
現在、日本の航空会社の中には、国内線において渡航前のPCR検査サービスを行っているところもある。各社のPCR検査サービスはどうなっているのか。また日本航空(以下、JAL)にPCR検査サービスについてのことや、機内の感染対策などについて聞いた。
各航空会社のPCR検査サービス
2021年4月現在、搭乗前のPCR検査サービスを提供している国内の航空会社は、JAL、全日本空輸(以下、ANA)、Peach Aviation(ピーチ・アビエーション/以下、Peach)の3社。
PCR検査とは、検体採取時点で新型コロナウイルス感染症に感染している可能性があるかどうかを判定する検査だ。あくまで検体採取時における体内のウイルスの存否を確認するもので、新型コロナウイルス感染症の確定診断をするものではないとされる。
検査結果が陰性であることを知ることで、国内旅行や帰省の前、イベントの実施などの場面で安心感が得られるというものだ。
検査は陰性であることを確認するためのもので、症状のある場合や陽性を疑う場合には各地域の受診・相談センターに相談する必要がある。
3社のPCR検査サービスにはどのような違いがあるのか。比較しながら見ていこう。
1.JAL「JAL国内線PCR検査サービス」
●対象 搭乗予定の旅客(団体航空券を除くJMB会員)
●検査申込期間 2021年3月8日~6月23日
●対象搭乗期間 2021年3月15日~6月30日
●提携検査機関 にしたんクリニック
●対象路線 国内線全線(グループ航空含む)
●検査価格(旅客負担額) 2,000円(税込)もしくは2,500マイル
●検査法 PCR検査(自宅で検体採取・郵送)
JALは、もともと国内線JAL ダイナミックパッケージという「往復航空券+宿泊」のセットのパッケージを利用する客に対して、新型コロナのPCR 検査サービスの提供をしてきた。そんな中、2021年3月8日から新たに、JALマイレージバンク(以下、JMB)日本地区会員に対して、PCR 検査サービスの提供を始めた。ちなみにJMB会員になるのは無料だ。
PCR検査は、医療法人社団直悠会にしたんクリニック と連携して行われる。自宅に唾液採取用キットが届き、自宅で採取したものを郵送して送り返す方式だ。結果はメールで受け取れる。
検査料金はクレジットカードで支払うほか、マイルを使うこともできる。
2.ANA「ダイナミックパッケージ PCR検査オプショナルプラン」
●対象 ANAトラベラーズ ダイナミックパッケージ利用者、PCR検査オプショナルプラン利用者
●検査期間 2021年3月8日~9月30日まで
●対象搭乗期間 2021年3月10日~10月2日
●提携検査機関 医療法人社団和光会監修木下グループ新型コロナPCR検査センター
●対象路線 国内線全線(グループ航空含む)
●検査価格(旅客負担額)
検査センター(羽田空港除く新橋・新宿・渋谷・池袋・秋葉原店舗):2,500円(税込)
羽田空港第2ターミナル:1,800円(税込)
郵送:2,700円(税込)
●検査法 PCR検査(検査センター/郵送)、鼻腔ぬぐい液による抗原検査(羽田空港)
ANAは、航空券と宿泊プランがセットになったANAトラベラーズ ダイナミックパッケージ利用者とPCR検査オプショナルプラン利用者を対象に、PCR検査を受けられる。方法は郵送、検査センター来店、羽田空港来店の3つがあるが、郵送は現在検査キット在庫不足のため一時停止中。羽田空港はクイック(抗原)検査のみとなる。
ここでは、検査センター来店の方法についてみていこう。
都内の駅から近い検査場、新宿店、新橋店、池袋店、渋谷店、秋葉原店の5か所のいずれかに行って検査を受ける。料金は2,500円(税込)。店舗は、医療法人和光会監修と医療施設の設計・建築の知見をもとに、医療施設に準じた設計と衛生管理を行っている。
検査は唾液を採取して完了。結果はメールで届く。
またANAでは別途、自宅で受けられるPCR検査キットの提供もある。
https://www.ana.co.jp/ja/jp/topics/coronavirus-travel-information/pcr/
3.Peach「新型コロナウイルス郵送検査サポートオプション」
●対象 運賃タイプ「バリューピーチ」「プライムピーチ」利用者
●検査受付期間 2021年2月10日~4月29日(搭乗日の10日前まで 推奨:15日以上前まで)
●対象搭乗期間 2021年2月20日~5月9日
●提携検査機関 エスエスダナフォーム
●対象路線 予約の1区間目が東京(成田)、大阪(関西)発の国内線
●検査価格(旅客負担額) 無料(Peach、成田国際空港、関西国際空港全体構想促進協議会(事務局:大阪府)がそれぞれ負担)
●検査法 PCR検査(自宅で検体採取・郵送)
Peachは、対象路線利用者に対して、搭乗前に提携検査会社の株式会社エスエスダナフォームによる検査をオプションで提供している。検査費用は無料というのが特徴だ。方式は、郵送されるキットで自宅採取によって行う。結果は、メールにて通知される。
JALの感染対策
航空会社は、PCR検査サービスの提供のほか、空港ラウンジや機内においてさまざまな感染対策を実施している。日本航空 CX企画推進部企画グループ 藤井智之氏に、機内の空気循環、換気方法について話を聞いた。
●機内の「空気循環(換気)」
次のような空気循環の状況で、飛行中の機内の空気は、おおむね2分~3分で入れ替わり、清潔な空気で保たれているという。
・常に機外から新鮮な空気を取り入れ、2分~3分程度という短い時間ですべて機外に排出される。
・機内を循環する空気は、高性能空気フィルターを通ることにより清潔に保たれる。
・客室内の空気は、常に天井から床下へ流れて特定の場所に滞留はしない。
加えてJALでは理研のスーパーコンピュータ富岳で機内空気循環のシミュレーションを行うことで、さらなる新型コロナウイルス感染症の感染防止に関する研究を行っているという。
また、PCR検査サービスと今後のJALの感染症対策の取り組みについて次のように回答する。
「JAL国内線PCR検査サービスは、『搭乗日前までにお客さまご自身でPCR検査を受けていただき、安心してご搭乗いただけること』、そして『旅先の皆さまが(お客さまを)安心してお迎えいただけること』、というご旅行の安心を実現するために企画いたしました。これからも公共交通機関として少しでも安全・安心なサービスとご旅行を実現し、社会全体の、そして皆さまのお役に立てるサービスをこれからもお届けしたいと考えています」
ANAがデジタル証明書でPCR検査の結果を確認する実証実験を実施
ANAは、飛行機に搭乗する際、スマートフォンのアプリによってPCR検査の結果を表示する実証実験を国内の航空会社で初めて実施した。これにより、訪問先の入国条件を満たしていることを示すデジタル証明書として使えるようになるという。
実証実験には世界の航空会社8社が参加しており、将来的にはワクチン接種履歴も合わせて確認できるようにし、世界共通の仕組みにすることを目指すものだ。
PCR検査サービスをはじめ、検査結果のデジタル証明書など新型コロナに関連する取り組みが各社で進んでいる。今後の発展に期待したい。
取材・文/石原亜香利
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