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米国立がん研究所がチェルノブイリ原発事故が与えた遺伝子への影響について調査結果を報告

2021.05.22

チェルノブイリ原発事故の遺伝子への影響は?

1986年にウクライナで発生したチェルノブイリ原子力発電所事故により、発がん性物質として知られる電離放射線が放出され、多くの人が被曝した。

そのような被爆者やその子どもを対象に、最先端のゲノム解析ツールを用いて、潜在的な健康への影響を検討した2件の研究結果が報告された。両研究とも、「Science」に4月22日掲載された。

1件目の研究は、米国立がん研究所(NCI)のMeredith Yeager氏らによるもの。研究対象者は、チェルノブイリ原発事故で、父親か母親のどちらか、または双方が電離放射線に被曝した105組の両親から1987〜2002年の間に生まれた子ども130人である。

同氏らは対象者の全ゲノムシーケンシングを行い、de novo(新規)突然変異と呼ばれる、両親のゲノムには存在しないが、その子どものゲノムに新たに生じた変異が増加しているのかどうかを調べた。

その結果、対象者においてde novo突然変異の増加を示すエビデンスは認められないことが明らかになった。確認されたde novo突然変異の数は、同等の特徴を持つ一般集団とほとんど同程度であった。

この結果は、電離放射線被爆が被爆者の子どもの健康に与える影響は、あったとしても最小限であることを示唆している。

Yeager氏らは、「これは、放射線被曝のような人災によるヒト遺伝子突然変異の変化を、初めて系統的に評価した研究の1つである」と研究成果を強調した上で、「得られた結果は、2011年に福島第一原子力発電所事故が起きた際に福島に住んでいた人たちを安堵させるのではないか」と話している。

2件目の研究は、NCIのLindsay Morton氏らによるもの。同氏らは、440人の甲状腺乳頭がん患者から採取した甲状腺腫瘍組織や正常な甲状腺組織、血液を用いて全ゲノムシーケンシングを行い、遺伝子変異を探った。

対象者のうち、359人は、小児期か胎児期にチェルノブイリ原子力発電所事故で放射性ヨウ素(ヨウ素131)に被曝した可能性があり、残りの81人にはそうした被曝経験がなかった。

解析の結果、被曝経験のある人では、放射線によるDNA二本鎖切断を伴うDNA損傷が増大しており、被曝時の年齢が若かった人ほど、DNA二本鎖切断が顕著であることが明らかになった。

次に、「ドライバー遺伝子」候補の特定を試みた。ドライバー遺伝子に生じた変異は、がんの発生や進行に重要な役割を果たす。その結果、甲状腺腫瘍の95%以上においてドライバー遺伝子候補が同定された。

そのほぼ全ては、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路と呼ばれるシグナル伝達経路に関わる遺伝子であったが、被爆レベルの高かった人と、被曝経験がないか被曝レベルが低かった人では、変異の仕方が異なっていた。

すなわち、前者ではDNA二本鎖が2本とも切断され、その後に誤った修復がなされていることが多いのに対して、後者では、1つの塩基が別の塩基に置き換わっている変異が多かったのである。

こうした結果を受けてMorton氏らは、「放射線被曝後の甲状腺腫瘍は、ゲノムのDNA二本鎖の切断が原因で発症することが示唆される」と結論付けている。

また、「この研究は、特に低線量被曝に対する放射線防護と公衆衛生において大きな意味を持つものだ」とも述べている。(HealthDay News 2021年4月23日)

Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://science.sciencemag.org/content/early/2021/04/21/science.abg2365

https://science.sciencemag.org/content/early/2021/04/21/science.abg2538?rss=1

Press Release
https://www.cancer.gov/news-events/press-releases/2021/genetic-effects-chernobyl-radiation-exposure

構成/DIME編集部

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