2021年の「不動産業界」
コロナ禍でも不動産市場は拡大を続けているが、業界のすべての分野が好調というわけではない。インバウンドの喪失で都心部の地価は下がり、オフィスビルの需要も減退している。そんな中でもこれから伸びそうな企業を不動産ジャーナリストの榊淳司氏が挙げた。
不動産ジャーナリスト 榊 淳司さん
榊マンション市場研究所主宰。年間500か所以上、新築マンションの建築現場を現地調査し、資産価値評価のレポートを提供している。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)。
テレワークで戸建て需要が上昇
コロナ対策でテレワークの導入が進み、家に個室を確保したいという需要が高まったため、戸建て住宅の販売が好調です。東日本不動産流通機構の調べによると、20年の首都圏新築戸建ての成約件数は前年比で7.9%増となっています。
戸建て需要の高まりを追い風に業績を伸ばしているのが、飯田GHDです。住宅設備や設計を共通化してコストダウンすることで、戸建てを600万円(土地を除く)から建てられるのがウリで、戸建ての販売数では日本一に輝いています。
オープンハウスも戸建てが主力で、右肩上がりで成長している。創業者の荒井正昭社長は業界内で〝荒井将軍〟と呼ばれるほど野心家で、会社の体質はゴリゴリの体育会系です。社長のカリスマと実力主義の社風から就活生の人気は絶大で、社員には旧帝大や早慶などの出身者が多いといわれています。昔のリクルートのような会社といえばピンとくる人がいるかもしれません。戸建て住宅を造るには土地を仕入れる必要がありますが、将軍の下で〝兵隊〟のように鍛えられた若者が、足を動かしてじゃんじゃん土地を仕入れる。古臭く聞こえるかもしれませんが、それが他社との差別化につながっているのです。
中古ワンルームのネット販売で急成長しているのが、GAテクノロジーズです。社長は元Jリーガーで、投資型マンション販売で有名な青山メインランドでノウハウを学びました。不動産をネットで購入するなんて信じられないかもしれませんが、都心部の中古ワンルームは今や投資目的の〝金融商品〟になりつつある。投資熱が高まっている20代、30代だと、内覧1回で即決というケースも増えています。今は在庫が不足して業績が下がっていますが、今後は2DK、3DKといった広い物件でもネット販売に抵抗がなくなると考えられるため、業績を伸ばすのではないでしょうか。
注文住宅の販売ではセキスイや旭化成などと肩を並べるヒノキヤグループに注目です。同社には、未上場ですが中古住宅や中古マンションを仲介する「不動産流通システム(REDS)」という子会社があり、業界で一般的な仲介手数料「3%+6万円+税」を半額にするという戦略で、巣ごもり需要を背景に急成長しています。
戸建てが売れているという現状は、需要の〝先食い〟ではないかとの懸念もあるので、どのタイミングで頭打ちになるかということには注意したいですね。
POINT CHECK
● 戸建て需要の高まりというビッグウエーブに乗っているか
● 中古物件の金融商品化に対応しているか
● 20代、30代の不動産に対する考え方を的確に捉えているか
榊さんが注⽬する企業はコチラ!
オープンハウス(東証1部3288)
土地の仕入れから建築、販売まで一貫して行ない、都心部の狭小戸建て住宅を得意としている。96年設立で、20年9月期の年商は5759億円。社員の平均年齢は29歳と非常に若く、松田翔太や戸田恵梨香を起用したCMも話題に。
GAテクノロジーズ(マザーズ3491)
不動産売買や設計施工などの総合プラットフォーム「RENOSY」を運営。2013年設立の若い会社だが、すでに売上高は200億円を突破している。社長の樋口龍氏は元JEFユナイテッド市原の育成選手。
ヒノキヤグループ(東証1部1413)
規格型注文住宅「桧家住宅」を主力とするハウスメーカーで、2018年上場。不動産投資事業、断熱材事業、介護保育事業、リフォーム事業にも領域を拡げている。20年12月期の売上高(連結)は1144億円。
取材・文/清水典之
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