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「転職なき移住」を実現した企業がテレワーク制度より大切にしていたこと

2021.05.16

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回(ツナグ・ソリューションズ)と今回は、「転職なき移住」について私が取材をしてきた企業の事例をもとに考えたい。時事通信社(2021年5月1日)によると、政府は東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川4都県)の企業に勤めたまま地方に移り住む「転職なき移住」の促進に向けて動きだしているという。背景には、働き方改革やコロナウィルス感染拡大により、テレワークが広がっていることがあるようだ。

今回は、下記の事例を紹介したい。

パーソルキャリア

(主に人材紹介サービス業。東京都千代田区、正社員4,540人(有期社員含む グループ会社出向中の者は除く 2021年1月末時点)

2021年4月から「フルリモートワーク制度」を始めた。対象は、全社員(一部の職種を除く)。一定の条件を満たした場合、社員が私生活の事情やライフスタイルに応じて居住地を選ぶことができる。これまでは、社員は原則として所属するオフィスに通勤が可能な範囲に住んでいた。

「フルリモートワーク制度」により、北海道から九州までに約30カ所あるオフィスに通勤可能な範囲に、本人の希望で転居が可能となる。本制度が適用される社員はオフィスへの出社は原則ない。「転職なき移住」を希望する社員がいる場合、条件を満たし、会社から認められればそのような生活ができる。

制度の目的は、創業期から推し進めてきた「働きやすい環境作り」の一環であり、定着を促進し、社員のキャリア形成を支援するためだ。社員自身がパフォーマンスを最大限発揮し、同社が掲げるMissionやValueといった社会へ価値貢献を最大化するための「はたらく環境」を選択できるためでもある。さらには、昨年(2020年)4月、政府による緊急事態宣言の発令以降、リモートワーク(主に在宅勤務)をより一層に普及させるためだ。

また、地方在住者が今後、新卒や中途の採用試験を経て入社した後、その地にそのまま住むことができるようにもする。本社に勤務となり、都内近郊に転居することが必須ではないようにしていく。採用力やブランド力を強化する施策にもなる。

本社や全国のオフィスには転職支援を行うキャリアアドバイザーに加え広告営業、エンジニアやデザイナー、マーケティング、管理部門(人事、総務、経理、広報、IR)など約4500人の社員がいる。制度利用の中心となるのが、エンジニアやデザイナーが400人程いるテクノロジー本部だ。

「現時点では、利用者は一部の部署や職種に限られる傾向がある。その1つがキャリアアドバイザーや法人営業を含む職業紹介事業に従事する社員だ。職業安定法を厳守する立場から届け出を出している本社やオフィスに出社する必要がある。それを考慮しながら、全社で働きやすい環境を整備してきた。リモートワークにより、上司が部下とリアルに対面しなくとも、マネジメントがきちんとできるようにしていきたい。すでに九州在住のエンジニアが中途採用試験を経て入社し、フルリモートワーク制度を利用し、働いている」(執行役員 テクノロジー本部 本部長 柘植悠太 氏)

執行役員 テクノロジー本部 本部長 柘植悠太 氏

「フルリモートワーク制度」では社内外の有事に備えるために「日本全国いずれかの拠点に片道2時間程度で出社可能な範囲」といった制限を設けた。転居後の配属部署や関わる仕事は、通常は転居前と変更はない。IT、デジタル機器やそれに伴う教育、セキュリティルールを2010年から全社規模で整備してきたため、地方や自宅にいても滞りなく対応できるという。

制度を利用するためにはまず、上司に申請し、認められることが必要。その後、上司が人事部に報告し、審査のうえ認められれば正式に許可される。基本的には認める方向だが、例えば新入社員の場合、1人で仕事をすることが難しいために、いったんは許可を見送る可能性がある。

前回取り上げたツナグ・ソリューションズと同じく、パーソルキャリアもまた、人事の取り組みには熱心な企業だ。「フルリモートワーク制度」が突然始まったのではなく、日頃から全社、各部署や個々のチームで情報、意識、目標の共有を行い、組織化を進めていたからこそできるのだろう。

チームビルディングの効果は5~10年後に現れるものだと私は思う。本来、「転職なき移住」を進める場合、まずは現在のリアルな職場(オフィスへの出社)でどのようにしてチームを作るか、が問われるべきだ。企業社会を見渡すと昨年の新型コロナウィルス感染拡大以降、在宅勤務を始めてから慌ててチームビルディングをするケースが目立つ。だが、思い描いたようには進まないはずだ。

前回と今回紹介した企業は、長い時間をかけてようやく今、それが形となって現れている。こういう企業を参考にまず、早急にするべきことは目の前にたくさんあるのではないだろうか。

文/吉田典史

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