
決算発表をニュースや新聞で目にすることは多いだろう。実際決算発表とはどんなものなのか、数字の何を見ればよいのか解説する。
決算発表とは?
決算報告には法律によって主に3種類あり、新聞やニュースで目にする速報性の高い決算発表は以下の①に基づいて報道機関向けに発表されたり、企業ホームページに掲載されたりする。
<上場企業の決算報告>
①通期決算短信(本決算末後)、四半期短信(四半期毎)(有価証券上場規程404条)
速報性重視で、監査・四半期レビューを受けている必要はない。しかしながら、後で内容に訂正があれば東証に訂正報告し、義務ではないが報道機関に発表する必要性も出てくることから、会計士と綿密に連携し間違いのない数字を出す企業がほとんどだ。
企業は、この決算短信をもとに決算発表を行う。また、義務ではないが各社決算短信をもとに一般投資家に分かりやすいよう、パワーポイント等を使った報道機関向けのプレゼンテーションを行い、同時にホームページにも掲載される。
②計算書類等(会社法435条第2項、会社計算規則59条第1項)年1回
監査を受けており、決算短信に比べると正確。会社法の規定により作成され、会社で保存され、さらに株主に送付される株主総会招集通知に会社の事業内容等とともにこの内容が同封されている。株主向けのものは、写真等も記載され分かりやすいパンフレットのような形で記載されていることが多い。この計算書類等は取締役会で承認を得て株主総会に報告する必要がある。計算書類等の内容として、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、株主資本等変動計算書(S/S)、事業報告、個別注記表、計算書類の附属明細書、事業報告の附属明細書がある(計算書類の附属明細書、事業報告の附属明細書のみ株主が見るには閲覧請求が必要)。
③有価証券報告書(本決算末後)、四半期報告書(四半期毎)(金融商品取引法)
監査を受けており、確定値である。有価証券報告書は金融商品取引法で決算日後から3ヶ月以内の開示することが義務とされており、速報性は低い。四半期報告書は45日以内とされており、①の四半期短信より少し後になる程度だ。金融庁が運営する「EDINET」や企業ホームページのIR欄で閲覧することが可能になっている。ただ、ここでは義務とされる有価証券報告書が法律の規定通りに全内容記載されており、会計の知識がないと分かりにくい。
また、株価は先行して変動するため、この有価証券報告書での情報は遅いと考えられる。
①のうち(通期)決算短信による決算発表は東証により早期化が要請されており、決算期末後速やかに行うよう求められている。遅くとも決算期末後45日以内を期限とし、決算期末後30日以内の開示が望ましいとされている。なお、決算期末後50日を越える場合はなぜ遅れたかの開示が必要であり、遅れは債務超過など悪い要因であることが多い。
四半期決算短信については、③の四半期報告書が45日以内とされていることからそれより前に出すことが望ましいとされている。
決算短信の内容
企業は事業を1年に区切りその間に事業活動により生じた損益やその事業年末時点の財産状況を株主に報告する義務がある。1年の区切りは企業によって自由に決めることができるが、4月~翌年3月末までとしていることが多い。
そのため、以下の時期に決算発表が行われることが多い。
・(通期)決算短信→4/25~5/15
・四半期短信→7~8月、10~11月、1~2月
株主やこれから投資しようと考える人は、その内容に基づき投資するかどうか決める。
株価は先行して動くため、速報性が求められ、法律上決めっている上記①の計算書類等や③有価証券報告書のような監査を受けた確定内容に先立って①の決算短信が発表される。
その決算短信では四半期毎の損益が発表される。
なお、海外で活躍する会社は現在任意適用となっている国際会計基準IFRSを適用する場合はあり(上場会社約2,000社のうち232社が適用)、項目名や内容が異なることもあるため、IFRSを適用会社の項目名は()内に記載する。IFRSを適用しているかどうかは決算短信のタイトル横に記載されており、適用していない場合には[日本基準]と記載されている。
<決算短信の内容>
1.営業成績
・売上高(IFRS適用:営業収益)
企業の本業で得られた収入を指し、本業が順調なのかわかる。
・営業利益
売上から売上原価を引き、営業にかかわる費用である販管費を差し引いた後の利益。
日本企業はこの営業利益が特に重視される。本業の利益を表し、前年度の同時期に比べてどうなったかを比較する。
・経常利益(IFRSではこの項目はない)
営業利益から営業とは関係のない支払利息や受取家賃などの営業外でかかる費用と収益を下限したもの。
・純利益
営業利益から、営業外収益・費用、特別損益を差し引いた後に金額を指す。特別損失などを計上したときは赤字になったり、資産を売却したときに利益になったりすることもあるため、大きな損益がでているときは純利益に一喜一憂するのではなく、一時的な特別損益がでていないかも確認しておきたい(IFRS適用会社は特別損益の項目なし)。
また、最終利益である純利益が配当金の原資の一部となるため、純利益が増えていれば配当金の増配が期待できる。
・親会社株主に帰属する純利益(親会社の所有者に帰属する純利益)
子会社の親会社に帰属する利益です。子会社の損益が反映されるため子会社が多い企業集団の場合に参考にできます。
・(包括利益)
日本基準では欄外に記載されている。包括利益とは、企業の純利益だけでなく、企業が保有する有価証券の評価損益、外貨換算調整額、土地再評価差額金、子会社の親会社に属する純利益も含まれる。
ソフトバンクグループのようなあらゆる企業に投資する投資会社や事業は行わず運営だけ行うホールディングスの形をとる会社などは、この包括利益の方が参考になる。
なお、詳しい損益状況は最後に添付される損益計算書(P/L)で確認できる。
2.財政状態
資産合計、純資産合計、自己資本比率、1株あたり純資産等
どんな資産があるかなど資産の詳細は最後に添付される貸借対照表(B/S)で確認できる。
財政状態が健全であればそれほど見ることはないが、財政状態に懸念がある場合や赤字決算のときには、自己資本比率が同業他社に比べて低くないか、債務超過になりそうではないかを確認する必要がある。
3.配当状況
長期株主や配当目当ての株式投資なら注目したい配当の状況を指す。なお、証券会社等でも配当金の数字は見ることができるが、企業予想の配当金を見ることができる。証券会社などでの配当予想は四季報の独自予想による数字であることもある。
4,業績予想
四半期決算においても1年間の事業年度中の業績予想が記載される。四半期の間に業績が変動すればこの通期予想も変更される。
5.注記
会社の債務超過などP/LやB/Sの数字だけでは分かりにくい重要な情報が記載されている。
6.添付
貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書、注記
決算短信は会計知識のない一般投資家にも分かりやすい内容になっている。また同時に決算説明資料でグラフを使った説明が行われることが多く、最近では企業ホームページで説明会の内容を動画で見られるようにしている企業も多い。
株主、投資予定者は何を見るべきか?
株式投資で売却利益を狙うなら、会社の業績予想が重要となる。株価は先行して動くことから既に決算発表前に個人投資家やアナリストは業績を予想して投資している。
個人やアナリストの予想は、各社の証券会社やみんかぶインフォノイドが運営するみんかぶのサイトなどで見ることができ、または東洋経済が発行、運営する四季報または四季報オンラインでも独自予想を出している。
そのような予想より企業が出す予想が悪ければ下がり、上がれば株価が上がることが多い。
特に企業が出している1年間の業績予想である通期予想が、みんなの予想より上方修正されると大きく上がり、逆になれば下がる。
また四半期決算であれば、企業の通期予想に対する進歩率も注目したい。その時期に対して進歩率が高ければ通期を情報修正する可能性が高く、低ければ通期が下方修正されるかもしれない。
日本の多くの企業が株価の動かない15時以降に決算発表をする。それに対して、米国は株式の取引時間中に発表されることが多くさらに値幅制限がないため、決算発表により大きく株価が1日で変動することがある。日本では米国のようなドラマチックな動きをすることは少ないものの、やはり決算内容は株主であったり、投資しようと考えていたりするなら是非チェックしておきたい。
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