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7月1日公開!コリン・ファースとスタンリー・トゥッチが演じるゲイカップルの認知症と美しい愛を描く話題作「スーパーノヴァ」

2021.06.08

■連載/Londonトレンド通信

 先日のLGBT理解推進法案紛糾には驚いた。というのも、最近は映画評さえ性的マイノリティに配慮するからだ。今回の『スーパーノヴァ』でも、「本来ならゲイの俳優を配役するべきだが」との一文がある評を見かけた。

 イギリスだけでなくアメリカなどでも、映画について書く人でさえそれくらいの配慮はする時に、日本の議員は日常的な配慮に至る遥か前で足踏みしている。

 というわけで、『スーパーノヴァ』では、ゲイカップルをコリン・ファースとスタンリー・トゥッチが演じている。
 
 ゲイの俳優が演じるべきかは、ケース・バイ・ケースと思う。ストレートの俳優がゲイを演じるのが、芸の見せどころになるケースもあるからだ。駄洒落みたいになったが、トゥッチ自身も近い発言をしている。だいぶ前だが、ゲスト出演したBBC放映『グラハム・ノートン・ショー』で、かつて演じた『プラダを着た悪魔』(2006)のナイジェル役についてだ。

 グラハム・ノートンは人気コメディアンで、ゲイと公表している。そのノートンが、実はナイジェル役のオーディションを受けていた。「ぼくは本物のゲイなのに!」と悔しがるノートンに、「本物じゃない方が客観的に観察できて上手くいくこともあるから」などとなだめていた。それを実証する、自然にゲイなナイジェルだった。

 『スーパーノヴァ』でトゥッチが演じるタスカーは、ゲイとわかるだけでなく、何か事情のあることもわかる、諦観している雰囲気がある。

 パートナーのサムとキャンピングカーで湖水地方を巡り、知人や縁者を訪ねる旅行中だ。カップルの楽しい旅行というだけではなさそうなのが、何やら重い瞬間があることからも伺える。タスカーは認知症の初期なのだ。こういう旅行はそのうちできなくなると、2人ともわかっている。

 辛そうなのは、むしろサムの方だ。良い旅にしようと務めながらも、悲しみに沈んでしまいそうになる。

 サムはピアニストで、長年、生活を共にした作家のタスカーと、得難いパートナーシップを築いている。それだけに悲しみも深い。

 ファースも、これまで何度かゲイを演じている。中でも同性パートナーを亡くした大学教授役だった『シングルマン』(2009)は、ファースに初のアカデミー主演男優賞ノミネートをもたらした。結局、受賞したのは翌年になって『英国王のスピーチ』(2010)でだったが、前年に受賞していても文句のない名演だった。

『スーパーノヴァ』では、仲のいいカップルというベースのうえに、年輪を重ねた落ち着きの中にも様々な感情をにじませる、トゥッチとファースの演技に引き込まれる。

 ゲイであるという設定が、もう1つ集中させる役割を果たすのが、2人と周囲の関係だ。

 友や親類縁者は暖かくこのカップルを迎える。「孫の顔が見たい」だの「生産性がない」だの言ってくる人などいない。2人の選択を尊重していることが、集う様子から伝わってくる。

 彼らがこの先の2人の選択も尊重するであろうことが、くだくだしい説明を入れずとも察せられ、決定は2人に委ねられる。サムは最後まで自分が介護する覚悟でいる。だが、タスカーには違う決意がある。それはサムには受け入れがたいことだ。

 タイトルとされたスーパーノヴァは、星がきらめき輝く最期の大爆発を指す。

 ゲイカップルとすることで、限りなく純度100%に近い愛の物語にした脚本・監督ハリー・マックイーンは、これが監督2作目になる。

 監督デビュー作『Hinterland』(2014)では脚本も書いたほか、プロデューサー、主演も務めた。この映画以前から俳優としては活動している。

『Hinterland』は幼馴染の男女が懐かしい海辺を訪ねる話で、友達として思い出をたどる楽しさと、大人になった男女として再会するトキメキが描かれた秀作だ。言葉にしない感情まですくい取っていく繊細な表現は、今回の『スーパーノヴァ』にも通じる。イギリスの海沿いを行くロードムービーなのも、イギリスの湖水地方を行くロードムービーの今回と重なる。

『Hinterland』のお披露目は、世界のインディペンデント映画を集めロンドンで開催されるレインダンス映画祭で行われた。登壇したマックイーン監督は当時30歳だったが、まだ学生と言っても通りそうな佇まいだった。映画は高評価を得るも、スター俳優が出ているわけでもなく、題材自体も地味な低予算映画だったせいか、イギリスでの公開にとどまった。

 あれから5年余りを経ての次作が、スター2人を使い、世界中で公開となった。小さな芽が大輪の花を咲かせたようで、うれしい。

7月1日(木)TOHO シネマズ シャンテ 他 全国順次ロードショー
配給:ギャガ
© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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