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最近よく聞く「量子コンピューティング」って何?

2021.05.15

量子コンピューティングとは何か。その仕組み・展望を解説

スティーブジョブズ(Steve Jobs)氏がポケットに入れて持ち運べるコンピューターを発表する27年前に、物理学者のポールベニオフ(Paul Benioff)氏は、それよりはるかに強力なシステムで、しかも指ぬきに隠れるほど小さいが、強力なシステム、つまり量子コンピューターを構築することが理論的に可能であることを論文で発表した。

1980年に書かれたベニオフ氏の概念は、素粒子物理学を利用しようとしており、この学問にちなんで名付けられた。これについては今でも熱心に研究が続けられており、コンピューティングにおける次の大きな革新、つまりPCをそろばんのような古めかしいものにしてしまうようなシステムを構築すべく努力が重ねられている。

ノーベル賞受賞者であり、幅広い聴講者に機知に富んだ物理学の講義を行ったリチャードファインマン(Richard Feynman)氏は、そのようなシステムが奇抜な量子現象を従来のコンピューターよりもいかに効率的にシミュレートできるかについて説明し、この分野の確立に貢献した。

改めて、量子コンピューティングとは何か

量子コンピューティングは、現在のコンピューターのより単純なトランジスタに代わって、素粒子を支配する物理学を用いて並列計算を実行する高度な手法だ。

量子コンピューターでは、従来のコンピューターで使われるオンまたはオフ、1または0のビットの代わりに、オン、オフ、またはその間の任意の値を使用できる計算単位である量子ビットを使用して計算する。中間状態にある量子ビットの機能は「重ね合わせ」と呼ばれ、コンピューティングの方程式に強力な機能を追加し、一部の数学分野において量子コンピューターを優位なものにしている。

量子コンピューターは何をするか

量子ビットを使用することにより、古典的なコンピューターでは仮に完了できたとしても長い長い時間がかかる計算を、量子コンピューターは楽々行える可能性がある。

たとえば、現在のコンピューターは8ビットを使用して0から255の間の任意の数値を表す。量子コンピューターの場合、重ね合わせなどの機能により、8量子ビットを使用して0から255の間のあらゆる数値を「同時に」表すことができる。

これは、コンピューティングにおける並列処理のような機能。すべての可能性が順次ではなく一度に計算されるため、大幅な高速化が実現する。

つまり、古典的なコンピューターは膨大な数を因数分解するために一度に1つずつ長大な割り算を実行するが、量子コンピューターは1ステップで答えを得ることができる。よって、量子コンピューターは、暗号化のような、現在では不可能なほど大きな数の因数分解に基づいている分野全体を再形成できる可能性があるのだ。

小さなシミュレーションの大きな役割

これはほんの始まりにすぎない。専門家の中には、化学や材料科学など、ナノサイズの量子力学に基づいて構築された世界のシミュレーションを行う上で現在妨げとなっている限界を、量子コンピューターが突破するだろうと確信している人もいる。

量子コンピューターは、エンジニアが現在最小のトランジスタで発見され始めている量子効果の、より精巧なシミュレーションを作成できるようになることで、半導体の寿命を延ばすことさえ可能だろう。

実際、量子コンピューターは最終的には古典的なコンピューターの代替品ではなく、補完するものである、と専門家たちは述べている。また、GPUが現在のコンピューターを加速するのと同じように、量子コンピューターがアクセラレータとして使用されると予測する人もいる。

量子コンピューティングの仕組み

地元の電気店で処分品として売られている部品を寄せ集めてDIYでPCを作るように、自分だけの量子コンピューターを構築できる、といったことは期待しないでいただきたい。

現在稼働しているシステムはごく少数で、通常、絶対零度に近い温度の動作環境を作れるような冷蔵施設を必要とする。これらのシステムの原動力となる脆弱な量子状態を扱うには、コンピューティングの「極地」となる環境が必要となる。

量子コンピューターの構築がいかに難しいかを示す例として、あるプロトタイプでは、2つのレーザーの間に1つの原子を吊るして量子ビットを作り出している。みなさんもご家庭でお試しいただきたい。

量子コンピューティングは、ナノサイズの非常に強力な力を使って「量子もつれ(エンタングルメント)」と呼ばれる状態を作り出す。これは、2つ以上の量子ビットが単一の量子状態で存在している状態で、この状態はわずか1ミリメートル幅の電磁波によって観測されることがある。

その電磁波にごくわずかのエネルギーでも加えすぎると、もつれや重ね合わせ、あるいはその両方の状態が失われる。その結果、デコヒーレンスと呼ばれるノイズの多い状態が発生する。これは、量子コンピューティングにおける「ブルースクリーン」だ。

量子コンピューターの展望は

現在、Alibaba、Google、Honeywell、IBM、IonQ、Xanaduといった一部の企業が、初期バージョンの量子コンピューターを運用している。

これらのシステムは数十の量子ビットを提供するが、量子ビットはノイズが多く、信頼性が低いこともある。現実世界の問題を処理する信頼性を得るには、システムは数万または数十万の量子ビットを必要とする。量子コンピューターが本当に役立つ高忠実性を獲得する時代に達するには数十年かかるだろう、と専門家たちは信じている。

量子コンピューターはゆっくりと商用利用に向かっている。(出典:リーヴェンヴァンダーシペン(Lieven Vandersypen)氏によるISSCC2017での講演)

量子コンピューティングが従来型のコンピュータではできなかったことを実行できるようになる、いわゆる「覇権を握る」ような時期の予測は、現在業界内で活発に議論されている。

現在の量子回路シミュレーションを加速する

ここで朗報なのが、AIと機械学習の世界では、量子コンピューターが量子ビットで計算するような種類の演算の多くを実行可能なGPUなどのアクセラレータに注目しているという点だ。

そのため、古典的なコンピューターでも現在、GPUを使って量子シミュレーションをホストする方法がすでに見つかりつつある。たとえば、NVIDIAは、社内のAIスーパーコンピューターであるSeleneで最先端の量子シミュレーションを実行した。

GTCの基調講演においてNVIDIAは、GPU上で実行する量子回路シミュレーションを高速化するcuQuantum SDKを発表した。初期の研究が示すところによると、cuQuantumが桁違いのスピード
アップを実現することが見込まれている。

このSDKでは他に依存しないアプローチを採用しており、ユーザーは自分のアプローチに最適なツールを選択できる。たとえば、状態ベクトル法は忠実度の高い結果を得られるが、そのメモリ要件は量子ビット数に比例して指数関数的に増大する。

そのため、現在最大の古典的なスーパーコンピューターであっても、約50量子ビットが実用上の制限となっている。それでも、cuQuantumを使用してこの方法を使用する量子回路シミュレーションを高速化したところ、優れた結果が得られた(以下を参照)。

Caption:状態ベクトル:1,000回路、36量子ビット、深度m=10、複素数64|CPU:デュアルAMDEPYC7742上のQiskit|GPU:DGXA100上のQgate

GTC(登録無料)のセッションE31941で、ユーリッヒスーパーコンピューティングセンターの研究者たちが、状態ベクトル法を使用した取り組みについて詳しく説明する。

より新しいアプローチであるテンソルネットワークシミュレーションは、同様の作業を実行するにあたり、より小さいメモリで、より多くの計算結果を得られる。

この方法を用いて、NVIDIAとカリフォルニア工科大学は、NVIDIAA100TensorコアGPU上で実行されるcuQuantumによって、最先端の量子回路シミュレーターを高速化した。そして、Selene上でGoogle Sycamoreの回路の全回路シミュレーションから9.3分でサンプルを生成した。これは、1年半前には専門家たちが数百万のCPUコアを使用して数日かかると予想していたタスクだ。

Caption:テンソルネットワーク–53量子ビット、深度m=20|CPU:デュアルAMDEPYC7742上のQuimb(推定)|GPU:DGX-A100上のQuimb

カリフォルニア工科大学のリサーチサイエンティストであるジョニーグレイ(Johnnie Gray)氏は、次のように述べている。

「Cotengra/Quimbパッケージと、NVIDIAが新しく発表したcuQuantum SDKおよびSeleneスーパーコンピューターを使うことで、記録的な速さで深度m=20のSycamore量子回路のサンプルを生成しました。10分未満です。

また、カリフォルニア工科大学化学教授で、研究を主催した研究室の教授であるガーネットチャン(Garnet Chan)氏は、次のように述べています。「これは、量子回路シミュレーションの性能のベンチマークを設定するものです。量子回路の動作を検証する能力が向上することにより、量子コンピューティング分野がさらに前進するでしょう。」

パフォーマンスと使いやすさが向上したcuQuantumが、この分野の研究における最先端にあるすべての量子コンピューティングフレームワークおよびシミュレーターの基本要素になることを、NVIDIAは期待している。

出典元:NVIDIAブログ
https://blogs.nvidia.com/blog/2021/04/12/what-is-quantum-computing/

構成/こじへい

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