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本田圭佑だけじゃない!現役中に起業してサッカースクールを立ち上げた元日本代表・近藤直也の生き方

2021.04.30

現役中に起業したJリーガーの先駆者 

「アスリートのデュアルキャリア」の重要性が叫ばれる昨今、現役の間に起業する選手が増えている。サッカー関係を見ると、「ソルティーロ・ファミリア・サッカースクール」を国内外70校超運営し、ファンドビジネスや教育分野にも進出している本田圭佑(ネフチ・バクー)が最も有名だ。

 それ以外にも運動・食事・メンタルなど健康に関する総合的なビジネスを展開する「株式会社Cuore」を立ち上げた長友佑都(マルセイユ)、米販売会社と美容サロンを手掛ける小林祐希(カタール1部・アルホール)など、サッカーを続けながら新事業に乗り出そうという動きは少なくない。

2020年限りで19年間のJリーガー生活にピリオドを打った元日本代表DF近藤直也さんも、本田とほぼ同時期に「Do Soccer School(公式HPhttps://www.do3-ss.com/soccer_school.html)」を立ち上げた「現役起業家の先駆者」だ。


イキイキと引退後の仕事に邁進する近藤さん(筆者撮影)

「僕は2002年に柏レイソルのユースからトップに上がってプロになったんですが、30歳を目前にして『いつかは次のキャリアに向かう時が来る』と考え始めるようになりました。大きなきっかけになったのは、引退した先輩が町クラブの雇われコーチになったこと。華のある輝かしい選手だった分、ギャップが大きくて驚きました。自分もいつそうなるか分からないと危機感を覚えたし、『今、動き出さないとダメだ』と痛感した。2012年からサッカースクール発足に向けて本格的に動き始めたんです」


 
可能な限り、自ら練習に足を運ぶ(本人提供) 

 近藤さんが目を付けたのは4歳から育った地元・茨城県の県南地域。つくば市で成長し、屈指の進学校・竹園高校を卒業した彼には、つくば、土浦、取手といったエリアに馴染みがある。当時在籍していた柏からも近く、自ら足を運んで子供たちと触れ合うこともできる。そう考えて、すぐに「株式会社DOMA」を設立。小学校からの幼馴染を雇い、彼に実働部隊になってもらう形で2013年1月から始動。3月の無料体験スクール実施を目指した。

「最初は場所探しでした。いくつか物色して、地元のフットサルコールを時間借りする話をつけ、つくば、土浦(藤代)、取手の3会場で週2回ずつ指導する体制を整えました。その次は子供集め。小学校を回ったり、チラシを配布したり、地元の新聞社に記事を書いてもらうなどいろんなアプローチを考えましたね。学校でチラシを配布する場合は許可が必要だったり、書面を提出したりしなければいけないこともあった。そういう作業も始めてやりましたけど、サッカー選手の自分には本当に分からないことだらけでした」 

最初は赤字で自身の蓄えから補填

それだけ努力して、最初の参加者は10数人。現役Jリーガーが始めるスクールといっても、すぐに大盛況というわけにはいかないのだ。

「もちろん収支も赤字です(苦笑)。社員1人の人件費と運営費を考えたら、生徒6070人は集めないと苦しいです。それでも現役選手だった自分には別の稼ぎがありましたから、そこまで慌てなくて済んだ。借り入れせずに自分の資金からしばらくは投資を続けて、黒字化を目指しました。

結局、目標人数には1年足らずで達し、8年が経った今は約300人の生徒が通ってくれています。社員も4人に増やし、アルバイトも5人雇って、きめ細かい指導を心掛けています。活動拠点も、メインの土浦は3面のフットサルコートをほぼ専用で使えるようになりましたし、つくば、取手に加えて、柏校も発足させています。僕も可能な限り、顔を出していますけど、子供たちや親御さんとのいい信頼関係を築きながらやりたいというポリシーは貫いているつもりです」


拡大よりも質の向上を目指すのが近藤さんのスタイル(本人提供)

現役選手を続けながら、これだけの事業拡大をしてしまう手腕は恐れ入るが、彼は別のキャッシュポイントを作る努力を怠らなかった。Jリーグクラブが入場料収入とともにスポンサー収入を重要視しているように、自分のサッカースクールも支援してくれるスポンサーを集められればより強固な基盤を構築できる。そう気付いた近藤さんは、企業経営者や社長などとの人脈作りに奔走したのだ。

「もともと人見知りな僕は人と会うのが好きではなかったんですが、『スポンサー集めをしよう』と決意してからは自分から積極的に動くようになりました。最初は柏レイソルの試合を見に来てくれる関係者との食事会からスタートして、徐々にネットワークを広げていきました。

ジェフ千葉時代は週23回はベンチャー経営者と人脈作り

 一番熱心だったのが、ジェフユナイテッド千葉に在籍した20162018年。千葉は柏より東京に出やすい環境だったので、週2~3回会食に行っていた時期もありました。会ったのはベンチャーやスタートアップ関係の会社経営者が多かったかな。正直、ジェフのスタッフからは好意的には見られていなかったと思いますけど、サッカー選手は練習・試合以外の離れた時間が一般社会人より沢山ある。それを有効活用したいという気持ちが強かったんです」

 まさに”意識高い系”の近藤さんの努力が実を結び、今では約20社が年間協賛金を拠出してくれるまでになったという。その他にも成長期の中学生を対象にプロテインなどを販売する事業もスタート。今後は外国語を含めた学び方面への展開も模索するつもりだ。引退後には簿記の勉強も始め、マネーにもより見識を深めるなど、彼は歩みを止めることはない。複数の収入源を作ることがスクール経営をさらなる安定化につながると信じて、日々、前向きに進み続けている。


 
ジェフ千葉時代はピッチ上でもピッチ外でも大活躍(本人提供)

「僕はずっとサッカーしかやってこなかったので、会社を作った当初は月次報告書をチェックするだけでも難しく感じました。もともと経営者の本を読んだりはしてましたけど、実務となるとやっぱり別。ただ、全て自分1人でやろうとせずに、税理士さんや現場スタッフなど各方面の専門家の力を借りながら運営した方が物事の広がりが作れる。やっぱりビジネスは人とのつながりがあってこそだなと痛感します」

 アスリートの兼業はどんどんやるべき!

 こうして引退後はスムーズに社長業へと移行した近藤さんだが、起業当初は反発も少なくなかった。今でこそ「デュアルキャリア」や「セカンドキャリアの重要性」が叫ばれる時代になったが、10年前は「アスリートがそれ以外のことに熱を入れるなんて、いかがなものか」という否定的な見方が根強かったからだ。

「『サッカー選手はサッカーだけやるのが当たり前』という雰囲気だったこともあって、僕も20代の頃まではサッカーのことしか考えられませんでした。自分の場合は母親が大学進学を強く望んだのに、あえてプロサッカー選手の道を選んだので、真面目にサッカーに向き合うことが恩返しになるという意識が強かったのもあります。

でも周りを見渡すと、パチンコやゲームをやったりと、プライベートの時間を有意義に過ごせていない人が結構いました。その空いた時間を有効活用して、自己デザイン力を身に着けた方が将来的に役に立ちますよね。僕はそう考えたから、できることから実行して、今につながったと思います。

自分と同じ頃にソルティーロを立ち上げた本田選手のことも『同じような考えを持つ人がいるんだな。素晴らしい』と感じました。そうやって自分で考えて、動ける若者が増えるように、僕もスクールの活動の中で新しい試みを進めていこうと思います」


柏レイソル時代は守備の要をとしてタイトル獲得にも貢献(本人提供)

サッカー選手としても、2003年ワールドユース(U-20W杯=UAE)出場、2012年2月のアイスランド戦(大阪・長居)での日本代表デビューなど日の丸を背負い、2011年には柏レイソルのJ1初制覇の原動力となるなど、輝かしい実績を残してきた近藤さん。J1209試合出場8ゴール、J2192試合出場12ゴールという数字を見れば、偉大なプレーヤーだったことが分かるだろう。こうしてアスリートと経営者を両立させてきた彼の生きざまは多くの人にとってもヒントになるはずだ。

「まずはできるところから行動を起こす」という彼のポリシーを参考に、コロナ禍の厳しい今を乗り切っていきたいものである。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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