
日本フィンランドむし歯予防研究会「唾液と口腔のコロナ禍前後の変化」に関するアンケート調査
今やマスクは外出時の必携品。下手すれば、一日における活動時間のほとんどを顔の下半分が隠れた状態で過ごすことさえあるだろう。
こうした長引くマスク生活の弊害がこのほど、日本フィンランドむし歯予防研究会(JFSCP)が実施した「唾液と口腔のコロナ禍前後の変化」に関するアンケート調査によって明らかになった。
なお本調査は、全国の歯科衛生士200人を対象に実施している。また、羽村章JFSCP理事長から刺激唾液の重要性と、予防歯科の世界的権威であるトゥルク大学名誉教授カウコ・マキネン氏に聞いたフィンランド式オーラルケアについても、併せて紹介していく。
歯科衛生士の7割以上がコロナ禍前と比べて“唾液が少ない・口の中が乾いている患者さんが多い゛と回答
コロナ禍前と比べて、「唾液が少ない・口の中が乾いている患者さんが多い」と感じている歯科衛生士の割合は、7割を超えた(71.2%、図1)。また、過半数(52.3%)が「口の渇きに関する悩みを打ち明けられることが増えた」と回答しており、実際に患者さんも口の渇きを感じて悩んでいる様子が伺える(図2)。
コロナ禍前に比べ、口腔状態の悪化を感じている歯科衛生士は6割以上
患者さんの口腔状態はコロナ禍前と比べてどうなっているのだろうか。「歯ぐきの腫れやむし歯など、患者さんの口腔状態が悪化している」と感じているか聞いたところ、6割以上(61.2%)が感じていると回答した(図3)。
「口臭」の増加は6割、「唾液のネバネバ」は歯科衛生士の過半数が感じている
「口臭」、「唾液の状態」についても聞いたところ、コロナ禍前に比べて「口臭が気になる患者さんが増えた」と感じている歯科衛生士の割合は6割(60.7%、図4)、「唾液がネバネバしている」と感じている割合は5割を超えた(52.2%、図5)。
羽村章JFSCP理事長コメント
日本フィンランドむし歯予防研究会理事長
羽村章先生
日本歯科大学生命歯学部教授。日本歯科大学歯学部卒業。フィンランドトゥルク大学歯学部う蝕学教室に客員講師として留学、「キシリトールの父」と呼ばれるアリエ・シェイニン教授に師事。1997年日本フィンランドむし歯予防研究会を立ち上げ、理事長に就任。日本におけるキシリトールの普及に尽力。一般社団法人日本歯学系学会協議会理事長
■咀嚼で刺激唾液を増やして口と体の健康に
<マスク生活で刺激唾液が減少>
今回の調査結果から、刺激唾液の減少により口腔の健康状態が悪化していることが推察されます。唾液は唾液腺から分泌される体液で、刺激の有無により安静唾液と刺激唾液の2種類※に分類されます。そのうち匂いや味覚、噛む、顔の動き、温度などの刺激によって分泌される刺激唾液がコロナ禍のマスク生活で少なくなっている可能性があります。
マスク生活では唾液を分泌させる刺激が少なくなりがちです。笑顔を見せることや会話をすることが少なくなり顔の筋肉を動かす機会が減る、さらにマスクを外すことを躊躇し水分を摂るタイミングを逸して、刺激に加え水分不足が刺激唾液の分泌不足の原因になると考えられます。
調査で多くの歯科衛生士が患者さんの「唾液がネバネバしている」と感じていることでも、サラサラとした刺激唾液の割合が減っていることが推測できます。
※安静時唾液~特別な刺激がなくても、絶えず分泌されている唾液。年齢に伴い、分泌量は変化する。ネバネバしている。
※刺激(反射)唾液~匂いや味覚、噛む、温度などの刺激によって分泌される。サラサラしている。
<刺激唾液の役割>
刺激唾液は口腔の湿潤状態を保つだけでなく、健康を維持するためのリゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリンなど抗菌作用のある物質が多く含まれています。通常はこれらの物質によって口腔細菌の増殖が抑えられ口腔の健康が維持されています。
しかし、刺激唾液が少なくなることで口腔の自浄作用が低下して、むし歯や歯茎の腫れ、口臭といった口腔健康状態の悪化を招きます。また、ウイルスや細菌などの侵入を防いで感染症予防に効果のある唾液中のIgA(免疫グロブリンA)は、刺激により濃度や量が増えることがわかっています。
<刺激唾液を増やすには、まず咀嚼>
刺激唾液の分泌には咀嚼が最も有効です。よく噛んで食事をすることで咀嚼に味覚への刺激も加わり、刺激唾液がより多く分泌されます。食事以外でもチューインガムを利用することにより、刺激唾液を常に口腔内に分泌させることが出来ます。
特にキシリトール配合ガムであれば、咀嚼と甘味で刺激唾液の分泌を促進でき、むし歯発生のリスクも低減させます。キシリトールを国民の健康増進に生かす実用的な研究が長年続けられてきたフィンランドでは、キシリトール配合ガムがオーラルケアの1つとして根付いています。
コロナ禍の今、口腔の健康を保つ他、感染対策にも大切な刺激唾液の分泌を減らさないよう咀嚼を心がけ、また改めてキシリトール配合ガムの有効性に注目してほしいと思います。
トゥルク大学名誉教授(フィンランド)カウコ・マキネン氏からのメッセージ
トゥルク大学名誉教授
カウコ・マキネン先生
1975年にキシリトールのう蝕予防効果を発見。キシリトールのメカニズムを研究する生化学者として、現在でもフィンランド国内外で調査研究に取り組む。
■予防歯科先進国のオーラルケア事情
<フィンランドのオーラルケア~主役はキシリトール>
フィンランドでは、様々な研究のもと、保健センターで歯科医師や歯科衛生士がキシリトール摂取を推進、1970年代より学校や幼稚園などにおいて、食後の子供たちのキシリトールの積極的な摂取が一般的となりました。
フィンランドの多くの幼稚園では、ランチの後、先生が園児一人一人にキシリトールタブレットを配布し、みんなで摂取する光景が見られます。そうすることによって、幼い頃から食後のキシリトール摂取の習慣づけをすることができるからです。そして、子供たちを通じて、食後のキシリトール習慣は家庭にも広がっていきました。キシリトールの摂取、特に食後の摂取の習慣は歯の健康を保つ上で非常に重要だと証明されています。その結果、フィンランドはむし歯がほとんど確認されない「むし歯予防先進国」に変貌を遂げました。
COVID-19は私たちの生活を一変させ、ここフィンランドでも手指の消毒やマスク着用が推奨されています。そういった状況下でも、フィンランドでのキシリトール摂取の推進に変更はありません。キシリトール、特にガムやタブレット摂取は唾液分泌につながり、唾液が免疫力を高めるのに役立つことは、国民には当たり前のように認知されているからです。キシリトール製品は歯の健康を保つため、安心して摂取することができます。
フィンランドでは、近年、キシリトール原料の生産が再び活発化しています。2019年に新しい生産工場を建設、稼働させ、まもなく生産が始まります。潤沢な原材料を得て、キシリトール市場はますます活気を再び帯びることになると確信しています。
<調査概要>
表題:唾液と口腔のコロナ禍前後の変化に関するアンケート調査
調査主体:日本フィンランドむし歯予防研究会
調査実施:株式会社マクロミルのアンケートツールQuestant(クエスタント)を使用
調査方法:アンケート調査(インターネット調査による)
調査期間:2021年4月23日(金)~26日(月)
調査対象:歯科衛生士201名
備考:結果の構成比は四捨五入しているため、構成比の和が100%にならない場合がある。
出典元:日本フィンランドむし歯予防研究会
構成/こじへい
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