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これから中小企業にエントリーする内定をもっていない学生に伝えたいこと

2021.06.10

■連載/あるあるビジネス処方箋

 就職情報会社のディスコによると、2022年3月卒業予定の大学生の内定率は2021年5月1日時点で前年同月比8.2ポイント増の58.4%に達したという。現時点で内定を得ていない学生は焦るのかもしれない。内定欲しさのあまり、中小企業(主に正社員が300人以下)やベンチャー企業の採用試験にエントリーしようとする学生が増えるはずだ。

 それも1つの考え方かもしれないが、私は積極的にはお勧めはできない。7~9月に中堅・大企業やメガベンチャー企業が何らかの形で採用試験を行うかもしれない。例えば、内定辞退を補う意味での採用試験だ。このあたりの動向を調べて、チャンスがあればひるむことなくエントリーしよう。その結果をみて、10~12月に中小企業やベンチャー企業への対応を考えたほうがいいのではないか。このクラスの企業ならば、秋から冬でも間に合うケースは少なくない。

 まず、下記の図をご覧いただきたい。連載「あるあるビジネス処方箋」ではすでに紹介したが、大切な情報であるのであらためて掲載したい。厚生労働省が新卒入社で3年以内に辞める「離職率」を規模別(従業員数をもとに区別)に年ごとにわけたものだ。社員数が少なくなると、新卒者の入社3年間の離職率がどんどんと上がる。「499人」のところで大きな壁があり、それよりも小さくなると、ぐんと高くなる。「99人」以下では大量に辞めている。

出典:厚生労働省の調査(新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内※の離職率の推移)

 中小企業やベンチャー企業は新卒採用においては、ある意味で危険ゾーンであることがわかる。だからこそ、内定がないからといって安易にエントリーすべきではない。

 なぜ、中小企業やベンチャー企業では3年間で次々と辞めていくのか。私の取材経験から感じ取ることを次にまとめてみた。

1. 新卒採用に力を注いでいない

 大企業(この場合、売上や経常利益、正社員数の総合ランキングで、業界で上位3番以内)やメガベンチャー企業のような人事部が存在しない。あるのは、総務部(課)。人事と総務は、その役割が違う。総務では母集団形成(エントリー者数を集める)をする大企業、メガベンチャー企業のように取り組むことができない。そのような予算、時間、ノウハウ、態勢を持ち合わせていない。これでは、大企業やメガベンチャー企業に入社する優秀な学生を獲得するのは難しい。

 大企業やメガベンチャー企業のように人事部内に採用グループを設け、5人ほどの社員を配置しないと、エントリー者数(プレエントリー)で数万人の母集団形成をするのは不可能に近い。プレエントリーで数万人に達していないと、本エントリーは2000~3000人以下となり、優秀な学生の獲得は困難になる。

2. 定着、育成の仕組みがない

 通常、社員の育成は「採用→定着→育成」の3本柱で成り立つ。つまり、新卒の場合、基礎学力や適性で一定水準以上の人材を獲得し、定着させることが前提になる。この2つの柱が立たないと、育成には進めない。

 私は社員数300人以下の中小出版社や業界紙、IT企業と仕事をするが、このゾーンの会社は新卒は入社3年間で大量に辞める。残るのは、優秀とは言い難い人かもしれない。20代の担当者2人に1人は、仕事の会話ができない。深いやりとりは難しい。30~40代の課長や部長も、業界上位3番以内の企業と比べると、仕事力は5~6ランクは低いように見える。こちらが言いたいことを相当にかみ砕き、柔らかく伝えないと、意思疎通はできない。業界上位3番以内の企業とは、完全に別世界。この人たちが、部下を時間内に育成するのは難しいはずだ。

3. 伸びない仕組みがある

 この中から管理職が生まれる。おのずとチームビルディングができない。結果として、経験が未熟な社員がやりたい放題になる場合もある。私が2016年~20年にみた業界紙(社員数100人以下)では、20代で明らかに経験不足で未熟なのだが、課長や部長のような権限を持ち、無手勝流に仕事を進める社員もいた。この社員に教育をする人がおらず、事実上、「野放し」になっている。誰からも教わらないがゆえに、自分を過信し、傲慢で尊大な物言いをする。そのことを叱責する人もいない。20代後半の時点で、同業界の上位3番以内の会社の同世代の社員の仕事力と比べると、10ランクは低く見えた。

 それでも、自信満々だった。おそらく、外の世界を知らないのだろう。知らぬが仏だ。私が観察する限りでは、中小企業やベンチャー企業の一部にはこんな20~30代の社員が少なくない。

 こういう職場に残ったところで、高い仕事力が身につくとは到底思えない。だからこそ、20代は次々と辞めていくのではないか。離職率が高いのは、当然の結果なのだ。繰り返し言っておきたい。現時点で内定がなかったとしても、まだ、時間はある。ギリギリまで就職活動を続けよう。大企業やメガベンチャー企業は遠い存在ではない。前進してみよう。何かが変わってくるかもしれない。

文/吉田典史


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