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現代の経営哲学に必要な「三方よし」とは?コロナ禍でも成長を続ける勝ち組企業の特徴

2021.06.25

日本的経営を世界が評価した転換点

今から約2年前の2019年8月19日、ある声明がビジネス界に大きなインパクトを与えました。アマゾンやアップル、JPモルガンなど、アメリカの主要企業トップ200社が名を連ねる米国内最大規模の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、株主至上主義を見直し、顧客、従業員、仕入れ先、納入業社、株主、地域など、関わるすべての人(ステークホルダー)に対する貢献を考えるべきだと表明したのです。

経済合理主義の最先端を歩んできたアメリカで、20世紀から続いてきた「株主至上主義の終焉」が宣言されたことは、驚きをもって受け止められました。しかし、日本ではそれほど注目されなかったのです。長く商売を続けてきた人にとっては、あまりにも当たり前のことだったからです。

それまでは、そんな日本こそ遅れていると言われ続けていたわけですが、会社は関わるみんなのために存在しているという、日本的経営の考え方を世界が評価し始めた歴史的な転換となりました。

江戸時代の商い精神“三方よし”から学ぶ経営哲学

こうした背景やSDGsの広まりもあり、私が改めて見直すべきだと考えているのが、日本的な経営哲学を表現した「三方よし」です。「三方よし」とは、近江商人の商売の精神を表現した「売り手よし 買い手よし 世間よし」です。昭和の経済成長期にいわれていた「お客さまは神様」という視点で考えると、「買い手よし、売り手よし、世間よし」の順番ではないかといわれたこともありました。

でも、売り手を会社ではなくて、従業員だと考えれば、「売り手よし」が第一でいいと分かります。従業員がハッピーでなければ、お客さまに本質的な価値提供をしようというモチベーションは起こらないからです。

従業員が幸せになることによって、買い手もよいサービスを受けることができ、幸せを感じていただける。それによってまわりも世間にもよい影響が広がっていくというわけです。マーケティングの視点から見ても、「三方よし」は優れています。

マーケティングの基本として有名な「4P」「4C」という概念があります。4Pとは「Product(製品)」、「Price(価格)」、「Promotion(プロモーション=どう売るか)」、「Place(プレイス=どこで売るか)」の頭文字で、1960年にアメリカのエドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱した売り手視点の考え方です。

その後、1993年にロバート・F・ローターボーンが提唱したのが「4C」です。「Customer Value(顧客価値)」、「Cost(価格)」、「Communication(コミュニケーション)」、「Convenience(利便性)」で、顧客視点の考え方といわれています。

しかし、どちらも「どうしたら売れるか(4P)」「どうしたら買うか(4C)」という顧客対企業の発想であることは変わりません。一方、三方よしの経営では、お客さまや会社のみならず、取引先や地域社会、関わる人々など社会にも目を向けていました。

「三方よし」は特に老舗と言われる日本の企業であれば、どこもが持ち続けてきた視点です。ビジネスシーンにおいても「持続可能」ということが求められる時代になりましたが、持続性ということでいえば、日本は最も成功している国といえます。創業から100年以上続いている企業、200年以上続いている企業ともに世界で最も多いことが、それを証明しています。

「三方よし」を理想論だと考える人に足りない視点

「三方よし」を理想論、きれいごとだと考える人は、「利益はどうやって増えるか」と「利益がどうやってもたらされるか」との違いを言語化できていないのでしょう。そして、お客さまが物理的なものではなく、幸福感や満足度、充実度など「感情的変化」を生み出すサービスに価値を置き始めたことに気づいていないのだと思います。

まず、利益(Profit)がどうやって増えるかを式にして考えてみると、

P(Profit=利益)イコールT(Time=時間)分のR(Revenue=売上)マイナスE(Expense=経費)

となります。つまり、売上を最大化して、時間と経費を最小化できれば、利益は増えていくわけです。

ではそもそも、そのR(売上)は何によってもたらされるかというと、CH(カスタマーハピネス)、つまり顧客満足です。お客さまの満足度が高いと、リピートされたり、紹介されたりすることで利益が生まれるのです。

そして、今の時代、お客さまが満足するものは商品そのものだけではなく、価値提供サービスに変わっています。トヨタ自動車のような付加価値の高い商品を作っている企業よりも、ネットフリックスやテスラが時価総額を超えたことからも明らかです。こんなことは、10年前には誰も想像しなかったでしょう。

背景には物理的なものを価値提供し続ける社会では、地上の資源に限界があるということもあります。私は様々な業界でサブスプリクションモデルへの移行が進んだことの本質も、商品からサービスへと価値観が変化したことにあると考えています。

経営者が会社の存続のため実践すべきこと

では、CH(カスタマーハピネス)につながるサービスを提供しているのは誰かというと、従業員です。従業員がハッピーでなければ、カスタマーハピネスは生まれません。

EH(Employee Happiness=従業員の幸せ)によってサービスが向上し、CH(カスタマーハピネス)が生まれる。それが利益につながっていくのです。

まさに「売り手よし」から「買い手よし」になり、利益が生まれることで社会に還元したり、環境保全活動を行ったりするようになって、「世間よし」となっていくわけです。私は多くの企業を見てきて、これからは「三方よし」を実践できる企業しか存続していくことはできないと思っています。実際、コロナ禍でも伸びているのはそういう企業です。

弊社のクライアントである湘南美容クリニック様も、「究極の三方良しを実現する」を理念の1つに掲げ、改革を行った結果、お客さまや従業員満足度が向上しただけでなく、費用や成果が分かりにくかった業界の常識まで変えてしまいました。

ジョブ型採用をはじめ、米国の経営理論だけを参考にする動きが続いています。しかし、今こそ経営者は、西洋的な教えと日本的経営の両面に素晴らしさがあることに目を向けるべきではないでしょうか。

文/清水康一朗
ラーニングエッジ株式会社代表。静岡県浜松市出身。98年慶應義塾大学理工学部卒業後、人材業界のベンチャー企業に入社。2000年、デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。2003年にラーニングエッジ株式会社を設立。コンサルで学んだマーケティングや顧客管理のノウハウをベースに、ビジネスセミナーポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、日本でナンバーワンの登録数をもつ業界最大のサイトに成長させる。アップル創業者スティーブ・ウォズニアック氏など世界トップクラス人材のセミナーを数多く開催し、世界的な指導者のメンターとして有名なアンソニー・ロビンズ氏の日本国内で公認された唯一のイベントプロモーターでもある。そのリーダーシップが高く評価され、2007年のアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーのセミファイナリストにも選出されている。

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