世界一を目指すトップアスリートたちが〝本当の実力〟を出せるよう、各メーカーも〝世界一の技術〟を目指して技術競争にしのぎを削っている。そしてその技術の粋は、後に私たち一般人でも恩恵にあずかることができる。
スポーツとテクノロジーは密接な関係にある
ナイキの『ズーム ヴェイパーフライ4%』、そしてそれに続く後継モデルたち──いわゆる〈厚底シューズ〉など、メーカーが技術の粋を集めて開発した製品が新記録を生み出すのは珍しいことではない。世界中のトップアスリートが一堂に会するスポーツの祭典の五輪は、こうした〝技術の最前線〟が集結する場である。
マラソンの名解説者でも知られるスポーツジャーナリストで、84年ロサンゼルス五輪の代表でもある増田明美さんは、五輪観戦に新たな楽しみ方が生まれていると指摘する。
「今、スポーツは〝科学と技術と選手の成長〟の時代を迎えています。私が現役の頃のような〝汗と涙と精神論〟の時代ではありません。アスリート本人だけでなく監督や専門スタッフ、メーカー……最先端の技術を持った職人たちがひとつのチームになってスポーツを作り上げています。選手のパフォーマンスだけでなく選手の道具にはどのようなテクノロジーが使われているのか、その道具を使いこなすために選手がどんな努力をしたのかも見逃せないんです」
トップアスリートをサポートするスポーツテックを実際に手に取ってみると、新たな世界が広がるだろう。
競泳・池江璃花子 × ミズノ GX・SONIC NEO
奇跡の復活を成し遂げた池江の〝オモテ〟にあるテクノロジー
白血病と診断されてから2年余り。病気を乗り越え復活を果たした池江選手を支えたのはミズノが開発した新しい水着『GX・SONIC NEO』だった。伸縮性と撒水性を兼ね添えた特殊な布地を使用し、前胸部は裏地がなく伸びやすい構造となっており、池江選手が水着に求めているといわれる肩甲骨の動かしやすさを、技術面でサポートしている。
ミズノ『GX・SONIC NEO』男性用:3万800円 女性用:4万3780円
安定して速く泳ぐためには、腰を高い位置に保ち水面に対してフラットな姿勢をとることが重要となってくる。ミズノは選手がレースの後半には下半身が沈み込んでいることに着目し、ハムストリングスをサポートし沈み込みを抑制するデザインを取り入れている。
今年4月、競泳日本選手権に出場した池江璃花子選手は100m自由形を含む4種目で優勝し、東京オリンピックのリレーメンバー代表に内定した。
取材・文/峯 亮佑 写真/朝日新聞社/getty images、アフロ