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鉄道事故はなぜ起こる?世界の鉄道ビジネスに垣間見るパワーゲーム

2021.05.20

2021年5月3日(現地時間)、メキシコの首都メキシコシティで悲劇的な列車事故が起きた。

高架橋が崩落し、走行中の地下鉄が落下。24人もの死者が出る大惨事となった。

このメキシコシティの地下鉄、当該区間はアルストム(仏)と現地財閥の合弁事業。

この高架橋は現地財閥側の担当分野で、事故前から杜撰な工事が元々指摘されていたという。

ここのところ、列車事故は続いている。

先月には台湾でも起きた。ただ、こちらは作業員の過失によるものだが。

そして、近年の列車事故で最もセンセーショナルだったのが2011年の中国での衝突・落下事故。システムに起因していると言われるこの事故は、その後に車両もろともさっさと埋めてしまおうとしたという対応にはいろんな観点で世界に衝撃が広がった。

さて、世界の鉄道のこの先安全なのだろうか?

実は鉄道事故にはまだまだリスクが高まっていると筆者は感じている。

そこで今回は、今後への警鐘も兼ねて記したい。

なぜリスクが高まっているのか? 主な背景は以下の2点。

①世界でニーズ広がる鉄道建設
②中国の登場で激化する近年の工事受注争い

まずその①について。

世界経済の発展に伴い、世界中で急速に広がるモータリゼーション。ただ、ここに来て世界に広がる環境問題への意識の中で、排気ガスを中心に、ガソリン自動車に対する軋轢も高まる今日この頃。

鉄道(高速鉄道・地下鉄など)でそんな環境問題などの解決を図る事例が目立つ。

実際、市場規模は順調に拡大。UNIFEのデータによると、世界の鉄道マーケットはこの10年でなんと30%も広がり、いまや約20兆円に達するという。

こちらはエチオピアの首都アディスアベバの事例。

2015年に中国政府の援助により施設された新交通システム。いまや、アディスアベバの市民にとっては無くてはならないものである。

ちなみに、エチオピア政府が中国政府にきちんと支払いを行っているのかどうかは筆者は定かではない。。。

そして、②である。

かつて、鉄道ビッグ3といえば、シーメンス(ドイツ)、アルストム(フランス)、そして航空機でも有名なボンバルディア(カナダ)。

ところが、この10年で業界構造は一変した。

それが、CRRC(中国中車)。2014年に国営企業同士の合併で生まれた同社は、中国国内の強い需要も追い風となり、今や2位シーメンスの倍の規模を持ち、世界トップに躍り出た。もちろん、同社の技術にはパクリ説も色濃いが・・・

でも、そんなCRRCには弱点がある。数字だけ見ると凄い売上だが、売上の9割は中国国内向け。そう、海外ではまだまだ弱いというのが実情。でも、中国国内の鉄道マーケットは飽和が近づく。そう、海外に打って出るしかないのである。でも、欧米ではなかなか成約が獲れない。

そんな彼らが着目したのが新興国マーケット。

ここに来て、彼らのアフリカでの勢いはすさまじいい。先ほどのエチオピアもしかり、

2016年、エチオピア・ジプチ間(約780km)
2016年、ナイジェリア・高速鉄道(約1,300km)
2017年、ケニア・高速鉄道(約490km)
2019年、アフリカ横断鉄道(タンザニア・アンゴラ間、約4,000km)
※参考:東京・博多間の新幹線の距離が約1,200km

鉄道は国家プロジェクトの様相が益々強まる。

実際、2015年のインドネシアで高速鉄道プロジェクトでは、安倍首相(当時)自らが現地へ乗り込み売り込むも、最後は、マネーも絡めた中国政府の攻略で見事に失注したことを記憶されている方もいるであろう。

益々ヒートアップする世界の、特に新興国での鉄道ビジネス。

でも、冒頭のメキシコシティでの事故しかり、事故の話もいろいろと耳する。

例えば、筆者もよく訪れるアフリカ・ケニアの例。

隣国エチオピア同様、中国政府の援助で建設が進んだ高速鉄道プロジェクト。

当時から、筆者もケニアで工事の様子は目にしていた。

そのたびに現地のケニア人から自虐的に言われたものである。

”でも、これはメイドインチャイナだからいつ壊れるかな?、ガハハ”

ジョークのようなこの発言は現実となる、しかも、列車の開通前に。(笑)

首都ナイロビ郊外で、できたばかりの高架橋がすぐに崩壊。

自虐的なケニア人が爆笑する一方で、

(この鉄道、本当に大丈夫か・・・)

とケニア中に戦慄が走っていた。。。

挙句、鉄道を作っていたらいつの間にか予算オーバーし、結果、目的地であるモンバサから15kmも手前に終着駅を作らなくてはならなくなったというオチも付いた上で開通した。
(※アフリカで15kmというのは相当な距離です)

あくまでこれは一例だが、このように、過当な受注競争から杜撰さも目立つ新興国での鉄道業界。

中国の躍進は続くのか、メキシコシティの事故を教訓に見直しは入るのか。

国家プロジェクトとなったいま、鉄道ビジネスからは世界のパワーゲームのリアルが見えてくる。

関連動画を筆者のYoutubeチャンネルにも上げていますので、宜しければご笑覧ください。

文/小林邦宏
旅するビジネスマン。これまで行った国は100ヶ国以上。色んな国で新しいビジネスをつくるおじさん。
現在は新型コロナウィルスの影響で海外渡航制限中により国内で活動中。
オフィシャルサイト:https://kunihiro-kobayashi.com/
Youtubeチャンネル:「旅するビジネスマン 小林邦宏チャンネル
Twitter: @kunikobagp
著書:『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎)

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