人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

【サステイナブル企業のリアル】「技術は任せてくださいなんだけど、売る力がない」アテック会長・芦田拓也

2021.04.28

サステイナブル――持続可能、環境や資源に配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、それらにコミットする製品や企業を紹介するシリーズ、「サステイナブルな企業のリアル」。今回はサステイナブルな製品を開発する発明家の紹介だ。

株式会社アテック会長 芦田拓也さん(80)。本社は練馬区内の築30年以上は経つ、広めの1DKマンションの一室にある。従業員は5名。年老いた愛犬の「ハッピー」が事務所内をウロウロする。「今まで130ぐらい特許を申請した」と言う芦田会長、正直、あまり商売には繋がっていない様子である。会長はちょっと古いが「オバケのQ太郎」に登場した町の発明家、“エジサン”なのか。それとも本物のエジソンか。数々の発明の中でもオゾンを使った浄化装置、同じ電力で倍近い出力を得られる新型モーターは、サステイナブルに大いに貢献する製品なのだが。今回は会社の浮き沈みと、オゾンを使った浄化装置の物語を紹介する。

売る力も理もマネージメントも、ダメ

「子供の頃から電気機関車を作ったり、電気に興味がありました」

工学院大学に進学し、電子工学を勉強。昭和30年代後半、電子工学は引く手数多だった。鉄道車両の会社の研究室に就職した芦田は、「ブルートレインの寝台のランプ調節装置と、車両同士がすれ違う際に、ライトが自動で減光する装置を作りましたね」

芦田は本人曰く、「頼まれるとイヤと言えない」性格だとそうで、

「高校時代の友人が競輪に凝って会社をクビになり、助けてくれというので、五反田で機械工場を経営していた義父の会社に高給で雇ってもらって。ところが友人は旋盤も扱えないし、ハンダ付けの仕事もダメで、4畳半の部屋が不良品の山になって」

「サラリーマン辞めて商売やれ」と義父に言われていたし、責任を感じた芦田は会社を辞め、義父の工場を継ぐ形で32歳の時に独立。

「大阪万博のあった昭和45年ごろ、電子回路の設計ができるベンチャー企業は東京でも数社でした」口コミで仕事が殺到した。

「資材置き場の大きな砂利山に、砂利が何万立米あるかを計算する装置を作ったり。パチンコ屋のパチンコ玉の数を、光を使ってカウントする装置を納入したり」

――儲かったんじゃないですか。

「家を5軒購入したね」

一時は80人以上の従業員を雇っていたこともあったと言うが、十数年で家はほとんど雲散霧消した。

「まっ、商売っていうのは波があって、良い時はいいが……」

――発想とモノづくりには、脱帽するものがありますけど、

日当たりの悪い、愛犬ハッピーがうろつく事務所内に目をやり、私はそんな言葉を発した。

「技術は任せてくださいなんだけどね、売る力がない。経理も得意じゃない。マネージメントはもっとダメ(苦笑い)」

悪臭の硫化水素退治

それでもバブルの頃は景気がよかった。

「中堅の観光会社のクーポン発券機を全国50数か所に納品しました。当時は月給100万円、1ヵ月の飲み代は200万円」だが、人に頼まれると断り切れない性格だ。「手形が落ちない、会社がつぶれる、お願いだ、裏書を頼む」とか懇願され、1億円を超える負債を負ったこともある。それでもしぶとく会社は存続する。

「行きつけの飲み屋で“マスター、店の看板のランプをLEDに替えると、電気代も安くすむし見栄えもよくなるよ。オレが作ってあげようか”という話になって」

LEDランプを使った電飾の装置はブームとなり、中国製品が台頭するまで利益が出た。

「道路公団に勤める友人の紹介で、羽田可動橋やレインボーブリッジの点検車に搭載された、コンピュータ制御の装置のメンテナンスをやったり」仕事は途切れなかった。

本題のオゾンを使った浄化装置の話は、2000年を過ぎた頃だった。母校の工学院大の懇意する先生を訪ねた時のことである。研究室に都の関係者の来訪があり、都の関係者は相談とも愚痴ともつかない話をしていた。

「雑居ビルの合併槽が臭いという苦情が下水道局にかなりの数、寄せられているんですよ。ビルのオーナーに言ってもらちが明かないし、何とかなりませんかね」

そんな話を横で聞いた芦田は、ピンとくるものがあった。

セラミックを使い放電させる

繁華街等の雑居ビルの地下には、厨房排水に含まれる油脂分や残飯、野菜くずなどを分離させるグリストラップ(油脂分離阻集器)という合併槽の設置が義務付けられている。合併槽は定期的な清掃が必要だが、汚水が腐敗し悪臭を放つことがよくある。夏場、繁華街の雑居ビルで、卵の腐ったような悪臭を感じることがあるが、その正体は合併槽の汚水が腐敗して放つ硫化水素なのだ。

待てよ、硫化水素とオゾンをぶつけてみたらどうなるだろう。硫化水素はH²S、オゾンはO²+O、硫化水素のH²とオゾンのOが結びつくとH²O、水になるじゃないか――

芦田の研究・開発が始まった。数少ない研究スタッフと考えを具体化する話し合いが続いた。

「電気がスパークして、パーンと飛び散る時にオゾンが発生する」

「でも、放電してスパークさせると、電極が解けて短くなりますよ」

「スパークが出ない、電極が解けないような放電の仕方があるはずだ」

「いったい何を使うんですか」

頭の中の“分厚い知識帳”をめくっていた芦田は、セラミックという素材に行き当たる。

「セラミックの中には無数の穴がある。この穴に電気を通して放電させ、オゾンを発生させるんだ」

補助金を得て、セラミックに7000Vの電圧をかけ、オゾンを発生させる装置が完成した。発生したオゾンのエアーをチューブで合併槽の汚水に送り込み、ブクブクさせて浄化する。実際に渋谷の飲食店が入る雑居ビルの合併槽に設置し試してみると、1カ月もしないうちに硫化水素の悪臭はきれいに消えた。

これは来るべきサステイナブルな時代にマッチする画期的な浄化装置だ。芦田ならずとも一獲千金を夢見たのだが――。

その詳細は明日配信の後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

新型コロナウイルス対策、在宅ライフを改善するヒントはこちら

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年4月15日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「スマホLIVEスタンド」! 特集は「投資の新常識」&「輸入食材スーパーの極上グルメ」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。