
ゴジラや特撮に興味のなかった友人がこう言う、「今やってるゴジラのアニメ、面白いよね」。
ゴジラや特撮に興味のなかった別の友人が「ゴジラ・ザ・ライド」に乗ってこう言う、「最高!あの怪獣はどういう怪獣?」。
なんかきてる感じがするのだ、ゴジラ。
5月14日公開予定だったが残念ながら再延期となってしまった『ゴジラVSコング』の穴を埋めるように、”ブレイクスルー力”を持ったコンテンツが続々と出揃ってきているゴジラ界隈。
DIME読者にも、このタイミングでぜひゴジラ・コンテンツを楽しんでほしいという想いを込めて、最新のゴジラ事情をお届けしたいと思う。
西武園ゆうえんち「ゴジラ・ザ・ライド」
5月19日にリニューアルオープンした西武園ゆうえんち。「昭和の熱気を遊びつくそう!」をテーマに、園内に昭和30年代頃の商店街を再現し、あえて古いアトラクションを残すなどの尖ったリニューアル方針で生まれ変わった。そのリニューアルの目玉となるアトラクションが、「ゴジラ・ザ・ライド」だ。
映画監督の山崎貴氏が制作に協力した本作、CMだけ見るとどんなアトラクションなのかいまいち伝わってこないのだが、これがめちゃくちゃ凄かった。目の前の全面スクリーンに映るゴジラ、キングギドラ、ラドンら怪獣の襲撃に合わせて、座席が動き、風が吹く。その構造自体は決して目新しいものでは無いのに、その完成度と衝撃度が半端なものではない。もう一度言う、半端じゃない!
ここまでの臨場感、そして怪獣の巨大さとかっこよさをダイレクトに伝えたコンテンツは過去になかったと断言できる。何より、ゴジラを知らない人にも、その魅力を直接身体に叩き込む一撃の”ブレイクスルー力”は筆舌に尽くしがたい。絶叫が巻き起こり、自然と拍手が起こる回まであった。これだよ、これぞ怪獣映画!
叫んじゃうほど激しく、笑っちゃうくらい凄い5分間。しかも別料金の類が必要ないため、一度入場すれば何度でも楽しむことが可能なのも「ゴジラ・ザ・ライド」の男前なところ。惚れてまう。
まだまだ「今すぐ、見に行ってほしい」とは言いづらいご時世だけど、いつか必ず体験してほしい。
ゴジラ・ザ・ライドだけでなく、昭和の街並みを再現した「夕日の丘商店街」もかなりの凝りっぷり。住みたい。
限定ソフビ2種と贅沢に用意されている(筆者私物)。デザインの方向性はオーソドックスなゴジラのアップデート版といった趣で、アトラクションに乗ったら絶対欲しくなる。絶対に。
ゴジラS.P<シンギュラポイント>
現在、Netflixで配信中、TOKYO MXほかで放送中のアニメ作品『ゴジラS.P』。実は、意外なことに国内でのゴジラのTV放送アニメシリーズは史上初となる。
スタジオジブリ出身の高橋敦史氏を監督に、SF作家の円城塔氏をシリーズ構成・脚本に迎え、「ゴジラであれば、何をやっても良い」というオーダーの下、SF的センスが炸裂した新感覚のゴジラ作品となっている。
この作品の面白いところは、ゴジラの「解体・再構築」に成功している稀な例だということだ。ゴジラに限らず、長い歴史を持ち、支持を集めてきた作品の続編というのは、それまでのシリーズから逸脱するのが難しく、ある種の縮小再生産ないし、閉鎖的な世界観に埋没してしまうことが少なくない。その点で、『ゴジラS.P』には良い意味での「めちゃくちゃさ」が存在し、そこが心地よい!
たとえば、今作のゴジラは「進化」する。最初は水棲生物、次が四足歩行、そして最終的には我々のよく知る二足歩行のゴジラへと変貌することが示唆されている。これ自体は『シン・ゴジラ』(2016)でも使われた手法だが、今作のゴジラはそれぞれの形態が「ゴジラシリーズに登場する他の怪獣の姿」をとっているという特徴がある。つまり、水棲生物形態の「ゴジラ・アクアティリス」は、『メカゴジラの逆襲』(1975)に登場したチタノザウルスに、四足歩行形態の「ゴジラ・アンフィビア」は、『大怪獣バラン』(1958)などに登場したバランに酷似している。え、「他の怪獣からゴジラに進化する」なんてアリなの…?『ドラゴンボール』で言うと、クリリンからヤムチャになって、最終的に悟空になるようなもん。この、ある意味の自由さというか、無邪気さというか、子供がゴジラの人形を混ぜこぜにして遊んでいるような、そんなめちゃくちゃさが絶妙な塩梅になっているのだ。
『ゴジラ対メガロ』(1973)に登場しカルトな人気を誇る人型ロボット・ジェットジャガー(J.J)が再登場するというサプライズも、最初はマニア向けのメタな小ネタを仕込んだセンスに感じてしまったのだが、いざ映像を見ると活き活きと大活躍するJ.Jにそんな杞憂は吹き飛んでしまった。決して閉鎖的にならない、面白さに対する「無邪気」な姿勢が、新たなファンを呼び込んでいるんだと思う。
さらに、特撮とアニメ両眼の眉間を狙い撃つCGの素晴らしさや、原典となる伊福部昭氏の音楽へのリスペクトに満ちつつ、決してオマージュに留まらない沢田完の素晴らしいスコアの数々など、『ゴジラS.P』の「良い塩梅」はまだまだあるので、その辺はいつかどこかに書けたらと思う。
「大ゴジラ特撮王国 ~オールゴジラ大集結~ in 東京ドームシティ」
最後に紹介するのは、東京ドームシティ「Gallery AaMo(アーモ)」でスタートした「大ゴジラ特撮王国」。こちらは「オールゴジラ大集結」「ゴジラクロニクル」と題して、歴代のゴジラのスーツや資料が、時系列順に集結した展覧会イベントとなっている。上記の『ゴジラS.P』や「ゴジラ・ザ・ライド」でゴジラにKOされたなら、この展示会でゴジラ68年の巨大な足跡を追いかけてみては、どうでしょう!(ここは、写真多めでお届けします)
実際に撮影に使われた兵器類と、当時アトラクション用に製作されたロボットゴジラによるジオラマ展示
初代ゴジラからはじまり、歴代のゴジラのスーツが展示。左側に展示されている『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)のスーツは史上最大サイズの物で、目の前で見ると圧巻の巨大さ。
このイベントで特に充実しているのが、90年代に子供達を夢中にさせた「VSシリーズ」と呼ばれる一連の作品の造形物だ。僕自身も子供の頃に足繁く劇場に通ったが、この頃のゴジラ作品というのは子供たちにとって一年に一度のパーティーだった。『ルパン三世』の次元大介役でおなじみ、小林清志氏の重厚なナレーションのCMが流れると、いよいよ年末という感じがしたものだ。DIME読者の中には、同じような思い出を持っている方もいらっしゃるんじゃなかろうか。そんなあの頃の残像が、目の前に質量を持って現れる感動…!
『ゴジラVSキングギドラ』(1991)に登場したゴジラザウルスの頭部。ロマン全開。
『ゴジラVSメカゴジラ』(1993)の登場したベビーゴジラの頭部機構。こんな姿になっても、よく残ってたなベビー…。ロッ○リアのハンバーガー食べような。
Gフォース塗装仕様の「メーサーヘリ」。『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994)に登場予定だったが、実際には使用されなかったレアな展示。
というわけで、今回は直近のゴジラ・コンテンツを紹介してきたわけだが、延期になった『ゴジラVSコング』の公開も控えていて、ここからゴジラはますます盛り上がっていくだろう。
近年、特撮文化周辺は、活況を見せている。ずっと特撮を好きな自分が言うんだから間違いないと思う。新作が次々と供給され、新商品が矢継ぎ早に発売する現在地点は、十数年前からは想像もできない状況だ。作り手の創意工夫と、ファンの熱量に支えられ、夢のような時代がやってきたわけだが、その量だけでなく質にも注目したい。昨年の『ウルトラマンZ』『SSSS.GRIDMAN』がそうであったように、確実に「特撮の壁」を突き抜けて、新しいファンに届く自由な作品が生まれてきているのは、本当に喜ばしい状況だ。「あー、特撮ね、子供やオタクの好きなアレね」というイメージを持っている方がいたら、ちょっと覗いてみてほしい。日本が生んだセンス・オブ・ワンダーの世界が、あなたを待っている。
インフォメーション
★西武園ゆうえんち
・オープン日:2021年5月19 日(水)
・営業時間:日により異なります
・休業日:不定休
・ライドアトラクション:12機種
・商店街:30店舗
・飲食施設:12店舗
・料金:1日レヂャー切符(入園+アトラクションフリー) 大人(中学生以上)4,400円)、子供(3才~小学生) 3,300 円
※その他、お得なパック料金もご用意しております。
※3才未満は無料
★大ゴジラ特撮王国 ~オールゴジラ大集結!!~ in 東京ドームシティ
・期間:2021年5月22日(土)~6月27日(日)
・会場:東京ドームシティ Gallery AaMo (ギャラリーアーモ)
・入場料:大人 1,800円、中学生・高校生1,300円、子ども(3歳~小学生)500円
・主催:大ゴジラ特撮王国実行委員会(東京ドーム/笑遊堂/バンダイナムコライブクリエイティブ/ドリーム・プラネット・ジャパン
・協力:株式会社東宝映像美術/(有)酒井ゆうじ造型工房
・監修:東宝株式会社
・企画制作:大ゴジラ特撮王国実行委員会/JBNE DESIGN
取材・文/タカハシヒョウリ
タカハシヒョウリ
ミュージシャン、作家。ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギターとして6枚のアルバムをリリース。
また様々なカルチャーへの偏愛と独自の語り口で、カルチャー系媒体での執筆や、番組・イベント出演など多数。
編集/福アニー
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