しいし、マイナスなイメージを持つ方も、見ていただくと何か受け取るものがあると思うし、印象も変わると思います。やはり、ワニくんって愛されるキャラクターだと思うので、いろんな感情を持つ方が、映画で触れてくれると、それぞれ持ち帰ってもらえるものがあると思うので、いろんな方に見て欲しいですね。

映画『100日間生きたワニ』公式サイト https://100wani-movie.com/index.html

取材・文/橋本 保 撮影/竹崎恵子

興味のあるジャンルを登録して@DIMEをもっと便利に!話題のコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」やAmazonギフト券が当たるキャンペーン実施中

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年11月16日(火) 発売

DIME最新号の特別付録は「自撮り棒一体型スマホ三脚」! 特集は「今聴くべき、ラジオと音声コンテンツ」、「家電進化論2022」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。