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入管収容所の内情に迫る!日本人が知らない日本の欺瞞をトーマス・アッシュ監督が描いたドキュメンタリー映画「牛久」

2021.06.03

■連載/Londonトレンド通信

 6月6日まで開催のニッポン・コネクションで、トーマス・アッシュ監督のドキュメンタリー映画『牛久』が世界初上映される。

 ニッポン・コネクションは、ドイツ、フランクフルトで開かれる世界最大規模の日本映画祭。第21回となる今年は、コロナ禍で昨年に続きオンライン開催となる。

 アメリカ人のアッシュ監督は、日本を撮り続けてきた。原発事故後の福島を撮った複数の作品、ガンに侵された日本人主婦が亡くなるまでの1,287日の記録『-1287』(2014)、世界最大級のゲイタウン新宿二丁目で男性相手に性的サービスをするボーイたちの内側を探る『売買ボーイズ』(2017)など、日本の様々な顔を切り取ってきた。

 今回の『牛久』は、茨城県牛久市にある入管収容所の内情に迫るものだ。だが、アッシュ監督はごりごりの社会派監督ではない。それよりもまず優れた聞き手だ。それが、個々人の物語を引き出し、時に隠されていたものまで浮かび上がらせる。

 ドキュメンタリーの対象は、寄り添ってくれるアッシュ監督に、次第に内面を明かしていく。死期の迫った主婦が打ち明けたのは、夫との埋めようがない溝であり、仕事と割り切ってゲイの相手をしているストレートのボーイの何気ない言い回しから、差別意識までがあぶり出される。

 『牛久』で多数の証言から暴かれるのは、日本の酷い欺瞞だ。

 牛久の入管収容所は、内部撮影禁止になっている。登場する内部の映像は、隠し撮りされたものだ。ガラスで仕切られた面会室は、刑事ドラマでみる犯罪者の面会室にそっくりだ。

 収容されているのは、犯罪者ではない。家を焼かれ、家族を殺され、戦火を逃れてやってきた人、迫害されている少数民族の人など、危険な故郷では暮らせず、日本で難民認定を得ようとする人たちだ。もちろん、彼らの了承を得て、記録をとっていくアッシュ監督に、彼らは電話してくるようにさえなる。日本で知りあいがいない人もいるから、面会に来てくれるアッシュ監督を頼るのも無理はない。

 「犯罪者には刑期があるが、自分たちにはそれさえない」と言う人がいるように、いつまで収容されるかさえ知らされず、数年経ってしまうケースもある。痛い、苦しいといった訴えが、無視されることもある。最近、名古屋入管でまだ若いスリランカ人女性が死亡したニュースがあったが、この映画を観ると、起こるべくして起こったことのように思える。

 ハンガーストライキをして、十数キロも体重を落とし、危険な状態になってくると、仮の処置として短期間出されるが、結局、また収容される。そんなことを繰り返すうちに鬱を患ったり、自殺を図る者もいる。明らかな人権侵害が、撮影禁止とされた場所で起こっている。

 アッシュ監督が訪ねる石川大我議員が、その状態を問題視して、国会で質問するシーンがある。だが、杓子定規な答えが繰り返されるばかりで、はっきりした約束はなされない。

 映画は、日本が難民受け入れを明言していることにも触れている。その実、難民認定率0.4%、ほぼ受け入れていないも同然だ。希望を抱いて、日本にやってきたのであろう彼らが、気の毒でならない。

文/山口ゆかり

山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

編集/福アニー

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