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英国の映画祭で公開されたカルロス・ゴーンのドキュメンタリー映画「Carlos Ghosn The Last Flight」の気になる中身

2021.06.17

■連載/Londonトレンド通信

 6月4日から13日まで開催された第28回シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭で、カルロス・ゴーンの日本脱出を本人が語るニック・グリーン監督『Carlos Ghosn The Last Flight』が世界初上映された。

 シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭は、イングランド中部の都市シェフィールドで世界のドキュメンタリー映画を集め、開催されている。イギリス最大、世界でもトップ3に入る規模のドキュメンタリー映画祭で、今回は約200本の作品が上映された。

 『Carlos Ghosn The Last Flight』は、ルノー・日産・三菱アライアンス元CEOカルロス・ゴーンの日本脱出までの軌跡を、本人、知人へのインタビューと記録映像、再現映像で追っていく。

 世界中で大きく報じられた顛末は、特に当事国となった日本では知らない人はいないだろうが、そのアップ・ダウンとスリリングな脱出の詳細が改めて本人の口から語られる。

 まず冒頭で引き込まれる。上空から見た海の映像に、ゴーンの日本脱出を伝える複数のニュース音声がかぶさる。「パスポートは持たずに」、「自宅で逮捕されている状態だった」などの声が聞こえる。海面を進んでいくと、やがて陸地が現れ、海沿いのプール、その向こうに高層ビルが見え始める。ゴーンが逃れたレバノンの首都ベイルートだ。

 そこに銃声が重なり、屋内での射撃シーンになる。的の真ん中からそう遠くない所に集中する弾痕、引き金を引く手のクローズアップ、引いた映像となり画面に収められた男がサングラスを外す。カルロス・ゴーンだ。

 ここまではスローモーションで、スタイリッシュだ。映画そのものの構成も上手いが、それにもましてゴーンの語りが引きつける。簡潔にポイントを語り、そらさない。

 例えば、射撃シーンで「いつも射撃練習をしている。精密射撃だ。あらゆる銃でやる。多大な集中力で焦点を合わせることを要求される。敏感な引き金に、指をゆっくりと動かし、弾をあるべきところにもっていく。自分を完全に統制しなくてはいけない」の後に、「大きな会社を率いていくのは、ある国においては危険な仕事だ」と続けられたら、こちらはもう前のめりで聞くしかない。

 話は、2018年11月19日、ゴーンが到着した羽田空港で逮捕され、そのまま小菅刑務所に運ばれた様子から始まる。「係官は、私に逮捕の理由を説明する努力はしなかった。私はショック状態に陥った」。

 「たくさんのストーリーがある。フランス人になったレバノン・ブラジル人が、最も伝統的な日本の会社の1つでCEOになる。それはユニークなことだ。二つ目のストーリーは、どうやって日本から出たかだ」とゴーンは語る。

 ユニークな話は、幼少期から始まる。「幼い頃、ブラジルからレバノンに来た。だから、もうアウトサイダーなのには慣れている」、「学校での成績は中くらいだったが、そこからトップを目指した」、最終的にはフランスで高等教育を受け、そこでキャリアをスタート、若くして頭角を現し、ルノー・日産・三菱アライアンスCEOにまで昇りつめる。

 経営不振に陥っていた日産を短期間で立て直したゴーンは、雑誌の表紙を飾るなど、一時期、経済界のスーパースターだった。

 ゴーンばかりではなく、会社関係者やジャーナリストなど、周囲にいた人のインタビューも入る。例えば、ゴーンの仕事ぶりを称賛していた人が、「ゴーンは好きか?」と問われ、一瞬、黙った後、「仕事で彼が成し遂げたことは好きだ」と答える。「好きだ」と即答しないのは、業績を上げることには貢献するが、その会社の一員として仲間意識を持つふうではないと言われるゴーンの性格ゆえなのか、逃亡中の犯罪者かもしれないゴーンの立場ゆえか。「悲劇だ。彼の野望と成功が彼を焼き尽くした」と断じる人もいる。

 その中で1人、全面的にゴーンの側に立つのが、妻キャロルだ。

 それまで感情を大きく揺らすことなく話していたゴーンが、「キャロル」と言って、突っ伏すシーンがある。

 巨額の不正報酬があったとされての逮捕に続く日本脱出は、CCTVなどに残された映像と再現映像とで語られる。上部のふた部分に留め金がついた大きな黒い箱に、身をひそめて運ばれる。箱の底には、小さな空気穴が開けられた。空港では、高価な楽器が入っているから、チューンが変わることがあっては困るとして、X線検査を免れる。自家用機だったため、不特定多数が乗る旅客機と違い、検査はゆるいようだ。

 「『美女でも中に入っているのじゃないか』とジョークを言っているのが聞こえた。けれど、中を確かめることはしなかった」と、中にいた美女ならぬゴーンは言う。一番の難関を過ぎ、箱は飛行機に積まれた。

 話がベイルートに到着した後にさしかかり、箱を出た先にキャロルがいた、というところで、「キャロル」と名前を発した後、感に堪えない様子のゴーンは「ちょっと待ってくれ」と、大きく前にかがみ、顔を隠した。よどみなく話すゴーンが止まった唯一のシーンだ。

 射撃のほかにも、プールで泳ぐゴーンのシーンなどもあり、海辺の生活を楽しんでいるようにも見えるゴーン夫妻だが、一歩レバノンの外に出れば、逮捕される可能性がある。

 ゴーンに不正があったのか、それとも、囁かれるように経産省が関わったゴーン追放だったのか。映画は、そこには踏み込まない。Q&Aに登壇したグリーン監督は、「この映画はゴーンの無罪を主張するものでも、有罪を証明するものでもない」とした。「まだ終わっていない話だ」と監督が言うように、現在、ゴーンの下で働いた面々が罪に問われている。この映画でも姿が見える、ゴーン逃亡を手助けしたテイラー親子と、この映画でインタビューに答えている元日産代表取締役グレック・ケリーが、それぞれ裁判中だ。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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