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連帯と孤独、家族、親と子、加齢について考えさせられる傑作映画「家族の庭」と「秘密と嘘」

2021.05.09

■連載/Londonトレンド通信

 さて、前回からの続きで、今回はマイク・リー監督『家族の庭』(2010)。前回同様ブリティッシュ・コメディだが、人間ドラマでもある。それも深い人間ドラマだ。

 タイトルの「連帯と孤独、家族、親と子、年をとることについての映画」は、ロンドン映画祭での会見でリー監督がこの映画を表した言葉だ。(写真は会見時のリー監督と主演レスリー・マンヴィル)

 コロナ禍で人と会うことが制限された中、多くの人が改めて直面したテーマではなかろうか。

 リー監督といえば、最近では『ターナー、光に愛を求めて』(2014)で知られるが、ヴィクトリア期の大画家ターナーを描いたこちらはむしろ例外で、長らく市井の人々を描いてきた。

 『家族の庭』でも、とある一家とその周辺が描かれる。家庭菜園を楽しむトム(ジム・ブロードべンド)とジェリー(ルース・シーン)夫妻と成人した息子ジョー(オリヴァー・モルトマン)の一家だが、その友人メアリー(マンヴィル)がメインになる。夫妻よりは年下のメアリーも、孫がいてもおかしくない年齢だ。

 一家に起こる様々と、関わるメアリーのジタバタが、季節の移り変わりとともに描かれる。傍目にもそれとわかるほど焦り、パートナー探しに必死なメアリーだ。

 原題は『Another Year』で、年月を重ねていくにつれ、育んできたものが、芽を出し、花を咲かせ、実をつけていく夫妻と、メアリーが対比される。それは仕事上でも同じで、キャリアを積んできた夫妻と、そうでもなさそうなメアリーで、積み重ねを一家、重ねてこなかったのをメアリーに集約させている。積み重ね、言葉を変えれば、これまでの流れから起こる諸々に対処しつつ歩んでいる一家と違って、メアリーはもう一発逆転しか狙っていないように見える。

 ロンドン映画祭の会見でマンヴィルは「望んだわけでもなく、独身で子どもも持たずにきた」とメアリーを説明した。望んだわけでもないことが集約されたメアリーと言えるかもしれない。

 映画は、そのメアリーのアップで終わる。言葉以上に物語るマンヴィルの表情が圧巻だ。(DVD発売中)

 メアリーのイタさがそのまま笑いになるのだが、アイロニーが強すぎて笑えない方もいるかもしれない。

 そういう方には、同じく「連帯と孤独、家族、親と子、年をとることについての映画」と表しても間違いないもう1本のリー監督作『秘密と嘘』(1996)の方をお勧めしたい。(DVD発売中、RakutenTV、ビデオマーケット配信中)

 『家族の庭』が孤独を強調しているのに対し、『秘密と嘘』は連帯を期待させて、後味は正反対だ。
 
 『秘密と嘘』の主人公も中年女性シンシア(ブレンダ・ブレッシン)で、こちらは娘と暮らすシングルマザーだが、その娘とも上手くいかない「望んだわけでもない」人生を送っている。そのうえさらに、望んだわけでもないどころか、すっかり忘れていた若き日のツケから、物語が展開していく。

 『家族の庭』ラストでのマンヴィルの顔に負けずとも劣らず、『秘密と嘘』でのブレッシンの顔は物語る。前半で見せる「アッ!」という顔は、人生の一大事なのに、まるで忘れていたところにシンシアの雑な人柄が出ていて、笑いつつ仰天させられる。

 最近ではNetflixドラマ『ザ・クラウン』のマーガレット王女役でお馴染みのマンヴィル、イギリスの刑事ドラマ『ヴェラ ~信念の女警部~』で10年に渡り主演してきたブレッシンとも、ほんとうに芸達者でコメディの間もパーフェクトだ。リー監督作では、ハリウッド・グラマーとは違うタイプの俳優が堪能できる。

※発売、配信は予告なく終了することがあります。 

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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