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「間違って逆さまに…」瀕死の町工場を救ったフェイスシールド誕生秘話

2021.06.17

新型コロナウイルスは、多かれ少なかれ、多くの企業に打撃をもたらした。その中で、売上ゼロにまで落ちこんだものの、奇跡の大復活を果たしたとある町工場がある。その町工場は、本業とはまったく異なる、感染対策になるフェイスシールドを製造してヒット商品を生み出した。今ではテレビ関係者がこぞって利用するアイテムとなっている。

実はその開発、奇跡の連続だったのだ。

その神奈川県横浜市都筑区にある有限会社大髙製作所の代表取締役、大髙晃洋氏にインタビューを行った。

首掛け軽量フェイスシールド「LAYERED(レイヤード)」とは?

テレビドラマの撮影現場では、出演者たちは、撮影中以外の時間はマスク着用が必要だ。しかしマスクを付けたり外したりすると、メイクがマスクについて取れてしまったり、髪型が乱れたりしてしまうため、厄介だ。

そんなとき、よく使われるのがフェイスシールド。透明で顔全体を覆う形になっており、顔に直接触れず、種類によっては髪型も乱れないことから役者たちにとっては重宝されている。

中でも、現在、特にテレビ関係者の間で人気なのが、有限会社大高製作所が開発した首掛け軽量フェイスシールド「LAYERED(レイヤード)」だ。これは従来のフェイスシールドと少し異なり、首から掛けて上向きにクリアシートを装着するタイプとなっている。従来のものは、頭部に掛けてクリアシートが下向きに向かうものだったが、レイヤードは首から掛けることから、装着時の「暑い」「曇る」といった不快感が軽減される。頭に固定しないことから髪型崩れも気にならない。

「レイヤード - ネックタイプ レギュラーセット(レギュラーサイズフレーム1個/フルシート2枚/ハーフシート2枚)4,290円(税込)

2021年2月2日に発売して以来、テレビ関係者を中心に支持を集めて1ヶ月半で1万セットを売り上げ、2021年5月20日時点で1万5千セットを売り上げた。また旧モデルの「KANAGAWA」モデルについても現在、売上が伸びており、新旧合わせてトータルで5万セットを売り上げた。

山あり谷あり!レイヤード開発秘話

大髙製作所の工場内

このレイヤードを製作・販売している大高製作所は、実は本業は、神奈川県横浜市都筑区で「ダイカスト金型」という金属を鋳造する際に流し込む型を製造する従業員4名の小さな町工場だ。2020年3月にコロナ禍により創業36年で初めて月の売上がゼロになり、金型設計、製造の技術を活かして何かできることはないかと模索し、マスクやフェイスシールド不足に焦点を当て、金型から作る樹脂製品を原料とするフェイスシールド製造を思いつく。初期モデル「KANAGAWAモデル」はすでに2020年5月に完成しており、迅速な量産化を実現した。

最初に完成したのは一般的な頭部に固定するものであった。しかし暑くなる6月になって課題が浮き彫りになる。装着時に暑く、蒸れるという問題だ。呼吸をすると熱気がおでこの周辺に溜まっていき、暑苦しく圧迫感もある。これを仕事中、ずっと装着するのはつらいものがある。新たな壁に試行錯誤する日々の中、代表・大高晃洋氏にあるできごとが起こり、逆転の発想で新モデルの開発を始めた。そして2021年2月に、課題を解決するレイヤードが誕生。多くのテレビ局から問い合わせが殺到し、撮影現場などでも多くの芸能人が愛用する商品となった。

この開発経緯や山あり谷ありの開発・製造秘話まで、代表、大髙氏に詳しく聞いた。

――金型の町工場が、フェイスシールドを開発しようと思ったきっかけは?

【取材協力】

大高晃洋氏
有限会社大高製作所 2代目 代表取締役
本業は工業用ダイカスト金型の設計製造。家族経営の小さな町工場ながら、複数の業界の委員会に所属し、地域のモノづくりコミュニティーにも参加。「製造業を盛り上げます!モノづくりって本当は楽しいよね!」とSNSでも奮闘中。一児のパパでもある。
https://layeredjp.com/
https://twitter.com/otaka_ss_mold

「コロナ禍が始まって間もない2020年4月頃、人工呼吸器やマスクなどの医療機器不足がメディアに流れ、その頃からモノづくりを行う人間として何か役に立つことはないか?と悩む毎日でした。マスクは布製品なので、金属加工屋ではあまりにも分野が違いすぎる、他にないかと色々と調べているうちに、フェイスシールドの存在を知りました。これはプラスチック樹脂製品です。樹脂製品は金型を作り、そこに高温で溶かした樹脂を流し込んで形を作るので、これなら作ることができると考えました。『そうだ、このフェイスシールドの金型を作ろう。感染が広がらないようにしなければ。』と思い、そこからプロジェクトが始まりました」

頭部に固定するモデルのフェイスシールド

――「首掛け」式は他にはない特徴ですが、どんなきっかけで思いついたのですか?

「ある暑い日、フェイスシールドのプレゼンをしました。そしてプレゼンが終わって帰り支度(じたく)を始めたとき、大きな荷物があったので両手がふさがりました。それまでは『暑いから』とフェイスシールドは頭部から外して手に持っていたのを、このときばかりは荷物があるため手で持てませんでした。『頭部に固定するのは暑いからイヤだなぁ…』と思いながら無意識にフェイスシールドを180度ひっくり返した逆さまにして、頭部でなく首につけたのです。そのときは荷物を運ぶことに夢中で、フェイスシールドを首につけたことはまったく頭にありませんでした。

荷物を運び終えて、一息ついたところで、ふと気が付きました。『あれ? そういえば暑苦しくない!』。すぐに社員や家族に『フェイスシールドを逆さまにして首に掛けてほしい』と伝えて装着してもらい、使用感を聞きました。すると全員、口をそろえて『暑苦しくない、これならいいね』と評価をくれました。それまでのモヤモヤとした霧が晴れて、光が差し込んだ瞬間でした」

――テレビ局の担当者から初めて問い合わせがあったそうですが、そのとき、どう思いましたか?

「それまでの本業である金型製作では考えられない、まさに『事件』でした。と同時に、人類未曾有(みぞう)の試練となった、このコロナ禍の重大さも実感しました。『皆が困っている。どうにかして少しでも安全な環境にしたい。それに対して製造業、モノづくりの側から最大限できることは何なのか?』そう考えると、嬉しい、というよりも逆にプレッシャーを感じました」

レイヤード製造工程

―― 一時は、レイヤードのフレームを量産していた工場の火災があったそうですが。

「委託先の工場の改修工事中による火災でした。人的被害がなかったのは不幸中の幸いでした。そして最終的に、弊社の金型は修復することができました。委託先企業も急ピッチで仮設の工場を作ったため生産が再開し、弊社フェイスシールドも無事に製造を再開することができました。

製造する商品はいくらでも作り直しすることができます。しかし事故はいついかなるときでも起こるものであり、他人事ではありません。東日本大震災をはじめとした激甚災害が増え、そのたびに稼働停止した企業も多くあります。もちろん、お客様の希望に沿って供給することがサプライヤーとしての責務です。激動の社会の中でどう柔軟に対応できるようにしていくか? SDGsが叫ばれ、持続可能な社会も必須になってきました。今回のできごとは、こういったことを改めて考える機会となりました」

「フェイスシールドは意味がない」を受けて行った飛沫の実証実験

順調に見えたレイヤードだったが、世間では「フェイスシールドは意味がない」ことが根付く大きなできごとが起こった。大髙氏はこれをどのように受け止め、対応したのか。

「スーパーコンピューター富岳が、2020年8月にフェイスシールドとマスクの飛沫の飛び方をシミュレーションした動画がありました。これはセンセーショナルに報道され、多くの人々に『フェイスシールドは意味がない』という固定観念が根付きました。

しかし、まずこれはあくまでもシミュレーション、コンピューターの演算であること。そして頭部に固定するフェイスシールドが使用されたこと。つまり、弊社の首に装着するフェイスシールドとはまったく状況が異なるわけです。そうなると、自分自身で確認することがメーカーとしての責務と考えました。何の根拠もないものをお客様に勧めるわけにもいきません。

そこでシミュレーションでなく、実際に飛沫の飛ぶ様子を実験し、動画撮影しました。結果的に一般的な物理学の動きの範囲でした。地球には重力があります。引っ張られて下に落ちます。そしてほとんどの飛沫はシートに付着しました。小さなアゴに乗せるだけのものでは、それを充分に受けきれないこともわかりました」

実証実験より

「首に装着する弊社フェイスシールドだと、普通の飛沫は飛び散りませんでした。もちろん、極めて軽い飛沫は一部抜けました。しかし、普通一般的に使われる不織布マスクでも小さな飛沫を確認できました。これらすべてを見える化できました。不織布マスクでは見える化ができません。この実証実験は画期的だったと思います。

人それぞれ、フェイスシールドをつける状況は皆さん異なると思います。その中でどういう対策がいいのか? 詳しくは検証をレポートとしてレイヤードの公式サイトにまとめていますので見てほしいのですが、選択肢の一つとして弊社の首掛けフェイスシールドを選んでいただけると幸いです」

今後の展開

フェイスシールドをはじめとして、顔の表情が見える透明マスク関連は最近、一般にも人気が出てきている。今年4月末にユニチャームの半透明マスクが即売し、フェイスシールドにシールなどで思い思いに飾り付ける“フェイスシールドデコ”が女子中高生の間で流行っているなど、いわゆる業務用途だけでない活用のされ方も出てきた。

こうした状況を受け、今後、どのような展開を図っていくか。大髙氏は次のように話す。

「弊社はあくまでも金型メーカーですので、不織布をからめた商品は現在のところ考えておりません。ただ、需要がある限り、首に装着するフェイスシールドは販売を続けます。

また、フェイスシールドデコの装飾は大歓迎です。自由な発想でどんどん装飾して新たな価値をつけていただきたいです。ライブや子ども相手の体験会など、楽しいイベントが次々と中止になってきました。そういった中で、飛沫対策もしながら装飾することで楽しい雰囲気が作り出せ、コロナ禍で沈んだ気持ちを奮い立たせるものであれば、こんなに嬉しいことはありません」

そして2021年6月18日には、レイヤードの「反射」を抑えた最新モデルのクラウドファンディングをスタートする予定だという。

「コロナ禍が始まって以来、様々なタイプのフェイスシールドが発売されました。目的は、あくまでも飛沫を防ぐことです。しかしどうしても利便性、ファッション性においては二の次になってきました。『目立ってカッコ悪い』『曇ってしまう』『反射してまぶしい』。これらをすべてクリアしたのが弊社オリジナル首掛けフェイスシールド、レイヤードのモスアイシートを採用したものになります。いかに快適でストレスフリーな生活を送るか? 少しでも皆様の生活にお役に立てることを、そしてコロナ禍が一刻も早く収束することを願っております」

売上ゼロからV字回復を果たし、無意識に逆さまにフェイスシールドを装着したことから、他にはない快適な製品を作ることができたというドラマ。より一般的になってきたフェイスシールドは、今後、性能、ファッションともにどのような進化を遂げていくのか。一つの製品として楽しみなところだ。

取材・文/石原亜香利

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