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31か国6200人以上の企業幹部に聞いたポストコロナ時代における5つのテクノロジートレンド

2021.06.03

昨年から今年にかけて、新型コロナによって世界中がビジネスや生活様式で長く基盤としてきたことが限界やひずみを迎えて大きく変化していった。そしてパンデミック以降、各企業はどう進むべきかを模索している。デジタル、クラウド、セキュリティ領域などを得意とするグローバルな総合コンサルティング企業のアクセンチュアは、数千人規模のグローバル調査を行い、世界のテクノロジートレンドを提示する「Technology Vision 2021」をオンラインで開催した。今年で21回目となる今回は、日本を含む31か国6200名以上の企業幹部を対象に調査して、世界的なパンデミック以降に向けて、「熱望されるリーダーとは、変化を捉えて主導すべき時」をテーマに5つのトレンドとリーダー像を導き出して公開した。

「テクノロジーを活用している企業と活用に出遅れた企業では、収益と成長率の差がコロナ前の2倍からコロナ以後は5倍に広がっています。今後、さらに広がる可能性もあります。2020年にはテクノロジー企業を率いるテクノロジーCEOとそのリーダーシップが重要と発表しました。今年は不確実な状況において、変化に即応して企業の価値を高める現場のリーダーたちは、今までの現場のリーダーとは異なる新しいタイプのはずで、それはどんな人材なのかにフォーカスしていきたいと思っています」(アクセンチュア/山根圭輔氏)

「Technology Vision 2021」では、5つのトレンドについてそれぞれ3つのステップで紹介。1つ目のステップは「Fortify(フォーティファイ)」という要塞化を意味する単語。コロナ禍で重要性が増したテクノロジーや将来のビジネスのためのテクノロジーを見極めて、そこを要塞のようにしていく。2つ目のステップは「Extend(エクステンド)」という戦略の拡張。テクノロジーの特性と業界独自の専門性を組み合わせて、さらに拡張していくこと。最後のステップが「Reinvent(リインベント)」という未来を再発明することで、いままで考えていなかった新しいパートナーや新しい顧客との未来の創造を要塞化と戦略の拡張の上でやっていくこと。この3つのステップに加えて、具体的な企業の事例や各トレンドに合ったリーダー像も発表した。「テクノロジーのリーダーシップだから、当然テクノロジーの人だと思うかも知れませんが、実はそうじゃないところにポイントがあることをお話します」(山根氏)

今回のスピーカーであるアクセンチュアのテクノロジー コンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ/日本統括マネジング・ディレクターの山根圭輔氏。昨年はテクノロジーCEOという考え方を発表。「企業と企業の考えるテクノロジーのレベルと一般市民が利用しているテクノロジーのレベルに大きな差異があってクラッシュしてしまうことをテッククラッシュと言います。それを起こさないためには、テクノロジーを理解してリーダーシップを発揮するテクノロジーCEOが重要です」

そして以下が5つのテクノロジートレンドとリーダー像になる。

トレンド1「Stack Strategically(テクノロジーの戦略的集約)」

「テクノロジーが業界の未来を左右し、技術選択の積み上げをほとんどの企業が重要であると答えています。一方でテクノロジーが組織の戦略や企業の目標と必ずしも整合していないと言っている企業が6割も存在します。これは目標とテクノロジー戦略が整合していない状況です。マイクロサービスやクラウドのような新しいアーキテクチャーを実行するには、今までのシステムと同様の手当てや準備では難しいところにきています」と山根氏は語る。そこで「Fortify」として、レガシーシステムから脱却してクラウドやマイクロサービスで適応性と再利用性とコネクティビティを強化できるような適用性の高い技術基盤を固めて変化に備える。その上で「Extend」として技術と事業の戦略を拡張して競争優位を獲得。「Reinvent」としては、競争を超えてデジタル体験の意義そのものをまったく違うコミュニケーションやサービスとして再発明していく。

そのテクノロジーの戦略的集約の成功例としてはPayPay、三越伊勢丹などが挙げられた。

PayPayは3か月という圧倒的な短い時間で構築され、約2年間で3300万人のアカウント規模に拡大。これを支えたのはAWS上で作られたマイクロサービスによる迅速な開発、それを実現するための基盤と要塞化へ完全に舵を切ってやったことだと言う。三越伊勢丹は「Fortify」として適応性の高い技術基盤を固めることを事前に行ない、基幹システムのクラウド化と平行して新規顧客のフロントシステムと連携が安易な構成を模索。その上で「Extend」としてさまざまな試行錯誤にトライして、今は「Reinvent」という形でリモートショッピングや「REV WORLD」と言われるバーチャル空間でのECなどデジタル体験の意義を再発明するようなアクションが取れるようになっている。こうした新しい考え方や新しいプロセス、新しいテクノロジーや概念が必要になってくる時のリーダー像としては、DeNAの南場智子氏を挙げている。
「インフラの完全クラウド化を推進すると発表しましたが、これでインフラエンジニアとシステムエンジニアがインフラにかけていた時間を圧倒的に短くして、システムエンジニアが新しいものに時間を使ってチャレンジできる仕組みやプロセスを作りました。これによってインフラエンジニアも働きやすい環境ができていると思います。これがDeNAのテクノロジーの戦略的集約で、そこに着目したところが人を中心に未来像を描いて技術を選択したリーダーだと考えました」(山根氏)

トレンド2「Mirrored World(ミラーワールド)」

ミラーワールドとは、工場など物理的なものをデジタル空間にコピーしてシミュレーションできるようにすること。リアルワールドは、工場だけでなく周囲の環境や構造物、人々やサプライチェーンなどさまざまなもので構築されている。ミラーワールドは、リアルワールドに対する本当のミラーを作っていこうとする取り組みのこと。そのための「Fortify」として強固なデータ基盤を築いて予測結果の信頼性を高める。「Extend」としてはミラーワールドでノーリスクな形でシミュレーションを繰り返す。「Reinvent」では未来を共創できるパートナーをミラーワールドに引き込んで一緒に変革していく。

「データの集積は、過去のデータを集めれば完了する時代ではありません。パンデミックが起こった時、わずか1週間でAmazonの検索キーワードのトップ10が新型コロナ関連に急変しました。先の見えない未来を予測するためには、過去のデータだけでなく、リアルタイムのデータや特殊な環境に特殊な環境を組み合わせることで生まれる合成データをベースに分析したりAIを育成していくことが必要です」(山根氏)

 ミラーワールドを構築するためには、データを標準化して企業間を超えたデータの連携を妨げないことが必要になってくる。Volkswagenほか25社は、自動運転のための検証・承認のために過去のデータや異常気象などの例外データも作ってデータを集めて共有化している。鹿島建設では、リアルタイムデータとしてIoTのセンサーやカメラのデータを集めて可視化して現場の遠隔管理を実現。他にも国土交通省が中心となって業界を超えて行われている3D都市モデル「Project PLATEAU」も例として挙げられた。ミラーワールドならリアルな実験が難しいライフサイエンスの領域でもノーリスクで実験ができる。大阪大学では、ガンの遺伝子情報と細胞をシミュレーションしてミラーワールドを構築。それをベースに投与した薬剤が活性化するのか予想することが可能になった。

「試験管の中で実験するin vivoの世界や細胞・生体で実験するin vitroの世界でやっていたものが、いまやコンピュータの中であるin Silicoで実験することも選択肢になっています」(山根氏)

ここでリーダー像として挙がったのは、台湾行政院政務委員デジタル担当のオードリー・タン氏だ。コロナ禍でマスクの在庫をオープンAPI化した「マスクマップ」や「E-マスクシステム」を構築し、日本でも人気が高いリーダー。ピックアップした理由は、データの透明性と重要性を重視する言動。

「インタビューを受ける時に自分自身も撮影して、マスコミュニケーション時の透明性を担保しています。データの透明性をアピールし、データの力を信じて他者に伝えることができる。これも新しいリーダーシップだと思います」(山根氏)

トレンド3「I,Technologist(一人ひとりがテクノロジスト)」

「民主化されたテクノロジー」を武器に誰もがデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進してイノベーターになれる時代に突入していると山根氏は語る。その事例として、神戸市のコロナ関連の情報提供アプリを市の職員がひとりで構築したエピソードを紹介。このアプリによって、市のコールセンターへの問い合わせが4万件/日から3000件/日に減少して市民のニーズに応えたという。一方で大流行したEUC(END UESR COMPUTINGの略。プログラマーや技術者でなくてもアプリを作成できるシステム)については、現場で展開されて生産的にいろいろなものが作られたが、IT部門がタッチせずに展開していたことで新しいテクノロジーに移行しようとしたときに大きなボトルネックになって難しい課題になっているケースも多いという。

「テクノロジーはシステムでも何でも錆びていきますが、これをどうやって持続可能にしていくかが非常に重要なポイントになります」(山根氏)

「Fortify」はガバナンス機能を備えたDX基盤を構える。「Extend」として非IT社員にIT教育を施してDXに向けた戦力として拡大する。「Reinvent」では現場主導のDXを持続可能にするためにIT部門がどういう風に役割を担うかデザインしていく。オーストラリアのウェルスマネジメント会社のIOOFは、IT社員と非IT社員がペアを組んで2週間のコンペティションを開催し、IT開発の面白さだけではなく難しさもキャッチアップして伝える。これができれば分散してさまざまなところにDXが広がっても自立持続可能なDXに生まれ変わるという。ヤンマーでは、全社員がシステムエンジニア化するという発想の転換を掲げて、「IT部門の前線化」という標語でビジネス状況をIT部門のメンバーが把握するような動機付けをして組織のデザインを変えた。

ここではリーダー像として83年にグラミン銀行を創設してノーベル賞を受賞したムハマド・ユネス氏が挙がった。「マイクロクレジット(無担保少額融資)」を貧困者に提供して自立を支援したことで有名で、企業支援のプログラムを支えてエバンジェリストとして新しいチャレンジの根が着く土壌を育てたリーダーとして評価された。

トレンド4「Anywhere,Everywhere(あらゆる場所が仕事に)」

コロナ禍によってネットを最大限に活用して、あらゆる場所が仕事場になる働き方に移行したが、この動きはパンデミック後も完全には元へ戻らないはずと山根氏は語る。「Fortify」として新しい仕事場は、パンデミックの暫定対応から恒久的戦略へ技術的基盤を作り込む必要がある。「Extend」は、新しい仕事場を新しいチャンスとして捉えて扱う。「Reinvent」では新しい仕事場と働き方に新しい文化を適合できるか取り組むことが必要になってくる。

マイクロソフトでは「Workplace Analytics」を構築して、従業員が新しい仕事場でどんなレベルでどういうコミュニケーションしているかを可視化して稼働状態を認識し、ニーズにあった施策ができる取り組みをしている。同志社大学はリモート環境において、すべてのトラフィックを信頼せずに検査・ログ取得を行なうゼロトラスト型セキュリティの構築を始めている。

海外ではStripeがリモートワークで働く人だけが入れる仮想オフィスを立ち上げて、これによって入社希望者が圧倒的に増えているという。日本ではGMOペパボリモートワークを基本とする働き方へと移行し勤務地条件を撤廃。これによって地元に戻っていた元社員の再入社希望が増えた。こういう取り組みで新しい人材を確保する時代になっている。リーダー像としては、Linuxカーネルの最終的な調整役として有名なリーナス・トーバルズ氏が挙がった。「優しい独裁者」と呼ばれ、オープンソースのコミュニティで世界中に分散している4000人以上のコントリビューターと意見のやりとりをしながらコミュニティをまとめることができるリーダーシップの持ち主だ。

トレンド5「From Me to We(「個」から「全体へ」)」。

アクセンチュアの調査によると新型コロナによって75パーセントの企業がネガティブな影響があると回答。今後、同じような危機があった時にどのように乗り越えていくかという問いには、90パーセントのエグゼクティブが企業が業界を横断したデータ活用が可能になるマルチパーティシステム(MPS)が対応力を向上させれば、変化があったとしても強みやチャンスに変えていけるのではないかと答えている。「目指すべきは自立した参加者が適材適所をおぎなって、利益の最大化をそれぞれで行なえる自立共生的なエコシステムです。そういったMPSを作っていく必要があります」(山根氏)

「Fortify」としてはクラウド変革が絶対に必要で、クラウド上での新しい機能や方法を組み合わせて変化に対応する。「Extend」ではマルチパーティによるパートナーシップに変えて、さまざまな業界の運営方法に根ざした変革をMPSの中で構築していく。「Reinvent」として、ポストパンデミックでは新しい価値観や変革が加速していく中でも入りやすい素地があるからチャレンジできる。シンガポールはブロックチェーンベースのデジタルウォレットの仕組みを使って、プライバシーを配慮した上で個人医療情報を関係機関に迅速に共有化。この成功で今後のワクチン接種や入国管理などにも利用される予定だ。

「個から全体へというトレンドを引っ張っていくリーダーとしては、人ではなくTEDという仕組みをフィーチャーしました。TEDは約190か国2500都市以上で行なわれているリーダーのアイデアを伝えるための取り組みですが、仕組み自体が標準化されてイベントルールやコンテンツのガイドラインなどを網羅的に整備して精神を引き継いだ形のイベントが自律的に拡大しています。中心となるリーダーがやっている訳ではなく、自己組織化的に表現・拡大できる仕組みがデザインされていて、自律的に広がっています。これが非常に重要なポイントだと思っています」(山根氏)

今回の発表で提示されたトレンドとリーダー像に共通しているのは、従来のようにトップダウンですべてを決めるのではなく、自由と制約を設けることで多様性を担保しつつ自律的な創発・エマージングが起こる仕組みを作り出せることだという。「変化に即応できる仕組みを作ることによって、不確実で先が見通せない状況を危機ではなくチャンスに変えることができます。いま世界はチャンスにあふれているのではないかなと思います。そういうチャンスをひっぱれるリーダーを我々は探したいと思っています」(山根氏)。

コロナ禍以後は、今回の5つのトレンドと新たなリーダー像に注目したい。

取材・文/久村竜二

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