
この春、ロサンゼルスに朗報が響きわたった。
”LOS ANGELES HAS BECOME NO-KILL”
こんな見出しが人々を騒がせる。
ロサンゼルスは、保護したどうぶつたちの殺処分をしない。殺処分を認めない。どうぶつの存命率90.4%(*)殺処分ゼロの全米初の大都市として認定されたのだ。
(*)どうぶつ愛護施設に保護されたどうぶつたちの性格、行動や健康状態の面で問題を抱えており、社会に適応できないと判断された場合は、人道的な環境と手当のもと安楽死になる。
ロサンゼルスで、”NO KILL LOS ANGELES”( NKLA / 殺処分ゼロ)の公約が打ち出されたのは、2003年のこと。
それまでロサンゼルスは、多くのどうぶつたちの尊い生命を奪ってきた大都市という黒歴史がある。NO KILL LOS ANGELESの公約を打ち出して以来、殺処分率は徐々に低下してきたものの、当初、どうぶつ保護団体により保護されたどうぶつたちが生存できる比率はたったの56%程度。NKLAが掲げた目標から、ほど遠いものであった。
そこで、ロサンゼルス市長とどうぶつ保護団体ベストフレンズが”ADOPT SAVE THEM ALL” (保護と全救出)というスローガンを掲げて立ち上がることに。”Together, We will save them ALL!! ”(共に、全救出を目指そう!)との声に共感した各団体、各教育機関、専門家、各界の著名人やセレブレティー、メディア、ボランティアらが一丸となり、アニマルウェルネスの意識の向上に向けて決死の努力をしてきた。
ロサンゼルスの公共の場にはアダプトペット(里親になろう!)の文字が並び、週末になると、必ずといっていい程、アダプションイベントやファンドレイジングイベントが開催される。その中でも、群を抜いて、リードしてきたのは、ウエストハリウッドである。
食やファッション、ライフスタイルなどトレンドの発信地として、世界的にも知られている華やかな街ウエストハリウッドは、コミュニティーのアニマルウエルネスへの関心度が非常に高い。これまでにも、ペットショップでの生体展示販売の禁止。悪質な繁殖業者やブリーダー、子犬工場を街から追放するミル・バン・Mill-Banの法律制定となった最初の街としても知られている。また、猫の抜爪手術、毛皮販売の禁止を訴えるムーブメントを起こしてきた街でもあるのだ。
(*)ロサンゼルス、サンフランシスコ、サクラメント、サンディエゴをはじめとするカリフォルニア州にある36都市では、悪質な繁殖業者やブリーダーなどを街から追放するミル・バン(Mill-Ban)という法律制定がある。
ロサンゼルスでは、ペットショップで犬、猫、ウサギなど生体展示販売を禁止している。ペットショップでは、里親を待つ犬、猫、ウサギたちがケアーされており、アダプションをする場として運営されている。また、キャットカフェやドッグカフェでは、新しい家族との出会いを待つ犬や猫たちのマッチングの場としてオープンしており、コロナ禍現在のキャットカフェでは、アウトドアパティオでカフェを楽しむことができる。
パンデミック中は、各どうぶつ保護団体によるオンラインアダプションやペットマッチングAPPでのアダプションプロセスが主流だ。家で過ごす時間が長くなったこともあり、フォスターファミリーとして貢献したいと申し出る家族や新しい家族を迎えたいといった里親希望者も増えて、愛護施設で暮らす多くのどうぶつたちが新しい家族のもとへと引き取られていった。
しかし、パンデミック中に加速したペットブームの裏では、トレーニングが難しい。マーキングをする。トリミング代がかかるなど、現実と直面した飼い主らの様々な声が聞こえてくる。また、リモートワークから通常のオフィスワークへと移り変わり、愛犬、愛猫と過ごす時間がとれなくなった。減給や失業などが原因で金銭的な余裕がない。家賃を払うことができず、引っ越さなければならないといった理由でペットを手放す人が増えているのも現状だ。
筆者は、2018年の6月のペットコラムで”ペットの殺処分にNO! ロサンゼルスのNO KILLムーブメント最新事情” に飼い主が飼育破棄をする理由も記したのだが、また、それが繰り返されるのではないかと不安にもなっている。
そこで、長年、ASPCA(American Society for the prevention of cruelty to animals / アメリカ動物虐待防止協会)のボランティア活動に携わり、アニマルウエルネスの案内人として、日本から数々の視察ツアーと携わってきた明子・ジェネウエインさんに今のこの現状を伺ってみたので、次回に紹介するとしよう。
Together, We will save them ALL!!
共に、全救出を目指そう!
ロサンゼルスの街のバス停留所にもNO- KILL LOS ANGELESのポスターが。ロサンゼルスを殺処分ゼロの街にするというモチベーションとプロモーションが盛大に行われている。あらゆる公共の場でNO- KILL LOSANGELESのポスターやビルボボードが目に留まる。
週末になると様々な場所でアダプションイベントやファンドレイジングイベントが開催される(写真は、コロナ禍以前のもの)。写真は、週末の朝、愛犬と一緒に参加するファンドレイジングのウォーキングイベントの模様。ボランティアの協力と大手の車メーカー、ペットメーカー、ウエルネス&ヘルスメーカーらがスポンサーとなり、ファンドレイジングイベントを支えている。
一時期、筆者の家の花壇は、ウサギの捨て場と化していて、毎朝、愛猫が花壇に捨てられた子ウサギを発見するという異常事態に。我が家では、ウサギを引き取ることができないのでノーキル保護施設に引き取ってもらい、その後、新しい家族ができたと聞いて一安心っ。
Photo: Hale Davis
白井朝美のプロフィール:
米国大学在学中にダンサーに。NY拠点にダンサーとして活動後、多種多様な業界を渡り歩いた元・3ヶ月坊主の ジョブホッパー。米フォーチュン500企業の最も働きやすい企業に籍を置いたのち、アメリカが選ぶ最高の雇用者としてトップに君臨する大手小売企業に〈祝〉現職!ライター、ライフスタイルリサーチャー、ブランドアンバサダーとしても活躍。ランニング、ヨガ、ダンスとネコと自由を謳歌する自由人。https://morningbeauty917.wixsite.com/mysite