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【サステイナブル企業のリアル】「服のリサイクルによって付加価値の高い服を生み出して消費者に届けることが重要です」日本環境設計・中村崇之さん

2021.05.25

「サステナブルな企業のリアル」――環境や資源への配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、持続可能な社会にコミットする製品や企業を紹介するシリーズ。日本は年間に29憶着が供給され、15憶着が売れ残るといわれる。現在、約60%の衣服にポリエステル繊維が使われるが、不可能といわれた古着のポリエステルをリサイクルし、全く新しいブランドの服を提供する、今回はそんなサステナブルな企業の紹介だ。

日本環境設計株式会社 プロダクトマーケティング課課長 中村崇之さん(39)。古着を回収し、自社工場で古着に含まれるポリエステルを抽出、樹脂に再生して再び糸、生地、服を作り、BRINGのブランドで販売。ポリエステルの古着を付加価値の高い服に変える、そんな循環リサイクルのビジネスモデルを確立した日本のベンチャー企業は、この会社だけである。中村さんはBRING事業の責任者を担っている。

ポリエステルの再リサイクルは大問題

そもそも、企業のユニフォーム向けの商社の営業マンだった現会長の岩元美智彦(57)が、90年代後半に抱いたある発想が、この会社のルーツとなった。

ユニフォームは多くの場合、3年ごとに切り替わる。旧ユニフォームは大量の産業廃棄物として、焼却か埋め立てで処理されることが多い。一方で90年代後半に容器包装リサイクル法の制定で、使用済みペットボトルが注目され、ペットボトルをポリエステル繊維として、再生させるリサイクルが加速した。だが……。

ちょっと待てよ、ペットボトルをポリエステルの繊維に再生して、作った服が古着になった時、もう一度、服にリサイクルすることができない。産廃物としての処分が現状だ。これは将来的に大きな問題になるぞ――。

そんな思いを抱き続けていた岩元が、2000年代の半ばに、異業種交流の飲み会で現社長の高尾正樹(40)と出会った。二人はこんな話で盛り上がったに違いない。「ペットボトルをリサイクルしてポリエステルの服にしても、その服が古着になった時、再生させる方法はほぼない。膨大な産廃物ができる」「将来的に再生繊維の服のリサイクルは、問題になりますね」高尾は大学院で経営工学を学んでいた。

「単にリサイクルが目的ではないんだ。リサイクルによって付加価値の高い製品を生み出し、それを消費者に届ける」それはサーキュラエコノミーという概念だが、二人は意気投合。2007年、渋谷区内に会社を立ち上げる。

https://www.jeplan.co.jp/technology/bottle/より引用

コットンの古着をエタノールへ

「うちの会社でTシャツを作りたいんだ」ウェブの仕事をしていた中村崇之が、知り合いの高尾から入社の誘いを受けたのは2009年。当時から“服から服へのリサイクル”が目標だったことを物語る言葉だ。

最初に狙ったのは、綿製品をエタノールに替える事業だった。酵素で綿を分解、生成された糖を酵母が食べて、アルコールに替える。 酒造りと同じ手法でエタノールを生成する。

一方でアパレルショップ等と連携して、古着を回収する「FUKU‐FUKUプロジェクト」と名付けたビジネスを考案した。クローゼットに空きスペースができると、消費者の購買意欲は増すので、ショップはメリットがある。店に置いた回収ボックスや店頭に古着を持ち込むと、一部の店舗はクーポン券をお客に提供する。ショップから古着を回収して仕分けし、着られるものはリユースに、一部は自動車の内装材として、また障害者就労施設に寄付したり、すべてリサイクルされる。

さらに、ユニフォームメーカー等に集まる古着は産廃物で、運搬の許可や県を超えての移動の許可等、リサイクルするには法律的にいろいろな制約がある。企業のリサイクルの要望に応えるため、許認可取得等のアドバイスをしたり、コンサルティング業も手掛けた。

愛媛県今治市にコットンからエタノールを生成する工場を竣工したのは2010年だった。今治市はタオルの町だ。生産工場はタオルを染める染色ガマを持つ会社に間借りした。回収した古着の一部が原料になるが、タオルの端切れ端や糸くず等の原材料も集めやすい。

サーキュラエコノミーという考え

――廃棄された製品や原材料を、新たな資源としてとらえ循環させる、生成されたエタノールはサーキュラエコノミーの考えに基づいた製品なのでしょうか。

「もちろん、集めた古着から作ったエタノールを、Tシャツを染める時の燃料として使うことで循環し、付加価値のある製品として消費者にアピールする。実際にうちで生成したエタノールを使い、製品化したものを“めぐるタオル”という商品名で販売しました」

――でも、染めも際の燃料に使うことで循環とは、わかりにくいですね。

「確かに、わかってなかったところがありました。エタノールで商業ペースに乗るには年間、60~100万トンの生産量が必要で、当時のうちの年間処理能力は300トン程度、付加価値を付けたつもりでも、あまり反応はなかったし、輸送や人件費等にコストがかかって。ちょっと失敗したなという感じでした」

古着からエタノールの事業は芳しくなかったが、企業のリサイクルへのコンサルティング、古着を回収してリサイクル、携帯電話のリサイクルも手掛けた。そんな中――。

https://www.jeplan.co.jp/technology/bottle/より引用

デロリアンを走らせる

「中村くん、デロリアンいつ買うんや?」

そう言い続けたのは創業者の一人、岩元美智彦だった。デロリアンとは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する主人公マーティが乗る車型のタイムマシンで、「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」ではゴミのリサイクル燃料で動く。1989年公開の映画では、2015年10月21日の午後4時29分にデロリアンがタイムスリップする。これに合わせて映画に登場したのと同じデロリアンをアメリカから輸入し、イベントを開催しようじゃないかという計画だった。

アイデアの実行を担うのは中村の役どころだ。関係者との交渉、車の購入費、アメリカからの輸送費600万円等の経費と、イオンモール等に貸し出して得る損益計算を担当。

デロリアンを日本で走らせるビッグイベントは、今のBRING事業に大きな影響を及ぼすのだが、その詳細は明日公開の後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama


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