可視化すると見えてくる仕事に対して費やしていい時間
私が経営するクロスリバーでは、すべての仕事がどれだけの時間がかかり、受注額に対してどれだけの時給になっているのか、すべて記録を取って可視化しています。契約金額に対してどれぐらい時間をかけていいのか、自分の能力を1時間でフル稼働させたらどれぐらいの稼ぎになるのか、といったことを意識することで、漫然と作業することを防げるのです。
この調査分析から「継続契約に大きなインパクトを与えるのは稼働時間の15%だった」ことがわかりました。ただしそれは、残り85%の時間を費やさなくてもいいということではありません。「15%」にエネルギーを注ぎ込めば、追加契約や大型契約を手繰り寄せることができるということです。
Excelの作業はムダ!?日頃の業務を見直そう
例えば、Excelの作業は売り上げには直結しにくいことがわかっています。また、PowerPointの資料作成も時間をかければ売り上げが上がるわけではないということもわかってきました。
このことから、クロスリバーではExcelの作業は基本的に禁止としています。代わりにAIによる解析、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動収集と解析、BI(ビジネス・インテリジェント)ツールによる取りまとめを行なっています。
資料作成でいえば、定例会議の資料よりも経営会議の発表資料のほうがビジネスにより大きな影響を与えます。新型コロナの影響で訪問型の営業が敬遠される中、対面支店の営業活動のほうが、後の契約に大きなインパクトを与えることもわかりました。「15%」の作業が何かを明確にして、そこに注力することが効率的なのです。
時間や体力を大幅に伸ばすことができないのであれば、限られたエネルギーを「15%」に注ぎ込めば十分。逆をいえば、成果に直接つながらない報告書や、メールの処理に対して、100%本気のエネルギーを注ぎ込むのはおすすめできません。
数値だけでは測れない〝感情的な判断〟も意識する
仕事の中には、売り上げや利益に直接的な影響がなくても、やらなければならない業務もあるでしょう。作業報告書を作ったり、顧客やクライアントとの定例会議の時間を設けたりしても、売り上げが上がることはないものの、自分に対する信頼や信用といった成果は得られます。
特に追加契約や大型契約はこういった見えない信用や信頼をベースとすることが多く、ここを疎かにすると、会社の総売り上げを落とすことになります。
顧客は、価格や投資対効果といった測ることのできる定量的な評価のみで購買を決めることはありません。人間ですから、何かしら〝感情的な判断〟が加わります。
むしろ、論理的な判断よりも安心感やワクワク感といった感情的な評価(期待)を受けることによって、ビジネス関係を継続することにもつながるのです。
では、どういったことが「感情をベースとした契約」につながるのか……。クライアント企業18社とともに分析をしました。18社は製造業や流通業、そして情報通信サービス業といったB2B向け大手企業。分析対象としたのは、契約が3年以上継続中で、毎年契約金額が上がっていった案件です。
分析対象となった43件を見ていくと、その7割は提案書や見積書を出す前に、ほぼ決まっていたことがわかりました。このことから他社との価格比較や投資対効果といった定量的判断だけにフォーカスしていないことがわかります。
トラブルが継続契約のカギ!?仕事の失敗は前向きにとらえる
調査をして意外なことに、継続案件の多くは初年度にいくつかのトラブルが起きていました。
もちろんトラブルは起きないことが望ましいのですが、顧客にとってはトラブルが相手企業を判断する機会にもなるのです。
問題が発生した際に「自分のせいではない」と言って逃げるのか、被害を受けた自分たちに対してどれほど親身に対応してくれたのかを、じっくりと見ているわけです。
そのような対応も含めて、自分がどれだけ時間をかけて、それが成果にどれくらいつながっているのかを、週1回、振り返ってみてください。ムダな作業が見えてきて、おのずと重要な作業に力を入れられるようになるはずです。
働いた時間と成果の「測る化」によって現状が見えて、その先の目標とのギャップがわかります。山登りでもマラソンでも今どこにいて、あとどれくらいで到達するのかを確認できたほうが安心です。見えない不安に襲われて行動が止まってしまったり、間違った判断をしてしまったりしないようにしましょう。
越川慎司/全員がリモートワーク・複業・週休3日のクロスリバー代表。約700名のほぼ全員がリモートワークしているキャスター社の事業責任者も兼ねる。自著15冊・累計30万部、DIMEデジタル新書『最速で結果を出す資料の作り方』(小社)が好評発売中。
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