
「謝罪力」が求められる時代になってきた。ビジネスの世界は、全てうまくいくことばかりではない。失敗はつきもので、時として謝罪の必要に迫られることもあるだろう。
しかし、そんなピンチを乗り越えて、業績アップを実現してきたのが、ビジネスコンサルタントの越川慎司さん。自称〝アヤマリスト〟の越川さんは、これまでの585件に及ぶ謝罪訪問から導き出したビジネスメソッドを話題の著書『謝罪の極意』でたっぷりと綴っている。本記事ではその中から、いくつかの重要なポイントを紹介したい。
知っているつもりでも忘れてしまいがちな謝罪の準備や、当日の話の進め方などを押さえれば、キャリアアップや収入アップも間違いなし!?
話題の著書『謝罪の極意』とは
・第1章:謝罪大国ニッポン
・第2章:【実録】火柱が上がる現場
・第3章:謝罪に臨むための心構え
・第4章:訪問に向けて準備すること
・第5章:当日の立ち居振る舞いと注意点
・第6章:真の信頼回復には次の訪問が重要
・第7章:困難を乗り越えてさらに成長する
謝りに行く目的や相手が怒るメカニズム、訪問当日の注意点など、豊富な経験に基づく謝罪のノウハウが満載。全192ページ。
著者の越川さんはこんな人
アヤマリスト
越川慎司さん
2017年にクロスリバーを設立。謝罪や働き方のコンサルタントとして活動中。『新しい働き方』(講談社)と『働きアリからの脱出』(集英社)はともにベストセラーに。自転車や甘味が好き。時短にこだわり、ヒゲの脱毛もしている。
訪問までに何をどうすればいい?謝罪の準備で念頭に置きたい3者間ダイヤグラム
謝罪訪問とはトラブルの発生により、必要に迫られて行なうもの。頭が真っ白になり、右往左往する人もいるだろう。そうならないためには、まず「顧客」「自分」「社内」という目線で、やるべきことを整理しよう。越川さんのコメントに従って、まずは謝罪に向けて念頭に置くべきポイントをチェックしてほしい。
《顧客⇄自分》顧客対応に必要なのが「カスタマーサクセス」の考え方
「『カスタマーサクセス』とは、顧客の成功を支えながら製品やサービスの利用頻度を高めて契約を継続してもらうこと、または契約を増やしてもらうことを指します。謝罪訪問では、そんなカスタマーサクセスを念頭に置きながら謝罪を行ない、ビジネスの拡大につなげることを目指しましょう。それを達成するためのポイントが『顧客の感情』を読み取ることです。顧客が抱いている喜怒哀楽の感情を把握し、うれしさや楽しさを増やす戦略が必要になります」
「謝罪には『個人』と『会社』という目線があります。個人としては謝罪を行なうとともに原因となる問題を解決していく過程により、自信がつき、自分への成果が得られます」
「『悲しい』『悔しい』という〝第1次感情〟が一定量を超えることによって『怒り』という〝第2次感情〟が起こります。そのため、第1次感情を和らげる対応を心がけてください」
「謝罪訪問の当日は、同僚とも連絡を密に取りながら、アポイントの時間に遅れないようにしましょう」
《自分⇄社内》「社内協業」体制の構築がトラブル解決のカギ!
「問題が生じた際、より素早い対応を可能にするのが、強固な〝社内協業モデル〟です。謝罪訪問で持参するお詫び状の作成には、特に社内の協力体制が不可欠。謝罪相手に提示する再発防止策の作成は、個人ではなくできるだけ複数名で行ない、様々な部門のメンバーを巻き込み、それぞれの視点からアイデアを出し合うようにしましょう。そのような会社の姿勢は、お詫び状の文面を通じて必ず顧客に伝わり、信頼の回復につながるはずです」
「社内でお詫び状をまとめる際はWhen(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Wh(y なぜ)、Wha(t 何を)、How(どのように)=5W1Hをわかりやすく整理しましょう」
「日本人は経営者が物事を決める時、合議を重んじる傾向にあるようです(Erin Meyer氏『異文化理解力』より)。それを踏まえて〝根回し〟を図りながら、社内調整を進めましょう」
《自分》自責の念はほどほどにして「折れない」ことを心がける
「謝罪対応の際は、最初から諦めたり、自分の力を過小評価したりしないでください。負のシミュレーションをすると、どんどんやる気がなくなり、気分が滅入ってしまいます。ひとりで落ち込むのではなく、何とかポジティブな側面を見いだして心が折れないようにして、逆境を乗り越えられるようにしましょう。初めて謝罪訪問をする場合は『体験すること』を目指してください。謝罪体験から得られる学びは、次の行動に必ず生きます」
「自分でできること(『内円』)と、できないこと(『外円』)を分けて考え、前者のみに取り組むこと。後者のことはあれこれ考えず、会社の上司や役員に委ねて手放しましょう」
「信頼回復のために外見上でマイナスに思われる点は一切排除してください。ネクタイは彩度が高い原色を避けて、スーツのカラーはブラックまたはダークグレーがベターです」
「謝罪の極意:頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド」(小学館刊)
文/編集部 イラスト/岡田 丈